ビギナーへのプレゼント》 第6編 
 Hiromichi Fukuda, JA1IFB/KA1Z
 
     
 

[交信証QSLカード]
「ビギナーへのプレゼント」 第5編までは、アマチュア無線局の必要経費に関する話をあえて触れずにきました。今回はみなさんのお小遣いいにひびくQSLカード交換のお話です。「QSLカード」、交信が成立したことを証明するカードのことで、アマチュア無線局相互により慣例として任意に発行されています。

お互いが交信する電波は眼に見えませんから、QSLカードには、交信の相手局、年月日、電波の了解度と強度などの報告事項が書かれています。また、後日DXCCのアワード(賞状)を申請する時に添付する大切なQSLカードです。ところがこの大切なQSLカードを安く、早く確実に交換するためには色々と工夫をせねばなりません。苦労しながら入手できたQSLカードは誇り高き交信の思い出としてごく自然に無線局の壁を飾ることになります。

[QSLカードの発送法]

海外局とアマチュア無線による交信をした後、QSLカードを交換、収集するために、少し弱い立場にいるJA局は航空郵便切手、国際返信切手券やグリーンスタンプ(1米ドル紙幣)など海外局からの返信費用の個人負担分が国内出費より嵩みます。交信の喜びが薄れる頃に手間のかかるQSLカード発送作業が残ることも問題です。いくら海外局とローパワーで交信可能なことが分かりきっていても、受領カードを眺めることはアマチュア無線の楽しみのひとつですから、カード交換を中止することができません。

詳しくは後で説明しますが、筆者のQSLカード交換方法を次表に示します。海外ではアマチュア無線局申請にSWL実績が必要な国があり、お仲間の一人として海外SWLカードを大切に扱い、航空便とJARL経由で二枚のQSLカードをそれぞれ送ってきました。

[QSLカードの交換方法]  

カード区分
宛先区分
発送率(%)
カード発送方法
無線局宛
日本国内
100
JARL
海外一般局
70
JARL
ロシア語圏内局
100
JARL
海外DXペディション(新規)
100
QSL MGR
海外DXペディション(不急)
30
WF5E
SWL宛
海外SWLへの返信
100
JARL
100
直接郵送

[QSLカードの記載項目]
QSLカードへ楷書で明確に最低次の報告事項を書いておきましょう。                       

コールサイン
相手のコールサインを正確、かつ読みやすいように
年月日
Feb.21、2008または2-21-2008
時間
0012または0105などと UTC* 時間を記入
周波数
15m Band または21.025MHz と書く
RST*
59 または 599 と事実に基づいた数字
コンテスト・ナンバー*
 「007」ナンバーを付記しおくと相手の検索に便利
QSL交換方法
QSLの返信方法の指定

* UTC 協定世界時(Coordinated Universal Time)。
  グリニッチ標準時とほぼ同じですが、セシウム133原子の振動数を基に決定され、全世界で時刻を記録する時に使用します、日本時間はUTCから9時間進んでいます。
 
 
* RST 交信時に交換する電波に関する事項です。
  Readability (R、了解度を意味し、数字の 5が最良)
  Strength  (S、信号強度、数字の 9が最強)
  Tone    (T、電信のトーン音色、数字の9が最良)
* コンテスト・ナンバー コンテスト時に使用するRST に次ぐ無線局の場所または従事者の年齢を付加する、例えば 5925(日本)または 5972(年齢)
 
* SWL+ Short Wave Listner、短波放送愛好家
 
     
 
[郵便情報一覧表]
万国郵便連合、日本郵便東京国際支店で調べた郵便料金に、長年の経験を加味して郵便情報をまとめてみました。一覧表は情報を網羅していませんが当面の参考になりましょう。なお、ロシア語圏内各国の制度が把握できないために郵便料金は割愛しました。先に紹介したように、筆者はこれらの国々へのQSLカードは全てJARL経由で送付しております。
 
