北アメリカ4,500キロの旅》 第1編 
 Hiromichi Fukuda, JA1IFB/KA1Z
第2編 ■デイトン発18時50分
第3編 ■デイトン発番外編「水晶、クリスタル、クオーツ
 
     
 
アメリカ・ジョジア州アトランタから一筆書きの旅行マップ
はじめに

デイトン・ハムベンション2008の日本語通訳とFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験発祥地でのARRL/VEC VE(ボランティア試験官)修行を目的として、地図に赤線で示す北アメリカ4,500kmの旅路を辿る旅を思い立ちました。

自局の電波が飛ばないものだから、自分自身が空を飛びDXハンティングしたと、そしられそうな旅行記が今回のお話です。 (注)青線で示した経路は旅行中、判断間違いと交通事情による遅延時間を鉄道とバス路線を使い分けて吸収するための逃げ道で、独り旅には大切な対策点です。

楽しい旅行計画の作成

北アメリカ周遊旅行のために、ランドマクナリー社の道路地図、北アメリカ鉄道「アムトラック」と長距離バス「グレイハウンド」のホーム・ページを繰り返し検索しながら旅程を組み始めました。

この時、心は夢を膨らませすでに北アメリカを飛び回っています。 2008年 1月 5日、「成田―ソウル経由―ワシントンDC」の航空機予約を大韓航空へ入れ、ARRL/VEC東京チームにより計画されていたFCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験にVEとして臨みました。試験終了後の反省会で心変わりしないようにデイトン行きを発表し覚悟を決めました。

ノースキャロライナ州における試験会場の分布図

先ず北アメリカ旅行を通して5月15日から 4日間はデイトンに釘付けです。自由な 5月10、11日の週末に、修行できるARRL/VECアマチュア・ラヂオ・ライセンス試験の情報をARRL/VECのWEBサイトで検索します。細かく調べた試験情報を地図上に書き込む過程で、下記の地図に示したようなノースキャロライナ州に試験会場が7ヶ所集中していることを突き止めました。

(注)筆者が今回の旅で再会したい方のアマチュア無線局も含め、直径 50キロメートルの緑円で試験会場を記します。

最寄りのアムトラックとグレーハウンド駅から半径 5マイル区域内の試験会場に目標を絞り込み、最終的に左端の緑円から斜め下二つ目が示すガストン郡ガストニアの「Team Gcars VE Team」へVE修行を願い出ることとしました。

所在地
 Gastonia, North Carolina
クラブ名
 Gastonia Area Amateur Radio Club
チーム名
 Team Gcars VE Team
VEC
 ARRL/VEC
リエゾン
 Mr. Cy Rowe, K1CY

ガストニアで試験場まで徒歩20分にある一泊 99ドル(宿泊料は税込み113ドル)、朝食付きのホテルを世界のホテル・ホーム・ページで検索して変更含みで予約をしました。



北アメリカでの交通機関の乗り継ぎとホテルの選択に堂々巡りしながら、出発地をワシントンDCからジョウジア州アトランタに計画変更しました。会いたい方々への訪問を挟み、サウスキャロライナ、ノースキャロライナ、バージニア、ワシントンDC、デラウエア、ニュージャージ、ニューヨーク市、コネチカット、ペンシルベニア、デイトン・オハイオ、ケンタッキー、テネンシーの13州を走り抜ける14日間、約4,500kmの「原案」を50日もかかった2月末にまとめ上げています。

原案は想像以上に旅費がかさみ、6月度予定のARRL/VEC Tokyo Team主催FCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験、台北への遠征旅費も捻出すべく、次の項目に着目して、涙ぐましい努力で旅費削減を図り「最終案」を作成しました。例えば、デ イトンでは見栄がありマリオット・ホテルに宿泊しましたが、その他地区では一泊 87ド ルのホテルへ格下げ、二晩は夜行列車中での「うたた寝」に加え、長距離バスは乗車7日 前の前売り格安券、アムトラックはシニアー割引券を併用することなどが検討点でした。

 
     
 
[VE修行志願]
北アメリカ4,500km走破の最終旅程案が事務机の上にあります。しかし、これから訪 問先「Team Gcars VE Team」のVE修行許可をもらう交渉をしなけれ ばなりません。先方のVE達と全く面識はなく大変気がかりであります。

日米のコールサイン、名前とARRL/VEC VEの資格を記入の上、2月25日早朝 リエゾンのMr.Cy Rowe、K1CYに宛て、「来る 5月10日の試験でVE修行させて欲しい」と、おそるおそる伺いを立てました。驚くことにメールを送信して丁度 90分後にK1CYから、「ガストン郡図書館の研修室の確保」、「VEチーム全員のJA招聘の同意が得られる」、2点の条件付きで「JA VEの参加を歓迎する」との吉報です。

