通称アワードとかサーティフィケートと呼ばれる賞状のお話です。前にも書いたことがありますが、アマチュアの賞状とは実に不思議なものです。小学校の皆勤賞とか、○○水泳大会の入賞とか、老人会の感謝状とか、通常はその人の功績や実績、成績に対して贈られるもので、自分から要求するものではありません。 しかしアマチュア無線の世界に限って言うならば、だれもその人の実績は判断できませんから、自ずと自己申告によって自分の成果を申告し、その結果に対して発行されているのがアワードの実体でしょう。  

JARL名誉会員JA5AF大塚さんのQSLカードには取得した主なアワードや訪問した国の名前がずらりと並んでいる

アマチュア無線を始めて日本の全都道府県と交信した。もうすでに何千局かと交信した。特定の地域と定められた条件をクリアして全部QSLカードを入手した。等々いろいろな形があります。「だからどうした?」と言われると実にはかない感じすらするのがアマチュアのアワードです。

JARL名誉会員JA5AF大塚さんのQSLカードには取得した主なアワードや訪問した国の名前がずらりと並んでいる  地球儀の上でおよそありとあらゆる国や島々と交信したと言っても、ごく一般的な人から見れば、「ふーん、たいしたものだね!電波ってそんなに飛ぶんだ!でもそれでどうなるの?」と質問されると答えに困ります。

そうなんです。アマチュアの交信とは自己満足以外のなにものでも無いと言うのが真実でしょう。  でも山に登る人が「そこに山があるから!」と言って挑戦するのに似て、アマチュアのそれも一種のチャレンジには違いありません。そしてある目標を達成した時には自分で自分に勲章を贈りたくなるものです。それがアワードハンティングの楽しみでしょう。

もちろんハムをやっている人から見れば、それは実にたいした業績で、少なくもハム同士には評価される記念碑なのです。毎日たらたらとラグチュウをするのもハムの楽しみの一つではありますが(電波的井戸端会議と言ってもよろしいでしょうか)ある目標のもとに交信を進めるのも面白いものです。  

パナマのHP1ACのQSLカードにはDXCCを始め、世界の主だったアワード取得の実績が示されている

このようにしてアマチュアのアワードは誰から自然に与えられるものではなく、あくまで自分で管理して、目標 パナマのHP1ACのQSLカードにはDXCCを始め、世界の主だったアワード取得の実績が示されている を達成し、その代償として発行されるものですから、賞状と言うよりもむしろ証明書と言った方が適切かもしれません。その点ではアワードと言うよりもサーティフィケートと言う言葉の方がより近い感じがします。  

そこで目標を設定するわけですが、それには日ごろ使っている周波数帯や電波形式が関係してきます。日ごろVHFやUHFで通信していると、いくらコンディションの関係があるとは言ってもやはり通常の通信範囲はどうしても使っているアンテナの形状とかシャックのロケーションに左右されるだけに、目標をたてるにしてもいきなり全国、全世界を対象とする訳には行きません。当然自分の周辺で条件にかなる目標を見つける必要があるでしょう。それには地域アワードが一つの目標になるわけです。  

○○市内在住の局、○○局以上と交信する。と言うような条件なら、時間さえかければ十分達成可能です。あるいはエリアを問わず○○局以上の異なる無線局と交信すると言うような努力賞的なものもあります。  

一方HF帯で日ごろ運用しているとなれば、今度は守備範囲はぐっと広がるわけです。10Wプラスダイポールのようなシステムであっても、日本国内であれば交信は十分可能ですから、当然日本という舞台を使っていろいろなアワードに挑戦できる訳です。1−0エリアの10局と交信できれば、即AJD完成ですし、全都道府県であればWAJAの完成です。いやWAJAよりも100都市との交信で達成できるJCCの方がもっと近い目標になるかもしれませんね。  

ひとたび海外に羽ばたくと、そこには無限の挑戦が待ちかまえています。6大陸を対象としたWACとか、アジアの国々を対象としたADXAとか大洋州の国や島を対象としたWAPとか実にさまざまです。同じ国であってもアメリカ合衆国も面白い対象の一つです。

無線局の数も多く、日本からは比較的交信しやすいところですが、なにしろ広い国ですから、挑戦のし甲斐もあるわけで、全州交信を対象としたWAS(Work All States)などもさしずめ当面の目標としては格好です。それを一つのバンドで完成するとか、一つのモードで完成するとなると、別の苦労も伴いますが、それはそれで結構チャレンジしがいがあると言うものでしょう。  ここらで何か目標設定をして新しい世紀をスタートしてはいかがでしょう? (2001/4/22)  

 
     

 
 
 

 アマチュアの楽しみの集大成がQSLカードの収集であり、アワード条件の完成であることは以前のコラムでも書きました。そして最大の難関はいかに早く、そして確実にカードがコンファームできるかと言うことになります。最近はe-QSL(電子QSL)もとりざたされていますから、やがて今のようなハードQSL(紙に刷られたカード)は姿を消す時代がくるかもしれませんが、私なぞは大変寂しく思います。  

