《海外の話題》 第35回 Ham Radio 2010 取材記
 
 Hiromichi Fukuda, JA1IFB/KA1Z
 
     
 

6月24日、LH394便でフランクフルトから21時50分、フリードリスハーフェンに到着した長旅の疲れも感じられないJA1FUY/NV1J、川合編集長と到着ロビーで合流、QTC-Japanチームを結成、「Ham Radio 2010」取材への準備を整えました。

好天候に恵まれ初日、二人がそれぞれ富士山をあしらい外人受けするQSLカードを首からぶら下げ、半袖姿で行くドイツ取材旅行の始まりです。このメッセを通じてDARCの奮戦ぶりをつぶさに取材することにしました。しかしながら、旺盛な好奇心のなせる業で、最終日にドイツ・フリードリスハーフェンからボーデン湖対岸のスイス・ロマンスホルンへのフェリーボートに乗船して、グルメと観光小旅行も試みました。今回はアマチュア無線の誕生100周年記念のお祝いを兼ねた、第35回Ham Radio 2010の取材記です。

シャトル・バス乗り場でJA1FUY/NV1J、川合編集長

◇ いざ Ham Radio 2010へ

ブッフホルナーホフのレストランで各国のアマチュア無線家と一緒に豪華な朝食を摂り、ドイツ鉄道中央駅から無料シャトル・バスを利用してHam Radio会場へ出発しました。 シャトル・バスでは他に日本人アマチュア無線家が同乗していましたが、軽く会釈のみで、参加国の国旗に迎えられて会場入り口へ到着です。別棟のプレス・センターでメデイア登録を済ませ、仰ぎ見る日章旗は目にまぶしく映りました。

レス・センター玄関から見た万国旗、日章旗は右から7番目

地元開催地、フリードリスハーフェン・クラブのDARC割り当てDOKはP03であるが、特別DOK IBO 07をHam Radio開催期間に割り当てをもらい、新しく選任されたP03クラブの4名の世話役達が中心になり、Ham Radioの運営に少なからず貢献したことを最初に紹介しておきたいと思います。

地元支援チーム、フリードリスハーフェン・クラブの記念QSL
 
     
 
DARCの接客コーナー
DARC

主催者のDARCは受付、接客コーナーおよび青少年、YLコーナー、また、特に重点志向されたDARC印刷会社の書籍販売ブースからなり、通路へはみ出るくらい多くの参加者を集めて賑やかでありました。筆者はDARCの役員さんへ手をあげ挨拶しただけでしたが、ブースではドイツ語、英語やフランス語、スペイン語が聞こえており、デイトンとは些か様子が異なりました。

青少年プロジェクト

DARCが力を入れている最も重要なプロジェクトのひとつが青少年プロジェクトです。 2日間にわたりHam Radioに参加する8歳から18歳までの青少年が、モールス・コードの送信、ハンダ付け作業と無線機器キットを実際に組み立て、操作させて見て、彼らが初めてアマチュア無線に手をそめるお手伝いをします。
 
また、ハムラリーではホールA1に居並ぶ多くのアマチュア無線家を通じて、アマチュア無線の交信、無線機器の開発と製作、衛星通信やARDF、非常通信などに使用する最新技術に接し、多岐に広がる趣味としてのアマチュア無線の楽しみを青少年に理解してもらうよう綿密に計画しています。

これらの他、メッセの中庭では2泊3日の青少年向けのハムキャンプが同時進行しています。ハムキャンプの様子は2008年度本誌QTC-Japanに紹介しましたので割愛します。
 
DARC青少年・プロジェクトの製作体験キット15種類
ドイツのアマチュア無線にはDARCが制定したDOKと呼ばれる地域区分が、通信、郵便会社アマチュア無線クラブ、VFDBのZ−DOKを含めてその数は約1200あります。残念ながら、アマチュア無線博物館に所属する約700名のアマチュア無線家の技術レベルは不明です。

しかし、約1200のDOK責任者の肩書きが公表されています。丹念に肩書きを調べて見ますと、責任者の中66名が博士号を約300名の方々が技術士の資格を有していることが判りました。JA1FUY/NV1J、川合編集長の話では、指導員が英語で少年に技術解説をしていたということですから、教養の高い方々がボランティア指導員として青少年育成の一翼を担っているように思われてなりません。

 
青少年の製作体験コーナー(赤シャツの方々は指導員)
実際の技術指導のほかに、アマチュア無線の電波そのものを通じて青少年の育成に貢献している地域クラブがあります。毎土曜日の18時00分から18時15分まで定期的に青少年にニュースを流しているグラッドベック・クラブ局、DN1KID、+/-3,650kHzおよびエルヂング・クラブ局、DN5KID、+/-3,650kHzなどです。

筆者は6月25日の午後2時頃青少年の政策体験コーナーを取材に行きましたが、写真のように参加者が満杯でした。そうして、経験豊かと思える赤いシャツを着た指導員が受講生と 1対1で向き合い真剣に指導している姿は、ドイツ・アマチュア無線の未来に期待を持たせる光景です。

標準技術とされる表面実装基板のハンダリフローは元をただせば、「いかけ屋さん」のハンダ付け技術であり、それはアマチュア無線用の機器を自作する時の基本作業ですね!
 