その後、彼と3度メール通信を行い、デイトン見物、ニューヨークとルイビルで36年前にお世話になった方に会い旧交を暖めることなど渡航目的を明確に紹介し、訪問先の名前、電話番号を参考のためにお知らせしたことはいうまでもありません。3月31日に至り、ガストニア到着日、投宿ホテル名および住所、電話番号、アトランタからの交通手段と試験後の日程を連絡しました。すかさず「大歓迎します」、ただし、「アトランタからバス利用する場合、帽子をかぶり、汚れた衣服を着用して、目立たないようにせよ」とのいささか恐ろしい助言メールを受け、全身に緊張が走ったことを覚えています。

ARRLから送付されたVolunteer Examiner Manual 改訂版 (9th Edition)を見直して、5月 8日、成田空港からノースウエスト機でアメリカへ飛び出しました。新春にアメリカのVE修行を志した4ヶ月後のことです。
 
[VE修行 in ガストニア]
アトランタの地下鉄「神田駅」のような場所から、ノースキャロライナ州シャロット行きのグレーハウンドバスに乗り込みました。乗客の多くがスペイン語を話す以外は不安もなく、天候に恵まれ、最前列に席を取り快適な 6時間のバス旅行を楽しみました。ガストニアで下車したのは筆者だけ、写真の倉庫まがいの駅舎で駅長さんが一人には驚かされましたが、この駅長さんは有能で筆者のメモ通りてきぱきと7日前の前売り割引乗車券を発行し、歩いてホテルへ行くというのに、今日一番の高額購入者扱として、わざわざホテルまでタクシーを手配してくれました。
 
グレーハウンド・ガストニアの駅舎   郵便物も扱う執務中の駅長さん
 
ガストニア・コンフォート・スイート全景
 
送り込まれたコムフォートスイートは一際立派なホワイトホテルで、チェックイン後、直ぐ試験場の下見を兼ね 2時間ほど周辺散策を楽しみ、ホテルへの帰途「テキサス」なるステーキ・ハウスで、予算も忘れて大きなステーキを食べ、ジャックダニエル・オンザロックを呑み、ほろ酔い気分でご帰館とあいなりました。

午後8時になり頃は良しとして、K1CY宅へ電話をかけました。「K1CYですか?東京から無事に到着したKA1Zです」、「K1CYだが、ガストニアへようこそ、アトランタからのバス旅行は安全でしたか?」、「快適でした」。その時、奥さんか誰かに「KA1Zが本当にやってきたよ!」と話かけています。

「2,3質問があるのだが」、「明日の試験は見学者か試験官のどちらかね」、「ボランティア試験官です」、「資格と経験は?」、「ARRL/VEC VEで Tokyo Teamで 3回の経験がある」、「OK」、「ところで夕食は済ませたのか?」、「ホテル近くのテキサスへ」、「KA1Zは心配なさそうだな、明日 8時45分にホテルへ迎えに行く、お休み」、73 というような会話が交わされました。
 
[Team Gcars VE Team]
8時40分、K1CY、身長190cmくらいの痩せ型のCyさんがホテルへ現れ、挨拶もそこそこに、直ぐ車へ乗り込み試験場へ向かいました。試験場はガストン郡の図書館で 9時前のため、まだ開館していません。何人かのVE らしい方々が既に集合しています。FCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験を担当するVEチームの布陣とそれぞれの役割は次の通りです。このチームで最高17名規模の試験を行ったようです。

▼Team Gcars VE TeamのVE布陣

 事務内容
コール
クラス
人員(名)
備   考
 リエゾン
K1CY
Extra
1
 試験総括者
 事務局
N4DOX
Extra
0.5
 最終の書類審査を兼務
 相談役  
Extra
1
 試験中、受験者の相談役
 室内受付  
General
2
 受験料の徴収も含む
 室外受付  
Extra
1
 Walk-in対策係
 願書係  
Extra
1
 NCVECVEC 様式 605記録者
 採点係  
Extra
3
 CSCEの確認署名も行う
 CSCE係  
Extra
1
 合格者への成績通知
 書類審査
N4DOX
Extra
0.5
 ARRLへ送付書類の最終確認
 準備室係  
General
1
 飲み物のサービス
                 
K1CYの熱意と人柄に支えられ、誠に機能的なチーム構成であり、このチームのお世話により受験されたアマチュア初心者はさぞかし幸せだなあと推測しております。
 
[試験の流れ]
準備段階
図書館の研修室は昔日の記念写真が飾ってある30名収容の部屋で、特に机 の再配置はせず、あるがままの状態で、K1CYの指図によりVEは担当位 置に着席。筆者は第2試験官に指名。
試験材料
K1CYが手提金庫から試験材料を取り出し、受付台に配布。  
受験確認
テクニッシャン 3名、ジェネラル 1名およびエクストラ 2名の計 6名。
試験宣言
FCCアマチュア・ラジオ・ライセンス試験をTeam Gcars VE Teamが運営する旨K1CYが宣言
試験要領
N4DOXがNCVEC様式 605の受験願書を内容説明しながら確認。
特記事項
日本からVEとしてKA1Z が特別参加、受験者全員へ電卓のプレゼントを 用意されていることの紹介。および筆者の表敬挨拶。  
受験料
それぞれ14ドルを会計担当へ支払う。
注意事項
N4DOXが説明中に、6名のVEは、静かに公平に業務を遂行する、試験中席を離れないこと、飲食は禁止などVEの心得を再確認する。(筆者には別途VEマニュアル最新版について修正点の質問がリエゾンからあった)
VE配置

