一度でもDXの局と交信すると、自分の電波が外国まで飛んでいるんだ!と言う ことが実感できて、人によってはそれこそ虜になって連日CQ DXをどなる結果と なるのですが、一寸お待ちください。ただDXコールをしても果たしてコンディション が開いているかどうかが問題です。もう一度バンド中をよくワッチして、どの方向かDXの信号が聞こえてくるかを確かめる必要があります。  

2002年6月、ドイツ南部フリードリッヒハーフェンのハムショーでJAIGの昼食会でJA1AYC(左)とJG1GWL(右)

あるいはJARLニュースのコンディションの予報ページを見て、この時期、どの 大陸がどの時間帯にどの周波数帯で入感の可能性があるかを知る方法もあります。永年DXをやってくれば、スイッチオンしたところから、今日の電波伝播は良い悪いがすぐにわかるものですが、最初の内はそんな勘も働きませんから、まずは情報の収集が先決です。

そんなことを言ってもDX局と交信するには語学(実は筆者はこの学と言う表現に は反対です。学問として勉強するならば確かに学ですが、普通に意思の伝達を計 るのには学は必要ありません。)文法も発音も2の次でよいのですが、そうは言ってもやはり最低限の会話能力が求められるのも事実です。  

ではやはり駄目かと諦めてはいけません。コンテストが良い例で相手局のコール サインがわかって、自分のコールサインをはっきりと伝えられ、かつファイブナイン (ファイブファイブの時もありますけれど)が言えれば、まずはOKです。つまりそれ以外の会話を必要としない、もっとも短いコミュニケーションですから、これでも無事 にDXとコンタクトできる仕掛けです。でもコンテストではやたらとバンドが混んでいて DXのコールサインを取るだけでも大変とか、コンテストに出たからにはログ・サマリ を提出しなければと重荷に感じている向きには今度はDXペディションが最高の目標 になります。  

DXペディション(DXと冒険のエキスペディションを組み合わせた言葉)は文字どお り、普段は人の行かないような場所からあえて電波を出してサービスするのが目的で 必然的に出来るだけ多数の局とコンタクトしようと思っている訳ですから、交信の方法 もコンテストのそれに似て、やはりレポートの交換(普段は59−59が多い)のみの 交信内容ですから、ここには英語も何語も介在しないのです。要はDXペディション局の 情報を事前に知って(これは雑誌のDXコラム等であらかじめ告知されている時が多 い)その日、その時間に待ち受けるわけです。  

最近のDXペディションでは、例外がないほどスプリット交信が行われますから、普段 からこのスプリット運用になれるようにリグの操作を覚えておく必要があります。 すなわち、DX局の信号の周波数(例えば21.295)より5kHzあるいは10kHz離れ た(これも上の周波数を使うことが多い、例えば21.300−305のように)周波数で 送信することになります。こうすることでDX局の周波数は常にそのDX局の信号のみ が聞こえることになり、結果として誰に応答があったかをすぐ知ることができ、交信の能率が上がるからです。  

それでも通常行われるDXペディションは珍しいところ珍しいところと計画されますか ら、それを待ち構える人も当然多いわけで、大変な競争状態になることを覚悟しなけ ればなりません。自局の設備にもよりますが、ローパワー+ワイヤーアンテナなどで はなかなか太刀打ちできません。 それでもよくしたもので、比較的JAに近い大洋州 などの圏内であれば、コンディション次第ではそこそこに交信可能です。ただ言える のはDXペディションの初日から2‐3日はあえて避けることです。

どうしても交信したいと頑張っているDXサーや、設備の良い局が一通り終えたあとが狙い目でしょう。 3月の初旬にあったクリッパートン島のDXペディションも10年振りくらいで賑わいましたが、結構長い期間に渡り、それも連日複数の周波数とモードで同時に運用していましたから、 最後のほうでは比較的楽にコンタクトが出来たようです。今も(28日現在)行われているチェスターフィールド島(TX0DX)のDXペディションもあと1両日をのこすのみとなりましたが、そろそろ一通りの局は交信を終えているころですし、まして週日であればチャン スが大いにあると言うものです。

東京中央郵便局のPOBOXの記載があるバージョン

初めからエンティティ(異なるDX上の国−かつてカン トリーと呼ばれていた)を増やそうと言うことよりも、着実に一つ一つ交信を積み重ねことで、やがで一人前のDXサーの誕生につながります。 そうなると人間欲がでますから、それではDX に必要な決り文句の一つも覚えようか と、知らず知らず会話の方も上達すると言うものです。普段JA同士でも「ファイブナイン」「ファイブナイン」とやっているわけですから、相手がJAでなくほかの国のコールサインに変わるだけだとしたら、あまり抵抗も無いはず です。

毎月大型、小型のDXペディション(中にはDXヴァケーションでのんびりやってい る例も少なくありません)がありますから、思い切って自分のコールを叫んでみてはいか がでしょう。
最後に、ロングコールは禁物です。せいぜい1回か2回、自分のコールを送り受信する、さらに応答がなければ繰り返すと言う、せっかちな魚釣りにも似て、何度と なく釣り糸を送って引いてと言う糸さばきが一番うまいDXの釣り方です。(2000/3/28)

