[アマチュア無線家がアマチュア無線家を育てる]
 
 
Hiromichi Fukuda, JA1IFB/KA1Z
 
     
 

Volunteer Examiner(VE)、「自発的且つ無報酬でFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験を経営する民間のボランティア試験官」なんとアマチュア無線家の心を揺さぶるアメリカ生まれの資格であろうか!それもアメリカのアマチュア無線家で一時アメリカ大統領候補に推されたK7UGAが1982年に法制化の「ゴールドウォタ・ワース法案」を基に、アマチュア無線家がアマチュア無線家を育てるところに価値があります。

筆者は意気に感じアメリカ、台湾およびドイツ、日本の試験場にて約4ヶ年、20回のVE活動を経験してきました。東京VEチームにおける自分の守備位置を踏まえ、チームのささやかな心遣いを顕す「お手伝い5回はVEパッチ、10回はVE証に黄色リボンおよび20回は赤色リボンからなるVEへのご褒美」を目指し自己啓発を含めVE活動に関することなどを語りましょう。

◇ VE作業の印象


2007年9月29日、東京VEチームによるFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験にVEとして初めて臨みました。試験開始後、しばらくは「壁の華ならぬ壁の枯れすすき」で待機していたところ、『採点をせよ』との指図があり、採点席に座り受験者3名の答案の採点を行い、緊張の内にも名刺代わりのお手伝いは無事終了しました。

第3回目のお手伝いでは再び採点係りに指名され、その時は少し余裕を持ちながら、筆者が担当した作業の位置付け、試験実務の流れと試験場内の様子を筆者が受験した時に感じた印象と比べながら観察することができました。

東京の試験では、受験者約20名から答案提出が集中する試験開始後30から60分までが、答案の回収、採点および試験結果の伝達、上位資格への試験準備、CSCEの作成とお世話するVEにとって超多忙な時間帯になります。さらに、書類への署名、整理および書類の最終確認とVEの作業が休みなく続きます。かかる状況下で、VEの行動と書類の流れが錯綜する場面が見られ、筆者自身の事務処理力の涵養と試験運営を円滑にかつ確実にするために、なにか改善策を提案せねばと筆者には強く思われました。

◇ VEに向けた自己啓発
   

東京チームから、お手伝い3回目終了間もなく、VE役割経験と希望について意識調査がなされ、筆者は10回目を目標にセッション・マネジャー、SM、作業まで経験したい旨申請しました。東京チームは独自のVEマニュアルを基に、試験実施の事前、事後打合を通じて、周到な応需準備が行われています。さわさりながら、特殊な緊張感が試験場には漂っており、筆者の小さな事務処理上の手抜かりを一つでもなくすため、リエゾンの了解を頂き、目標に向かい要点を形にまとめながら、ぼつぼつと次の自己啓発を行いました。

自己啓発の内訳と帰趨】
番号
小道具名
内訳
採用の可否および対策
1
 試験場案内表示板  B4判 1枚  採用、開催日を修正使用
2
 受付表示板  卓上用 1枚  採用
3
 採点係表示板  卓上用 1枚  採用
4
 書類作成係表示板  卓上用 1枚  採用、開催日を修正使用
5
 受付備忘録 (州略号とも)  A4判見開6ページ  採用
6
 答案用紙の記入説明  模造紙3枚重  採用、開催日を修正使用
7
 受験に対する注意メモ  A4判 1ページ  筆者手許資料
8
 同上英文メモ  A4判 2ページ  リエゾンの修正を受け採用
9
 605、CSCE作成備忘録  A4判見開5ページ  採用、開催日を修正使用
10
 CSCE記入練習用紙  B5判 1ページ  不採用
11
 CSCEチェック・テンプレート  青色シート  様式を改善中
12
 受験願書整理ケース  A4判 24ケース  採用
13
 受験者指定席表示板  A4判 1枚  採用
14
 鉛筆削り  1個  採用