受験者は大机に向かい自由に着席、VEは部屋の壁際に 6名着席、受付はそ のまま、リエゾンはVEと受験者の間にある独自の椅子に腰掛け、相談役は 受験者の傍に立つ。

試験実施
答案用紙への個人情報記入の注意、持込電卓の確認および試験実施
採点作業
第1試験官から順次採点を行い、N4DOXへ書類を流す
CSCE
担当がCSCE書類を作成
試験官 
CSCEのVE確認サインは第 1、2および第 3試験官が順番に署名する。
合格発表
合格者はCSCE発行担当が、不合格者にはリエゾン自ら通知、補足する。
最終審査
N4DOXが試験の事務処理について最終確認をする。
受験者 
各VEと握手を交わして表敬しながら退席。
書類整理
受験料、試験問題、スクラッチ・ペーパおよび答案を手提金庫へ納める
終了宣言
リエゾンK1CYが結果発表と簡単な総括を行い終了宣言する。
書類送付
K1CYのシャックでARRL/VECへの報告書作成し投函
所要時間
当日は 9時 5分に始まり、11時15分まで 2時間10分。
 
筆者感想
受験者が目標資格を取得しても、VEは上級資格の挑戦を勧めずに、受験者の試験準備を基にした個人判断に委ねていました。残念な不合格者にはリエゾン自身が親切に通知し、補足していた姿勢と試験協力したVEへは毅然と対応をしたリエゾンK1CY、Cyさんに親しみを覚えたことを書き添え、 素晴らしいVE修行をさせて頂いたVE Teamに心から感謝をします。
 
[ラグチュー]

試験が無事終了してほっとしているところへ、薬学専攻のVEですと自己紹介した方がいます。どこかで記憶にある写真や図面が入った資料を手にしているではありませんか。なんと、qtc−japan.comの投稿記事が英文にパーソナル・コンピューターにより翻訳された一連のコピーです。

AV-640は本当に 6mバンドで使えるか?なら、フィールドデーに準備しよう。カード返信用のIRCの見積もりは1枚多いのでは、65セント相場は一部のDXerだけと 考えるが、ただし、発展途上国に配慮している点は評価する。アメリカのハムはIcomYaesuファンなのにお前はCollinsなのか、不思議である。いや30年遅れで ボツボツ追いかけているだけだよ。お前はヨーロッパにも出向いているのか、その昔、仕事でヨーロッパに張り付いていたことがあります。

なぜお前は個人の天文台に興味をもったのか?それはDX通信を楽しむためですよ。等々、30分ほどの間でやかましいラグチューが繰り広げられました。何のことはない、KA1Zを良く調べていたのですよ。時間が迫ったためVE有志との記念写真に納まり図書館を後にしました。  

 
ガストン郡図書館全景 N4DOXによる願書605の説明、確認
 
試験風景 採点終了時の筆者   KA1Z
 
左端N4DOX(事務局)     左から4人目KA1Z    右端K1CY(責任者)
 
3人のVEのコールサインは差し控えますが、計らずとも身長順にポーズをとったVE有志の記念写真です。一方は清涼飲料のタンクを抱かえています、リエゾンK1CYは試験書類一式と受験料の納めた手提金庫を大事に持っています。「今日はありがとう」、機会があればまた会いましょうと、みなさんが握手しながら清清しい顔を見せていました。

K1CYとN4DOXと昼食をご一緒した折に、正午をヌーンといいましたら、「ハイヌーン」は誰だっけ?「ゲーリークーパーとグレスケリーさ」、KA1Zは誰のファン?「グレンミラー」か「ベニーグッドマン物語」のジェーンアリソン。大笑い!どうも同年代らしい、誠に楽しいガストニアの一日でした。
 
[おわりに]

たった一日のために長い時間を準備に費やし、体験した「ARRL/VECボランティア試験官修行 in USA」を書き終えてみて、内容が旅行記ならぬ議事録に変身したように思います。サイクル24を迎え、DXハンティングに再挑戦するかたわら、今回のアメリカVE修行で体得した経験を今後のVE活動に活かせるようにと筆者は考えております。
                                                             (おわり)                                     

ビギナーへのプレゼント (1)〜(7) 
■One Day Extraへの道のり by JA1IFB/KA1Z も併せてご覧ください。
de JA1IFB/KA1Z

QTC-JAPAN.COM 2008.07.17
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