 
     

 
 
 
誰ですか?ハムは安い趣味だと言ったのは。でも筆者自身は昔からハムは道論をかざしています。道を楽しむのだから、それは「道楽」です。趣味と言うのは所詮誰でもがすぐに取り込めるものではないでしょうか? 読書が趣味だと言え ば急いで本屋に走ったり、図書館から大量に借り出してせっせせっせと読みあさればもう一人前の読書人?かもしれません。
CDを買い込めばもう音楽が趣味と なるのです。でも趣味と名の付く物はえてして熱しやすく冷めさすいものですから、 ついあれこれと浮気をします。映画がはやっていると聞くと、つい映画館も気にな ります。「男の料理」と聞くと、今度は自前の包丁まで買い込んで、一品、二品の おかずを作ってもう一人前の気になったりもします。 その点、道楽ともなると半端 な気持ちではやれません。

JARL75周年記念パーティーでW5JBP(ARRL会長)とJA1AYC(JARL理事、中央)2002年11月14日
昔から道楽者と言われると、どちらかと言うと反社会的 な行動を指しているかに見えますが、これは極端な例で、むしろ人があきれるほど ある事に熱中し、エネルギーをつぎ込むことではないでしょうか?  普通のハムなら誰でもなれますが、道楽ハムはそうはいきません。何年も何年も かかってようやく自分の城を築き上げるのです。リグを揃え、アンテナを揃え、測定器を揃え、参考書を揃え、その上でQRVの数も、自作実験の類も決して手抜きは ありません。

もちろんQSLカードは100%発行を心がけます。せっかくもらった免 許ですし、そこに記されているバンド、モードもおろそかに出来ません。多少のハン デがあってもなんとか克服し、ありとあらゆるバンド、モードにもトライします。そして コンテストからアワードハント、果ては移動運用まで。実はこんな方を多く見かけます。 DXレポートでDXペディションに出かけていた筈の人が、次の日には50MHzでラ グチュウに花を咲かせたり、家を離れてJCCサービスなんてやっているんですからたまりません。道楽者にして思わずニヤリとする場面です。  
100Wクラスのリグを動かすとなると周辺機器を入れても最低500Wくらいの電力は消費しているのではないでしょうか?シャックの配電盤が別勘定になっている 例は少ないので、まあ電気代は別として、それでなくてもハムはお金がかかります。 機械類は日進月歩ですから、何年か1回は新調したくなりますし、それでなくても、 経年変化で10年も使っているとどこかしら不調になるものです。そんなベーシック なメンテ代も書き留めていったらきりがありません。  

ランニングコストの筆頭はなんと言ってもQSL代でしょうか。先日のサイパン島からの運用で1500枚からのQSLを作る羽目になりました。1枚10円としても約1万 5000円の出費を余儀なくされています。サービス運用をしたからには、その後始末 をするのは当然ですから、これはもとより覚悟の上です。もしそんな余計な出費が惜 しかったら、なにも無理をして電波をだす必要すらないわけです。  

DXCCハントとなると又別物です。最近の珍DXペディションは、ビューロー経由でカー ドを請求することも不可能なものばかりではありませんが、速い回収を考えると、ま ずダイレクトにQSLの請求は欠かせません。そんな折に計算しますと、まず基本の QSLカード代、先方に送る封筒代、そして返送用の封筒代、そして返信のための切 手代、こちらから送る切手代とざっとこれだけは最低不可欠で、ざっと計算しただけ でも1コンタクトあたり300円とか350円が必要になるわけです。  

かならずしも100%の回収を期待できませんから、つい複数のコンタクトに対して それぞれSASE(本来の意味はセルフアドレスド・シールドエンベロープ=返信の切手 を張った返信封筒を添えたカードの請求)を送る結果となります。なんだかんだと毎日 バンドをワッチして、人が群がっているとついつい呼びたくなるのが人情で、仮にこん なQSOを年間100回もしたとすると(あるいは実際にはそれ以上?)実に3万円から 5万円の出費を余儀なくさせられている勘定になります。

月あたり4000円もの出費は 半端な数字ではありません。それこそJARLの会費が高いの安いのと言っているレベ ルを超えています。これを高いと思ったらそこで道楽はストップです。魚釣りを道楽に している方が新しい竿を仕入れたり、こませ代に釣果以上のお金を使うのにも似てい ます。別にコンテストに出すわけでもない写真を撮りまくり、大きくプリントして悦にいる カメラ道楽もそうかもしれません。とかくこれが「道楽」の世界なんでしょうか?  

そんな訳で、今日もなぜかダイヤルを回し、QSLを書きつづけている自分を振り返っ てフムフムとつまらない納得をしているのです。決して反省をしないところが道楽者のすざましいところです。( 2000/3/30 )
     
 
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