ビギナーへのプレゼント》 第5編 
 Hiromichi Fukuda, JA1IFB/KA1Z
 
     
 

開発研究を長く続けていると実験に失敗して思わず「天を仰ぐ」ことがしばしばあります。みなさんの中にもこのような経験をお持ちの方がおられることでしょう。アマチュア無線家は自己の興味を基に自由な研究ができます。期待外れの実験結果になっても余り落胆せず、またハンダごてを握れば済むと思います。

DXハンティングについては、少し様子が異なり、パイルアップにもまれ必死で呼ぶも順番がこず、交信できなかった時には競争相手を意識しますから、何か割り切れない「わだかまり」が胸に残ります。そんな落ち込んだ折は夜空の星を見上げてください。1光年2光年遠く離れた星からのCQが聞こえてくるような気がして心が和みます。この気持の切り替えが今回のお話です。

[夜空の星を眺める]
筆者はアマチュア無線局の開局と時を同じくして合成樹脂の開発研究に従事しました。実験の失敗は原因分析に検討もれがあり、次の実験へ問題を引きずったためで、全て研究者の企画力に帰します。実験結果を正確に分析し、再実験へ慎重に取り組んでも、通常の成功率は5%以下です。

そのような時にどうしたか、筆者は実験室の窓から、関東の夜空に輝くたくさんの星を見上げ、長い時間をかけて次の一手を考えながら、やる気を取り戻したことが何度かありました。一方、アマチュア無線では電波の飛び方に随分と悩んだことも事実です。しかし、出力30Wの運用で有名なW2QHH(サイレントキー)の紹介記事を頼りに、ローパワーでもいずれDXCCが達成できると信じていました。

[設置場所を探し山梨県へ]

時が流れ、海外局から山梨県が交信の難所であると聞かされていたのを受けて、少しでもDX に有利な山梨県へ移動先を調べに行きました。格好な場所にはアマチュア天文台と観測所が散見されます。将来、邪魔をしないようにと考えて、一軒の天文台を訪問し移動局の設置場所以外にアマチュア天文家の目指す夢と環境について知ることができました。

宇宙には多くの未知の星と星座があり、独りで冬の寒さと夏の暑さに耐えながら、それらの未知の世界を訪ね、星達を発見しては命名することが楽しみという。これは一重に名もない小さな星達からのCQを聞くことに他なりません。壮大なロマンですね。ドーム以外の反射鏡、制御装置やウッド・デッキ等は自作しているらしい。プラスチック製ドームは想像より大きく、大人が自由に歩けるほどの広さがありました。その内部と望遠鏡本体を写真で紹介します。

 
     
 
[八ヶ岳山麓のアマチュア天文台]
アマチュア天文台全景 ドームの内部、210φ反射赤道儀と制御装置
 
また、天文台長さんのご厚意により、この設備で撮影した冬季のオリオン星座とアンドロメダ大星雲の写真をお目にかけます。
 
[天体ショー ]
冬季の撮影したオリオン星座 (天文台長さんのご厚意で記録写真2枚を借用しました)
冬季に撮影したアンドロメダ大星雲 
 
[観測機器への障害]

ドーム内部の写真から分かるように、望遠鏡の自作制御装置は裸同然で安価なシールド線類が不用意に使用されており、高周波障害の対策は全く無視されているため、アマチュア無線の電波が望遠鏡の制御装置を誤作動させないか心配なところです。他にVHF帯を使用して電離層の観測をしているアマチュア無線家がおられるらしく、どこに設置場所を移しても電波障害に配慮せねばなりません。

 
[科学的な趣味への道のり]
この天文台長さんは彼が卒業した小学校で毎年小学生とご父兄のための「星を観る会」をボランティアで主催しております。スライドによる事前説明に続き、校庭に設置した望遠鏡の焦点を合わせながら星達の実像を捕らえ、ひとりひとりが星を観て大歓声を上げる小学生達の未来が楽しみと熱っぽく語ってくれました。
 
話を聞かせてくれた天文台長さんは我々と同じような普段着の精密工学専攻のサラリーマンです。家から離れた八ヶ岳山麓の天文台は維持が難しく、20年でエクスペディション(遠征)を一区切りさせたが、空を見上げる心は変わらず、さしずめアパマンハム*のように、自宅ベランダから夜空に気持を馳せている。ここにも異なる分野で探究心の旺盛なご同輩を見つけることができました。読者のみなさんは本業に大変忙しい時もありましょう、しかし、自己のアマチュア無線に賭けた夢を忘れずに追い求めることです。 *アパート・マンションにシャックを構えるハムのこと。
 
[アパマン天文台]
筆者が合成樹脂の研究途上で壁にぶつかった時、気持を切り替えてきたお話を紹介しました。みなさんは独自の気分転換法をお持ちと思います、苦しい時は星を見上げ、星に祈りを捧げることが誰にも知られずお勧めです。
 
[おわりに]
3アマのみなさんが最新鋭50W機とバーチカル・アンテナでDX パイルアップの隙間をぬってDX と交信できたとしても、おそらく150エンティティ位で頭打ちになると想像しています。3アマはあくまでも通過点でなるべく早い機会に2アマ、1アマへ挑戦して、念願の14MHz帯へオンエアできるように技術武装を行い、もし意気消沈した時には夜空の星でも眺めて気持を切り替え、元気で再び上級ライセンスとDXCCに挑戦して下さるようお祈りします。
 

《筆者紹介》

福田 廣道(ふくだ・ひろみち) 
JA1IFB/KA1Z
1936年生、大阪府出身。化学会社に在職中は合成樹脂の事業に従事。 第1級アマチュア無線技士、JARL監視員及び中央選挙管理委員、技術相談室担当、ARRL/VEC VE

 
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