アマチュア無線家の卵に真剣そのもので技術説明している指導員
真剣な表情の少年の手をとりハンダ付け作業を教える指導員
 
抵抗カラーコードとコンデンサーの極性の見方を教えている
 
DARC印刷会社

DARCの男女5名構成の編集部からの指図により、アマチュア無線月刊誌、技術書およびアマチュア無線資格試験用の教材を出版、販売しています。今回は間口13メートルの大型ブースを使い、月刊誌、各種アマチュア局用ソフトウエアーおよび技術書コーナーを設けて、 多くのアマチュア無線家を集めていました。
 
DARC印刷会社のブース
 
DARC発行のアマチュア無線用ソフト類の販売コーナー
DJ4UFによるアマチュア無線資格試験用の教材と各種解説書
 
このDARC印刷会社のブースを訪問した後に全く予期していなかった技術書の著者との出会が待っていました。喉が渇き、少し疲れを覚えたためにQTC-Japanチームはプレス・センターへ引き上げました。部屋の入り口ですれ違った御仁がいます、瞬間、「エッカルトさん?」と極自然に呼びかけていました、「そうです」。「やあ奇遇です、私達がEA5/DJ4UF、エッカルトさんを日本へ紹介した、JA1FUY/NV1JとJA1IFB/KA1Zです」 接客用のテーブルにお互いが着席して、先生は一寸思いをめぐらす瞬間がありましたが、直ぐ我々のことを思い出してくれました。      
アマチュア無線ライセンス受験用の教材を執筆した著者DJ4UF、エッカルトさん  プレス・センターにて写真左からJA1FUY,EA5/DJ4UF、JA1IFB
 
2009年9月26日、本誌に「ドイツの先生−EA5/DJ4UF」なる題目で、彼の学校教育と技術解説書により、ドイツにおける多くの電子技術者を世に送り出した専門学校の先生として日本の読者のみなさんへ紹介しました。その先生とお会いできたのです。しばしの間、CW通信、EME通信と流星散乱通信に花が咲き時を忘れさせてくれました。記念に撮影した写真をお目に掛けましょう。
 
バルーン・トラスポンダー 

成層圏の気象観測用バルーン1号と2号にアマチュア無線局を搭載して打ち上げる実験は、Ham Radioの催物の圧巻であった。実験の成り行きが近隣諸国に迷惑をかける可能性が考えられ、責任者、HB9EPA/DL2SEK、マイクさんとDARCによる周到な準備を経て、威信をかけたパイオニア達の開発実験であったろう。実験の目的は成層圏へ 数局のバルーン無線局を同時に打ち上げ、相互に気象データおよび他のデータの送受信を試験することにあります。
 
F1PSH,DL4AAS,OE1VKW,DL8SO、SP2SGF,DL3CMの諸氏が参加実験チームに名前を連ねています。
バルーン1号DL0TTMには2台の144MHzと430MHz、14.060MHzの4台の無線機を搭載して、6月26日、10時02Z、ドイツ・フリードリスハーフェンを飛び立ち、スイスのビッテンビルとベンゲル地方の間の高度28,815メートルでバルーンが破裂し、12時12Z、スイス・チュリッヒ近郊のバイスリンゲンに落下したと報告されている。
 
方やバルーン2号DF0AISには435MHzの送信機が搭載され、11時50Zドイツ・フリードリスハーフェンを離陸して、スイス・ツルベンタル付近で、13時47Z頃、高度27,778メートルで破裂し、14時18Zチュリッヒ近郊のマウル地方に落下した。今後、実験チームから滞空時間2時間を記録したバルーン1号、2号に向けた地上からの通信記録や詳しい実験結果が発表される予定である。
 
中庭から打ち上げ遅しと見守るアマチュア無線家達
DL0TTM打ち上げに向け最終の確認連絡
バルーンが飛び上がった瞬間
あとがき

今回の開会式で挨拶に立ったドイツ・アマチュア・ラジオ・クラブ役員の開催趣旨が充分盛り込まれたHam Radio 2010をつぶさに、JA1FUY/NV1J、川合編集長とご一緒に見学することができました。

Ham Radio 2010の開会式における挨拶の要旨を次に再掲載しておきましょう。


「第35回目世界アマチュア無線愛好家の集いをこのボーデン湖畔で開催できたことは誠に喜ばしい次第です。インターネット通信が急速に普及した現在、アマチュア無線はその原点に立ち戻り、無線技術を大切に、アマチュア無線交信に勤しみ、そうして、参加各国の夢多きアマチュア無線家達が連携して、アマチュア無線の発展に努力しようではありませんか」


この大空の下でアマチュア無線だけを愛し、幸せと想い、日夜アマチュア無線の発展のために献身している多くのパイオニア達が海外にいることを、読者のみなさんに知ってもらえるならば、長い時間をかけドイツへ飛んだ取材者冥利に尽きます。 おわり

 
《筆者紹介》
福田 廣道(ふくだ・ひろみち) 
JA1IFB/KA1Z
1936年生、大阪府出身。化学会社に在職中は合成樹脂の事業に従事。 第1級アマチュア無線技士、JARL監視員及び中央選挙管理委員、技術相談室担当を歴任。ARRL/VEC ボランティア試験官
 
de JA1IFB/KA1Z

QTC-JAPAN.COM 2010.7.22
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