役割意識調査と同時期、試験後のVE懇親会でデイトン・ハムベンション見物を宣言していたこともあり、ボランティア試験発祥の地で、先輩格のFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験をVEとして実務経験することが、試験の仕組みを理解、習得する早道かつ即効性があるのではと考え、アメリカ修行*1を実行しました。

また、デイトン・ハムベンション会場でARRL VECW5YI VECおよびローレルARCCのブースを表敬訪問して、彼らに後ろ盾をお願いしながら、試験場で使用する小道具とアメリカでの修行を通じて習得した知見を基に、16回目でセッション・マネジャーの大役を無事こなすことができました。

 
     
 
◇ 試験実施概要と進め方比較
 
成熟度の高いVEとして通用するには他のVEチームとの比較研究が必要であろうと、今までのアメリカVE修行*2、東京チーム*3および台湾・台北*4、フリードリスハーフェン試験*5における、少し視野を広め筆者が経験した試験観察状況を次表にまとめました。
 
*2: Gcar VE Team
*3: Tokyo VE Team
*4: CTARL VE Team     Chinese Taipei Amateur Radio League
*5: Friedrichshafen VE Team
 
【4ヶ国におけるVEチームの試験概況比較表】
項目
東京
アメリカ
台湾
ドイツ
VEC
ARRL
ARRL
ARRL
ARRL
公用語
日、中、英
試験場
区民センター
図書館
私企業講堂
展示場会議室
試験場表示
あり
あり
あり
なし
試験時間〈時〉
4
3
4
7
ウォーク・イン
受験者数
〜23
〜17
18
〜40
VE数
〜18
12
12 JA+6 BV
8 (4X2)
試験進行係
SM
リエゾン
SM
SM
605説明
SM
SM
SM
リエゾン
アンサーシート説明
SM
SM
SM
リエゾン
受験者へのサービス
なし
ソフト飲料
ソフト飲料
なし
直感的組織評
全員参画型
ピラミッド型
全員参画型
文鎮型
 

各リエゾンが試験場において達成すべき目標を踏まえ、参加VEの人となりと力量を考慮し、腐心したVEチーム編成が組織に現れているようです。比較表の最下欄に筆者の直感的組織評を添えましたが、アメリカ、日本および台湾、ドイツの事務遂行形態に期せずしてお国柄が見て取れました。

 
◇ フリードリスハーフェンにおける試験
 
フリードリスハーフェン・メッセ会社会議室での試験場全景

Ham Radio 2011の2日目の6月25日、プレス・センターでオレンジジュースを飲み取材計画を考えている時、何か気にかかり、5階のFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験場を覗いてみました。

先着VEの一人が試験場の準備に取りかかったところで、慌てて、VE資格を有するJA1FUY/NV1J、川合編集長と二人が助人を買って出ました。お互いにギックリ腰に気をつかいつつ、準備室から非常に重たい机10脚を額に汗しながら搬入、写真のような美しい試験場を設営しました。

日本人が机をきちんと隙なく整頓させた木目細かさが担当VEの心を打ったようです。 午前9時30分に受付コーナーを含め全ての試験場の設営が終了しました。担当VEと受験者が三々五々集まり始め、慌しくなってきた頃合に試験書類を大事そうに抱えたリエゾン、M氏が顔を出しました。

採点机に試験問題、答案用紙および605、CSCE用紙を並べながら、ドイツ他3ヶ国からの国際混成の9名からなるVEチームを前に、『諸君!試験へのお手伝いに感謝します。本日のセッション・マネジャーはP君にお願いする。受験料は15米ドル、受験者は30から40名を予想している、グッドラック』と英語で挨拶と簡単明瞭な指図を行いました。
 
9時50分からリエゾン、M氏が受験願書605記載方法の説明、完成した受験者は順次受付を済ませ、試験場へ再入場し着席、一名ウォーク・インを待ち、10時7分試験が始まりました。受験への注意は「問題集に何も書かないこと、問題エレメント番号を忘れなく答案用紙へ転記する、解答は支給の鉛筆できっちり黒丸をする」の必要最低限3点のみです。
 
