メーカーによっては呼び名が違っている場合もありますが、送信周波 数は変えずに受信周波数のみを上下に数kHz変えることのできる回路 のことですでにおなじみです。最近のリグはほとんど例外なくこの回路が 付いていますが、まだあまり使ったことが無いと言われる方も結構多い ようです。RITとはレシーバー・インクリメンタル・チューニングの略で、受周波数を増減させる意味合いです。

台湾空軍のC-130を背景にJA1AYC
時にクラリファイヤと呼ばれている 場合もあります。 まだ受信機が最近のようにデジタルでなかった時代に は交信中のA・B2局の周波数がわずかであってもずれていることが良く ありました。また最近でも受信する人の耳の差、音調、音程の差があって かならずしもピッタリ同一の周波数でQSOしているとは言えないことがままあります。

特に受信機の選択特性がブロードな場合には、どうしても自 分の効き易い周波数で受信するものですから、当然の結果として、送信 時にはずれて電波を出すことになります。こんなわずかな送受のずれを調 整して聞きやすくすると言うのがそもそもこのRITの効用なのです。  

それでもリグの周波数安定度が信じられないくらい向上した今日この頃、 RITの使い勝手もかなり変わってきました。ひとつはパイルアップを受ける 時に(あまり頻繁にあるケースでもありませんが、DXの局などは、しばしば その必要にせまられているようです)自分の送信する周波数より1−2kHz 上でコールをしてもらうことで、むだな混信を避ける目的で使っています。  前 々回のコラムにある「リスニング・アップ」のケースです。この場合は当然で すが、自分の送信周波数はいじらずに、受信のみをRITつまみを加減して 目的の局の信号をとらえるのです。  

ところがこれが超大型のDXペディションともなりますと、とても1−2kHzくら いではとても全部の需要をかなえることができませんので、勢い10kHz up とか10−20upのような指定を行います。こうなるともうRITの範囲を超え ています。従って、今度はスプリット周波数運用になりますので、内臓のA /BのVFOをそれぞれ送信、受信にわりふってことなる周波数もしくは周波 数帯でQSOが行われることになるわけです。

それでも筆者自身のリグの RITの幅は約10kHzありますから、普段の5kHz upくらいなら十分に使い物になります。それでもこれは受信の場合で送信については、受信周波数 はそのままに送信周波数のみを加減するXIT(トランスミッター・インクリメン タル・チューニング)の付いたリグの出番です。  

普段はRITもXITもオンにした状態で、他局の呼んでいる周波数を聞きに まわります。これかなと思われある周波数をキャッチした次点で、RITのみ をオフにしますと、めでたく送信周波数は相手局が聞いていると思われる周 波数にセットされ、受信は依然として目的のDX局に合わせられていると言う仕掛けです。  

悲劇はこの時でなく、一度リグの火をおとしてふたたび別のQSOをする時 に起こります。つまりRITなりXITなりのスイッチをオンにしておいて忘れてい るために、とんでもない周波数でコールしたり、まったく別の周波数を聞いて いるがために、いくら送信しても応答がありません。何回かコールを繰り返し、 失敗に気が付いた時はすでにタイミングを失していたりすることにつながりま す。
これは理論でもなんでもなくて実際に筆者が最近何度となく繰り返してい る失敗です。歳のせいかもしれませんが、まったく人のことは言えません。 (2000/5/23)
 
     

 
 
 
いつもは59,59にあけくれています。ハッと気がつくと書かねばならないQSLの山また山、あるいはようやく重い腰を上げて始めた電子ログへの登録など。あそこもできた、ここともQSOしたと言うよろこびとは裏腹に、つらい仕事ばかりが目立ちます。  

もっともDX局の出没する周波数帯とか7MHzあたりでは、それこそ何局も重なり合うように入り乱れていますから、とても長話をする雰囲気ではありませんし、もしやったとすれば非難をあびること間違いありません。  そんな時には息抜きとばかりに、コンディションの悪い折を見計らって21MHzとか28MHzでのローカルラグチュウ、もしくは14MHzなどで、国内局同士の会話を試みたりしますが、これが誠に楽しいのです。日頃感じているあれこれや、運用のノウハウ、工作の薀蓄を交換するわけですが、いつも刺激を受けたり、思わぬ発見をしたりと無線ならではの特権です。  

アマチュア無線の事にかぎらず、幅の広い情報に生身で接することが可能になります。地方の情報は手に取るように教えてもらえますから、地図を片手にまだ訪れたことのない土地に夢が広がります。無線をやっている多くの方には思いも寄らぬ多趣味の持ち主が少なくなく、写真の話、釣りの話、旅行の話、外国語の話、はてはパソコンの指導なども受け、思いがけぬ収穫があるのです。  

2001年3月 BQ9P DXペディションの一員として東沙島に到着

デジカメを買いたいと言えば、どこそこのウェッブを覗けば安い買い物ができるとか、外国のDXペディションに興味があれば、これまた情報を送ってもらえるとか、ログの整理に苦しんでいると言えば、こんなソフトが良い、こんな整理法もあるよと言った具合に枚挙にいとまがありません。  

ラグチュウと言っても、いつも同じ相手とばかりでは、やはり話題にも知識にも限りがありますが、その点HF帯でのラグチュウは、交信相手の範囲も広く、知識の内容もさまざまですから、話題にことかきません。それに加えて、相手の方がうまい語り手であればあるほど、熱が入ると言うものです。会話の妙と言いましょうか、やり取りにもリズムがでて、それに起承転結のメリハリのある展開となればたまりません。  

いただくだけでなく、提供する喜びも加わります。新しいリグを買えば買ったで、その使いごこちを披露できますし、外国旅行から帰ったばかりであれば、ガイドブックには無い最新の情報を提供できます。 例えて言うならば、成田空港では最近ツアー旅行であっても、チェックインは個々人になったので、長い列ができる。従って早めに行った方が良い席が確保できる。とかチェックイン直前のX線検査で荷物の計量が自動的に行われ、計算されたシールが張られるので、制限一杯の荷物の方は手荷物にふりわけるなどの注意が必要とか。

外国の空港によっては、機内持込の手荷物がご婦人のハンドバックも含んで一人1個に限られるので、その覚悟と用意が必要とか、特にリグなどを持ち出すハムには欠かせない情報かもしれません。  
ラグチュウなんて時間の浪費だとばかり、避けて通る方もいますが、実はラグチュウには対応の仕方次第で無限の可能性が含まれているのです。いかにして話題を引き出せるか、いかに相手の方にメリットのある情報を提供できるかで、2倍にも3倍にも楽しめること間違いありません。 (2000/6/11)
     
 
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