北アメリカ4,500キロの旅》 第3編 
 Hiromichi Fukuda, JA1IFB/KA1Z
第1編 ■ARRL/VECボランティア試験官修行
第2編 ■デイトン発18時50分
 
     
  [[はじめに]

デイトン・ハムベンション2008」のフレア・マーケット*で、ひっそりと理化学実験器具を並べている風変わりな店を見つけました。化学実験に使用するガラス製のフラスコ、ビーカー類や液体の量を計るシリンダー、精密部品類を保管するデシケーター、それに顕微鏡、砂糖の偏光度を測定する偏光計等が並べてあり、その一角に写真のような鉱石標本が飾られていた。 *Flea Market:のみの市
   
フレア・マーケット理化学機器屋 中学校の理科の時間で見たような鉱石標本
    
これらの鉱石とアマチュア無線は一見関係がないように思われますが、標本台に陳列された、鉱石類の一部に弱電製品、パーソナル・コンピューターやアマチュア無線機器にとって大切な透明で、キラキラ光る水晶を見つけました。 北アメリカ4,500キロを辿る道すがら出会った石材の表情を付け加えながら「水晶、クリスタル、クオーツ」の紹介が今回のお話です。

[水 晶]

水晶の学名は「Silicon Dioxide、二酸化ケイ素」です。地球上で多く存在し、ガラス状の通常は無色、透明で非常に物性が安定した六方晶系の結晶で、特にブラジルと山梨県の山地で発見される水晶が有名でした。みなさんの周囲では、美しい水晶の印鑑、お数珠や女性の首飾りなどに加工され、良く見かけることと思います。

最近は、弱電機器、無線機器やパーソナル・コンピューターに多くの水晶が採用されているため、 天然水晶だけでは需要を賄いきれず、人工水晶がこの分野で主流を占める状況です。

左上のピンク色の石がヒマラヤ水晶 中央最上部から2つ、3つ目が水晶の胴切

水晶類の他、鉱石ラジオに使用された方鉛鉱、装飾品向きのアメシスト、トラ目石やメノウが見えますし、軍用無線機のメーター針に塗布された燐光体の緑色に似た光を出す蛍石もあり、石の名前が分かりませんが、昆虫が封じ込められた収集マニアには垂涎(すいぜん)の標本が目白押しでした。

直径12cmくらいのアンモナイトの化石 右上、右から2個は方解石

アンモナイトの化石は筆者が入手したい装飾品であったが、2個で150ドルは良いとしても重いのが問題で結局購入を諦めました。東京、新宿三越の階段両側にアンモナイトの化石が点在する羽目が観賞できるという話を聞いたことがあります。いつも忘れ観察した記憶がありません。

化石の話題では、岐阜県の花模様が石の表面に見られる菊花石は装飾品として素晴らしいと評判です。さらに名古屋、矢場町にある松坂屋南館の10階多目的ホールの壁には、灰色の素地にエンジ色のエビや魚と考えられる化石が封じ込められた「アウフリジーナ・フロリータ」が貼ってあります。東海地区のみなさん、一度ならず眼の保養をされるようお勧めします。どうも話がアマチュア無線とは関係の薄い方向へ脱線をしました、水晶の話題に戻しましょう。
 
     
 
[水晶発振子]
FT-243型の水晶発振子の分解写真
六方晶系のある結晶格子に沿って切り出した水晶の切片の両面へ電極を貼り、電圧を掛けると、水晶の形状により特定の周波数の高周波に共振します。この現象を「ピエゾ効果」と呼びます。

使用する水晶発振回路の条件が少し変動しても発振周波数が変わらないために、昔から無線機の主要発振器に採用されてきています。

今から45年位前、筆者の自作無線機に使用していた、構造が簡単なFT-243型水晶発振子を分解して写真で紹介しましょう。今や骨董品です。
 
無線局設置場所の変更検査を受けた受信機、その後、自作SSB送信機に使用した水晶発振子が処分されずに、残っていました、写真でお見せします。
 
その昔、自作無線機に使用した水晶発振子類
上段の大型水晶発振子は受信周波数 3 から3.5MHzを探策すマーカー、細長い水晶は標準100kHz、中央2個は380kHz中間周波数用のFT-241型BFO用水晶。ジャンク品を使ったために中間周波数を変な380kHzに下げている。

下段はSSB送信機の水晶発振子で、原発振周波数はなんと1700kHz、LSB、 USB用にフイルターの前段で周波数微調整をする構成になっていました。
 
[コリンズ R-391/URR]
その頃、日本のアマチュア無線家が主に使用していた中古受信機は、スーパープロ BC-779BC-312シリーズやRCA AR88などでした。これらは単なるスーパー・ヘテロダイン方式のため、水晶発振器の組み入れは希でした。 掘り出し物のコリンズ R-391/URRを昭和41年春に思い切って買いました。