 
[用語解説]
Country   QSLカードの送付先の国名
Prefix     相手先のコールサインのプリフィックス
Currency   外国通貨の名前
Postage   外国から日本までのQSLカード1枚程度の航空郵便料金
IRCs   International Reply Couponの略 で国際返信切手券です。
GS       Green Stamp(グリーン・スタンプ)1米国ドル紙幣。
JARL     OKはJARLビューロー経由で送付可能、NOは取り扱しない。
GDP    IMF(世界通貨基金)で調べた2000−2006年度の一人当りの米ドル換算の年間総生産額。
 
* NA         引用情報なし。
                    
[一覧表の見方]

一覧表に記載の郵便料金は種々の事情により予告無く変更されるため、QSLカードを交換する時の目安と考えて下さるよう、最初にお断りしておきます。見方を説明しましょう。

1. Australia(VK、コアラのオーストラリア)
  オーストラリアから日本への重量20g航空郵便料金は1.30ドル(130円)、IRC、GSが返信料金を負担するために使用でき、またJARLビューロ-経由でも送付できます。
 
2.

Sweden(SM、ノーベル賞のスウェーデン)

  スウェーデンから日本への重量20g航空郵便料金は11クローナ(190円)、 GSは使用でき、JARL経由で送付できますが、IRCは利用できません。
3. Ghana(9G、チョコレートで有名なガーナ)
  ガーナから日本への重量20g航空料金は1.1ニューセディ(110円)です。JARLビューロー、GSは利用できず、IRCまたはQSL MGR(DXペディション局や遠隔地の局の代りにQSLの交換作業をするマネージャーを指します)に頼るしかありません。
 
[IRC国際返信切手券 ]
IRC国際返信切手券の見本
IRCはInternational Reply Couponの略で、国際返信切手券と日本語では呼ばれています。1枚を送付すれば、先方が現地の郵便局で原則として航空便の基本料金分の現地切手と交換できます。

日本の場合は130円相当の切手と交換してくれます。海外では居住地域に郵便局がなく、2〜30km離れた郵便局へ自動車で行かなければなりません。したがい、その時間とガソリン代による彼らのお小遣いが目減りしないように配慮して、原則IRC1枚で足りるところを 2−3枚と見積もりました。

なお、DXer間でIRCを融通する折の相場は1枚当たり米ドル 65セントと聞いています。2007年8月からIRCが改定されていますので、購入する場合は郵便局で確認が必要です。
 
[GSグリーンスタンプ ]
GS欄のOKは返信郵便料の負担分としてグリーン・スタンプが先方の国で使用できます。NRはその国の事情により経験上GSとIRC送付はお勧めできません。筆者は返信料の応分の負担にGSが一番と考えていましたが、いくどか問題が起こりました。事故に遭ってもGSを郵送することは公式に認められていませんから悔しいだけで、あくまでもGSの送付は自己責任で行っています。
 
大手銀行の外国通貨両替窓口で、テレビ、経済紙上で発表される銀行間交換レートに銀行の手数料を加えた金額で日本円をGSに両替できます。長いアマチュア無線の活動ですから、1米ドルが100円前後の円高相場の時にGSに両替することが経済的でしょう。
 
一覧表の最終項目にアマチュア無線とは一見関係がない海外の1人当りの年間総生産額をIMF(International Monetary Found)国際通貨基金の統計資料から抜粋して紹介しました。総生産額の低い発展途上国では外国為替管理が厳しく一般にGSが自由に両替できないようです。日本経済大国では1人当り35,650米ドルの年間総生産額を誇り、GS1枚の値打ちは低く見られています。QSLカードへ比較的無造作に同封するGS1枚が約3,000米ドルの発展途上国の人達にとって、どんなに価値があるのかをみなさんに認識して頂くため引用しました。
 
[外国から日本への米ドル換算の郵便料金] 先に紹介した一覧表を参考に海外から日本向け航空便の米ドル換算の郵便料金を試算した例題を次に示します。返信郵便料金の負担でGS1枚では不足する場合がありますね。
試算1 オーストラリア(VK) GS=OK
  郵便料金(オーストラリア・ドル) 1.30
  米ドル対オーストラリア・ドル為替レート 1.08
  米ドル郵便料金 1.20
  交換手数料 (15%)2米ドルに対して 0.30
 