薄い紙とか厚手の紙とか、カラフルな写真とか、大きいのや小さいのや、中には紙でなく、薄いコルク板とかプラスティックに印刷されたものまで、いろいろな形で送られてくるカードに魅力を感じます。その点パソコンに向かって、自分に届いたカードを検索し、場合によっては時間をかけてプリントアウトするなんて、はやりなじまないものがあるのです。(速さ、便利さ、確実さではとても電子QSLにはかないませんけれど・・・)  

アメリカの連盟本部にあるアウトゴーイングQSLの整理棚、もちろんJA向けは別格で特別の箱が用意されている

今しばらくは現在の形態のQSLカードが存続するとなると、次に問題となるのはその転送システムです。これも書きましたけれど、JARLのビューローが早いの、遅いの(早いと言って文句を言う人もいないでしょうが)と言う議論もありますが、かのハム大国アメリカにしても国内同士のカード交換は以前からダイレクトになっています。つまり切手を貼って個々人で交換すると言うものです。   

これではあまりに負担が大きいと言う声もあって、いまで海外向け(アメリカから見て)のカードについては アメリカの連盟本部にあるアウトゴーイングQSLの整理棚、もちろんJA向けは別格で特別の箱が用意されている 会員サービスの一環として、アウトゴーイングビューロー(つまり送りだすのみに機能)がありますが、インカミング(外から入ってくるもの)についてはボランティアベースで転送が行われているのです。その点JAのビューローは世界でも最高クラスと言わなければなりません。  

JARL会員が10万強として、その内の半分の会員が月平均10枚のカードを交換するとなると、それだけで50万枚からの転送となりますが、実際はそれにとどまらず100万とか150万枚が行き交っているのが現状です。カード代1枚10円として、切手50円を貼るとそれだけで月600円になりますから、まだまだJARL会費は安いとすら言えるのではないでしょうか?  

しかしながらDXをやっている方が多く体験されているところですが、海外とのカード交換はそれほどスムーズではありません。おたがいのビューロー経由となると、それを取りまとめる時間、実際に郵送にかかる時間、またそれぞれのビューローで仕分けで個々人に配る時間などを合算すると、いやでも半年くらいの時間がかかる計算です。そして中にはビューローは駄目と言ってくる局も少なくありません。  

ジブチのJ28NH 2000年5月24CWで交信。 F5IPWから約10日間で返送

その理由には、所と場所によっては郵便の条件が良くない(これは離島のように船でしか郵便が届かないところが沢山ある)あるいはその場所でのアクティビィティが低く(つまりハム人口が少ない)一度オンエアーすると限りなく呼ばれる、結果として大量のQSLを発行しなければならない、あるいはDXペディションのように通常大人数で移動運用が行われる結果、やはり一時に大量のカードを発行することになる、等々が挙げられます。

ジブチのJ28NH 2000年5月24CWで交信。 F5IPWから約10日間で返送  ここに来て活躍するのがいわばQSLマネジャーです。その多くはボ エルサルバドルのYS1RR.2000年5月に14MHzのRTTYでQSO。マネジャーは有名なW3HNKで返信約10日間。

エルサルバドルのYS1RR.2000年5月に14MHzのRTTYでQSO。マネジャーは有名なW3HNKで返信約10日間。

ボランティアで、運用者のログを預かり、代わってQSLを発行するのですが、中にはQSLの印刷まで引き受けている例もあるくらいです。従ってカードを請求する側からは、精一杯カード発行の手間隙、費用をかけな いようにSASE(返信切手を貼って送り先を明記した封筒を同封して請求する)を使うと言うことに繋がります。

外国の切手は通常入手しにくいものですから、費用としてIRC(国際返信切手)を同封したり、時としてグリーンスタンプ(ドル札の愛称)さえ使われているのです。 ピトカーン島のVP6BR。2000年4月に14MHzのSSB、CW,RTTYで交信。OH2BRより約10日間のスピード返送。  

ピトカーン島のVP6RR。2000年4月に14MHzのSSB、CW,RTTYで交信。OH2BRより約10日間のスピード返送

中にはグリーンスタンプドリンカー(ドル札飲み込み屋)といわれる悪徳マネジャーもいて、何度送っても一向に返事をくれないとか、くれたとしても必要以上の費用を要求するようなことも出てくるわけですが、ほとんどのマネジャーは本当に真面目で、到着 したその日に返信を投函してくれるようなケースも多々あります。

マネジャーのコールサインを見ただけで、これならば確実にコンファームできる!と言う自信も持てるわけです。本コラムでは最近受け取ったマネジャー発行のカードを収録してお目にかけます。
もちろん中にはマネジャーを使わずに運用者自身が発行してくれたものも含まれます。  

これらのカードの対象となったQSOはいずれも昨年前半のものですが、私自身のものぐささも手伝って請求自身が遅くなった次第で、決してマネジャーの責任ではありません。(請求日と受領日を入れておきました) (2001/5/1)

     
 
Copyright © 2004 QTC-Japan.com All rights reserved.