世界の最高級受信機です。受信機の中を開けて見て驚きの連続、夢の1kHz直読、さらに100Hzのフィルターが装備されていて、混信の激しい7MHzの電信受信に威力を発揮してくれました。
 
R-391の水晶発振ユニット
23枚の水晶発振子、調整キャパシターとロータリー・スイッチを納めた100×100×205 mmサイズの局部発振ユニット。このユニットを下段に示すR-391のシャーシーが光って見える位置へ滑り込ませる。 

隙間が0.9mmしかなく、ロータリー・スイッチはシリーコン・グリースで仮止めした板金1枚を介してバンド切替主軸へ接続する苦労が要ります。
 
R-391のシャーシー上面、中央は高周波同調ユニット、右が中間周波数段の写真
         
もし水晶発振ユニットが故障すれば、重量33キログラムのR-391もただのガラクタですが、 30年ほどお世話になったために、パネル、ツマミやメーターの再塗装、ギアーレーンのグリース塗替えなど、お化粧をぼつぼつ始めていた途上でしたから、ここでも縁の下の力持ちとして水晶発振子の役割を読者のみなさんに思い出して頂けるよう、紹介しました。自作機またはプロ仕様無線機どちらであろうと、水晶発振子が重要な機能を果たしてきたことはいうまでもありません。

(注、コリンズ R-391/URRは0.5から32MHzを自動受信可能、1kHz直読デジタル・ダイアル、CW、SSBとRTTYが復調でき、2台の受信機を組合せればノイズとフェーディングを軽減するダイバシティー受信もできる軍用高級受信機)
 
[ビャンコ・カラーラ]

腕時計、無線機器の心臓部で作動している水晶もあれば、大掛かりな建築物の一部位としてじっと耐えている石材もあります。表題の「ビャンコ・カラーラ」はイタリアの港町「ジェノア」の近くにある「カラーラ地区で産出する有名な白色大理石」です。

筆者が初めてアメリカ・コネチカット州の化学研究所を訪問した時、鍛えられた社長と彼の秘書に再会するべく、コネチカット州・スタムフォードの「アムステルダム」なるホテルに、今回、投宿しました。到着日は白くて清潔感のある浴室だくらいの感覚でしたが、朝、浴室の壁にビャンコ・カラーラが、それも展開貼り(石目が本を開いた時のように左右対称となっている)には驚かされ、早速、石鹸の泡を幾重にも浮かべ湯船に浸かり、生まれて初めての大理石風呂を楽しみました。

 
[昔見た風景]
日本への帰途乗り継ぎのため立ち寄った某空港の通路にて、飛行機で隣に座ったご夫婦の記念写真を撮りました。シャッターを切る瞬間、この風景、どこかで見たような錯覚に陥り、悩んだ末ようやく、それがJR東京駅の新幹線18、19番ホームへの通路風景であったことに気付きました。
北米の某空港乗り継ぎ通路でご夫婦を撮影 JR東京駅の新幹線18、19番ホームへの通路
 
多くの乗客が利用する空港や駅通路は同じような構成であり、特徴はありません。実は通路の床に写っている広告看板と照明の歪みから判断して、石工の中の石工、匠がこれらの石工事を取り仕切ったものと推測します。見るべきは施工した石面を美しく水平に保持させている石工の技です。

日米双方で申し合わせたように、ベイジュ色のイタリア産大理石「ボテチーノ・クラシコ」を壁に貼り、床に異なる石材を配して自然と歩行線を描き、青い眼の方々向けに照明は少し暗く、黒眼の人には全体を明るく工夫しています。それにしても、なぜ筆者が全く人影のない、これほどに美しい東京駅の風景写真を大切に持っていたのか、謎めいておりますね。
 
[おわりに]
今回の北米4,500キロの旅で、デイトン・ハムベンションのフレア・マーケットにひっそりと陳列されていた鉱石群からの光を受け止めながら見聞録を書きました。常日頃、すっかり忘れられている空気、水や鉱石類のような天然素材に、生活が依存している様子が良く分かりました。 しかし、「石の上にも三年」の諺通りです。参加3回目に夢を馳せ、またデイトンへ行こうと考えています。                                    (おわり)
 
 
 
ビギナーへのプレゼント (1)〜(7) 
■One Day Extraへの道のり by JA1IFB/KA1Z も併せてご覧ください。
de JA1IFB/KA1Z
 

QTC-JAPAN.COM 2008.08.27
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