  合     計 USD1.50
  計算上オーストラリアへは返信料負担分としてGS2枚必要です  
 
試算2 アメリカ(W) GS=OK
  郵便料金(米ドル) 0.90
  為替レート 1.00
  米ドル換算郵便料金 0.90
  交換手数料 
 
  合     計 USD0.90
  アメリカはGS1枚でぎりぎり返信料を賄えます  
                     
試算3 ドイツ(DL) GS=OK
  郵便料金(ユーロ) 1.70
  米ドル対ユーロ為替レート 0.67
  米ドル換算郵便料金 2.54
  交換手数料 (15%)3米ドルに対して  0.45
 
  合     計 USD2.99
  ドイツの場合は返信料負担分としてGS 3枚かユーロ 2枚必要です  
 
[DX QSLマネージャーの居住地]

最近行われたDXペディションのQSLカードを中継するマネージャーの居住地を次表に示します。幸いにもQSLマネージャーは米ドル圏とユーロ通貨圏に集中していることが分かりました。上記の試算を参考に、もし、アメリカかヨーロッパへ出向く会社の同僚出張者に、現地の切手を購入してきてもらえれば、ニュー・エンティティが増えること確実です。

外国通貨
プリフィックス
エンティティ
局数
 
G
英国
2
 
VE
カナダ
2
米ドル
VK
オーストラリア
1
 
W
アメリカ
35
 
ZL
ニュージーランド
1
 
ZS6
南ア連邦
1
 
CT
ポルトガル
1
 
DL
ドイツ
7
 
EA
スペイン
4
 
F
フランス
3
ユーロ
I
イタリア
4
 
OH
フィンランド
3
 
ON
ベルギー
1
 
PA
オランダ
4
 
SM
スウエーデン
1
合計
   
70
 
[QSLカードの郵送方法]
QSLカードの送付法、記載方法およびIRC、GS、海外から日本への航空郵便料金の試算法を順番にお話してきました。これからは実際のQSLカードを海外のマネージャー宛に送付する封書の表書きについて参考例をあげながら説明します。
日本からQSマネジャーへの表書き見本
封書の形式には、日本から海外宛、海外から日本への返信に大別されます。最初の表書きは日本から海外宛です。

封筒の左肩に自分の名前、住所および国名をローマ字で、海外の宛先を英語で中央部に書きます。右肩には所定の料金の日本切手を貼ります。国名には下線を 引いて郵便作業員の注意を呼びかけます。
 
SAE返信封筒の表書き見本
左の表書き見本は海外のQSLマネージャーから日本へ返信時に使用する記載例です。

これは、SAE(self−addressed envelop)と呼び、日本の発信人が自分で住所を記入した封筒で、QSLカードの送付時にIRC、GSなどと一緒に同封します。表書き見本では皆さんの注意をひくため、S.A.E.とドットを入れています。

これでマネージャーは宛先 を書く手間が省けるということです。左肩にマネージャーの名前、住所および国名と中央部には英語で日本および都道府県名を、日本の住所は漢字で書きます。
 
SASE返信封筒の表書き見本
最後はSAEの表書きに現地の郵便切手類を貼った理想的なSASE(self−addressed、stamped envelop)と呼ばれています。

現在、アメリカから日本への航空郵便料金は90セントですが、見本では手持ちの3セント切手2枚を説明用に貼っています。

封筒の表書きには自局および相手局のコールサインを記載しなことが郵便事故を少なくするコツです。

なお、上に揚げた切手の斜線は切手を見本表示している断りを意味し、実際は汚れのない新しい切手を赤字文章を消去した封筒に貼ります。
 
[WF5E DX QSLサービス]
現在、世界で一番「DX QSLの事情」に精通しているアマチュア無線家がアメリカのWF5Eだろうと思います。彼はボランティアで毎月約 5,000枚のQSLカードを処理、転送サービスをしてくれています。WF5Eの住所を次に掲げます。
Mr. Les 
Bannon 3400 Bedford Midland、
Texas 79703 U.S.A.
 