試験開始後、しばらくしてリエゾンM氏がわれわれ日本人VEに改めて挨拶とウォーク・インが多くなる場合の対応、4名編成の2チームで会議室2ヶ所を使用、試験を実施する旨補足説明がありました。別室にVE用の軽食が準備されていたようですが、最初の合格が報告されたのを潮に、われわれ日本人VEは退出しました。日頃、付合の少ない海外からの誇り高きVE達を指揮して、リエゾンM氏の試験遂行に振るった采配は鮮やかであったと読者の皆さんへ紹介しておきましょう。
 
◇ VE活動への新たな取組
 
Volunteer Examiner(VE)に志願して試験環境への順応、業務処理法を習熟することに専心し、いつの間にか3ヶ年間、少なくと試験場における業務管理力が求められるセッション・マネジャー(SM)まで経験したことは前述しました。今までに得た知見を活用し、将来に向かい気力を駆り立てながら残り時間をFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験実施のお手伝いをしようと考えています。
 
しかし、約4ヶ年の歳月が流れ、毎回多数の合格者をアマチュア無線界へ送り出せた達成感に浸っていることもあり、今後、VE活動の目標をどこにおき、受験者から期待されるVE像へ完成度を高めて行くのか、≪内面的な悩み≫にぶつかっていることに最近苦笑いです。
 
このような≪内面的な悩み≫はボランティアが直面する基本問題で、アメリカのVEでも同じでなかろうかと推測し、なぜARRL/VECがセッション・カウントを制定したかを考えながら、記名式セッション・カウントのデータを注意深く解析して見ました。
 
ARRL/VEC傘下の日本人VEの大多数派は「Non US」に分類され、2011年初には約240名が名を連ねています。また日本のARRL/VEC VEチームは、[みちのく]、[東京] および [横浜]、[名古屋]、[岡山] の5チームで、それぞれ名前が示す地域を拠点に活動中です。日本の現状規模に相似するアメリカの州を調べ、N州を抽出し、VEの参加回数とVE数を比較検討して見ました。次のグラフに示しましょう。
 
(注): VE人数はグラフに納まるよう採取データをポイントに置換しています
 
上のグラフから、日本、アメリカN州と地域差はあれ、同規模のVEチームが試験経営している作業環境下では、日米で試験参加回数とVE数の挙動に同じ傾向が見られます。VEセッション・カウントが10回を記録する頃では50%、20回では70%またそれ以上では90%のVE達が何らかの理由により活動を中止しています。理由はおいおい研究することにして、この解析結果に納得をしながら、崇高な精神を基に始めたVE活動なのに、セッション・カウント20回を分岐点として引き続き活動するVEが10%に激減していることにいささか驚きを隠せません。
 
筆者は正しく20回の分岐点に立ち、今後VE活動を継続して行くためには、何か内面的な考えの切り替えが必要であろうとの思いに至りました。VEセッション・カウントには、参加回数300超の超人的な記録を有する多数のアメリカ人VEの名前があり、それに比べれば20回は未だVE活動が緒についたばかりの駆け出しです。
 
悩み考える暇があれば、今までの知見を活かしながら、VEが歩む道の前方に見えるほのかな明かりを目指して、「アマチュア無線家をアマチュア無線家が育成する」という原点を念頭に、足を速めなければなりません。
 
*1: QTC-Japan.com 2008年7月17日      
   JA1IFB/KA1Z、福田廣道 「ARRL/VECボランティア試験官修行 in USA」
 
*6: ICOM 週刊BEACON Onlineとーきんぐ  JA1FUY/NV1J、川合信三郎
   No.86 「ARRL/VECボランティア・エグザミナー」
   No.111「FCCライセンス試験 Extra級4人合格 in 台北」
 
参考文献: www.arrl.org VE Session Counts
 
 
 
de JA1IFB/KA1Z

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