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良き家庭人:
NECのPC98コンピューターが全盛のころ、IBM-PC互換機を買う人はよほどの変人か、奇人と思われた時代がありました。今から思えば、アマチュアユースにはIBM-PC互換機が最適と考えて使い始めたわけですから、『先見の明があった』と誉めそやされても『奇人』というのは当たらないでありましょう。
某OM、お名前をYさんとしておきます。
SSTVのエキスパートのお一人で、ロボット社の高価なスキャンコンバータを持っておられるYさんです。あるとき、Yさんが米国から個人輸入でGATEWAYの新型コンピューターを買ったという噂を聞きました。値段は50万円と聞いて驚きました。ビジネスに使うならともかく、パーソナルユースといいますから、「Yさん、もしかして狂ったのではないか?」と周りの人たちはYさんを気遣ったといいます。
後年、GATEWAY PCをSSTVに使う心積もりだったと聞かされて、先見の明にえらく感動した思い出があります。
Yさんに影響されたのが、近くに住むQさんでした。英文の発注書を書いてGAREWAY社にFAXをしました。何度も言いますが、PC98全盛時代はまだ同社は日本に上陸していませんでした。
程なくして白と黒の牛の模様を印刷したピカピカのPentium90MHzマシーンが届きました。17インチのディスプレーとタワータイプの本体、それにPC用オーディオアンプ、キーボードなどが3つに梱包されて成田空港から宅配便で届けられました。
Qさんは勤務を終えて帰宅すると、奥さんが「また、何かお買いになったの?」 「いやこれね、Yさんから使ってみないかといわれて・・・・モニターっていうのあるでしょ、使って感想を書く・・・」「新品なのに?」疑いの目がむけられています。箱からパソコンを取り出して、「この箱を返しに行ってくる」「・・・・」 箱を車に積んでYさんのお宅に向かいました。これで疑われなくて済むと考えました。
「Yさん、この箱を預かってください。Yさんからパソコンを借りていることになっていますから・・・」「うちも狭いから困るなー」といいながら人柄のやさしいYさんは気持ちよく引き取ってくれました。
それから数年が経ちました。世の中の主流はPC98からIBM-PC互換機に取って代わられました。YさんとQさんは世界標準機の時代が来ると信じてGATEWAYを買いましたが、周りのFさん、Cさんもつられて個人輸入で買ったほど強い影響を与えました。
そのYさん、ご自慢の自作PCが思うように動かないとQさんに訴えました。 「私のPentium90をお使いになりますか、ODPで180MHzになっていますし・・・・」
休日のある日、Qさんはいまは古くなったGATEWAYを車に乗せてYさんを訪ねました。箱だけじゃなくて本体も返しにきましたよ。これでつじつまが合いますね。」互いに大笑いしました。
良き家庭人U:
Aさんは帰宅したら、どんなに遅くても電波を出さない日はないというのがひそかな自慢です。夫人と一緒にドライブやゴルフにも出かけるし、海外旅行も年に2回は欠かしません。夫人の趣味の焼き物や織物の展覧会にも車を出して展示物の搬送や受付も手伝う仲のよさです。
「僕が10万円のものを買ったら、女房に10万円ものを買わなくてはいけないんだ」といいます。つまり、10万円の無線機を買ったら、同額のバッグとか彼女の欲しいものを買うのが夫婦の間のきまりなんだ」と語っていました。
仕事を早めに切り上げて秋葉原のハムショップに立ち寄りました。
毎日、無線をやるのが唯一の趣味のAさん、HFトランシーバが最近くたびれてきたのと、新製品のIC-780が気になっていました。あのトランシーバなら混信の中のCWもとりやすくなるに違いない、密かにそう思っていました。だが値段がほぼ70万円もするので思い切りがつかないまま、IC-780と対面していました。店員がすっと寄ってきて性能がいかに良いかの説明を始めました。最後に一言、「この値段にしておきましょう」耳元でささやかれて思わず「もらいます」と夢遊病者のようにクレジットカードを差し出していました。
翌々日、帰宅すると玄関に大きな箱が宅配便で届いていました。箱の外側にICOMとプリントしてあります。「IC-780だ!」ここで開けるわけにいきません。
いつものとおり「ただいま!」と明るく夫人に声をかけて食卓に座り、無言で食事を始めました。頭の中はIC-780で一杯なのでほかに何も考えられず、黙々と箸を口元に運んでいました。と、「あなた早く箱を開けてみたいのでしょう」と夫人の声が・・・・、奇襲攻撃に遭ったAさんは声にならない声で「あの、その・・・」取り繕いに懸命でした。
IC-780と同額の品物を夫人に贈ったかどうかは知る由もありませんが、家庭とのマッチングを最優先に考えて実践しておられるAさんに、アマチュア無線歴が長い秘訣を垣間見たような気がしました。同時にアマチュアコードの「アマチュア無線は、趣味であり、仕事、学業、家庭をおろそかにしない」の一節を思いだしていました。
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