WF5E Bannon さんのQSLカード
彼がQSLカードの転送サービス に要求していることは、QSLを プリフィックス、コールサイン順 またQSLマネージャー名が指命 されている場合はコールサインを カード裏面に記載し、QSLカー ド整理、整列すること。

アメリカ では廉価な外国郵便と船便の廃止 にともない郵便料金が値上げされているため、郵便料金として取扱 いQSLカード2枚につきGS1枚またはIRC1枚を同封することなどです。

その後、みなさんの手元へJARLビューロ経由でQSLカードが届きます。今回、QTC-JAPAN.COMに「WF5E DX QSLサービス」を紹介するにあたり、WF5E担当者の作業量が増加することが予測されるため、念を入れて彼の事前承認を得ておきました。
 
[QSLカード収集に要する月数]
「ビギナーへのプレゼント」第1編で紹介したDX QSLカード95枚をSASE方式 で収集するに要した時間をグラフ化してお目にかけましょう。
SASE105通をQSLマネージャーに発送して、重複記載も含めて95枚のQSLカードを収集できましたが、大半が1ヶ月で収集できるものの、11ヶ月収集に所要した事例がありました。

費用とQSLカードの重要性をどのように算定するかは個人の判断です。一方、ビューロー 経由でQSLカードを交換する場合、 約 3年はかかることがありますから あきらめないで待っていてください、忘れた頃に手元へ届きます。
 
[QSLカード収集費用の目安]

筆者は川崎市の新しい設置場所へ転居して以来 7年間で約 5,000枚のQSLカードを発送しました。ARRL(アメリカ・アマチュア無線連盟)、JARLおよびクラブの年会費等、QSL交換費用の総額は毎年約 5万円でした。この出費が毎月のお小遣いを目減りさせています。JARL年会費を無視してアメリカ向けに試算したQSLカード1枚当りの交換費用は次表に示す通りです。また個人の判断にゆだねられていますがDXペディションへの支援金、QSLマネージャーへの心付け等を加算しますと、年間かなりの出費になります。お小遣いの余裕がある時に準備金の手当てをお勧めします。

 
QSLカード収集費用比較」                                       単位=円
経路
封筒代
QSL代
日本→米国
米国→日本
合計
単価 円/枚
JARL経由
0
10
1
0
11
11
直送WF5E
13
60
110
330
513
86
直送SASE
26
10
110
99
245
245
直送GS
26
10
110
110
256
256
直送IRCs
26
10
110
300
446
446
 
JARL経由 @JARLの年会費は算入せず  AほぼQSLカード製作費で済む
直送WF5E @郵便料金110円でQSLカード 6枚また190円では14枚を一度に送付できる。
上の試算はQSL 6枚の場合を示す
 
直送SASE @一通のSASE、 直送GSおよび直送IRCsとも1枚のQSLカードのみ返信されることが多い
 
交換レート 1米ドル=110円として試算しています
 
[おわりに]
長々とQSLカードの交換について書いてきましたが、アマチュア無線による交信実績が 増えるにしたがい、これらの費用も比例して増加します。ARRLはコンピューター・ロッギング(LowT)による交信の確認方法、また日本ではe-QSL方法を開発実用化し始めています。筆者はこれらの手法について、QSLカードの交換速度の短縮と費用の軽減になるのではと期待しながら勉強しています。最近、海外局から美しいQSLカードが着信し始め、費用とは別に何か新しい潮流があるのかと眺めていて楽しくなります。   おわり
 

《筆者紹介》

福田 廣道(ふくだ・ひろみち) 
JA1IFB/KA1Z
1936年生、大阪府出身。化学会社に在職中は合成樹脂の事業に従事。 第1級アマチュア無線技士、JARL監視員及び中央選挙管理委員、技術相談室担当、ARRL/VEC VE

 
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QTC-JAPAN.COM 2008.03.05
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