ビギナーへのプレゼント》 第1編
 
 Hiromichi Fukuda, JA1IFB/KA1Z
 
     
 

はじめに
いよいよ太陽活動サイクル24が立ち上がります。なぜか遠足の前夜のようなうきうきした気持ちで一杯です。2008年、アマチュア無線をゼロからやり直そうと、集めた資料の整理を少しずつ始めています。最新鋭の50W機を使用すればバーチカル・アンテナでも海外局と交信ができると今も信じていますが、第 3級、第 4級アマチュア無線技士のみなさん、この機会に電波を遠くへ飛ばすというアマチュア無線の基本的な楽しみ「DXハンティング」に挑戦してみませんか?

アマチュア無線を追い求めてきた道すがら集めた資料から、感激と悲しさ、判断に迷った時に考えたことなどの思い出を織り交ぜながら数編にわたり、歳のせいで、思い違いがあるかも知れませんが、これからDXを始める方々のご参考にと願いながら、お話しします。

自作10W送信機
旧 2アマと 1アマ合計 3回の試験に失敗した悲しい思いをバネに、電波法の改正後、電信級(3アマ)を取り、JA1IFB を開局したのが1961年 5月27日であった。変更検査に来られた郵政技官の柴田さんもビックリのエーコン、MT管、GT管およびST管を使った寄せ集めの無線機でスタートしました。送信機は終段UY807の実力7Wの電信専用機と第1局発とBFOに水晶発振を使用し、381kHz中間周波のコリンズ・タイプ受信機の組み合わせでした。

CQ出版社「アンテナ・ハンドブック」に掲載の短縮型グランド・プレーン・アンテナを使い、当時著名なCE3AA、DL7AA、VK3JA、VU2GG、W4KFC、ZS3AW局などと交信することができた。一時期キュビカル・クワッドを試験しましたが、電波の出口を一定にするため4バンド・バーチカル・アンテナ「エスカルゴGPアンテナ」を使い、無線局を長年運用してきました。 (CQ Ham Radio 1982年11号?参照)

交信証のQSLカードが数枚収集できた1962年末に、ローカルの中学生SWL、後日、JA1OJMを開局する沼尻良君から写真のような1枚のSWLカードを受取りました。そこには電波に関する報告が詳しく書かれてあり、初めて第三者により電波がどのように飛んでいるのかが確かめられました。この価値あるカードは45年後の今日も送信機に対する考えを証明してくれた記念として大事に保管しています。

1963年秋、2アマへ昇格していた私に、彼から無線機製作の相談が舞い込みました。その頃では自作機の欠点であった周波数変動を逆手に取って「可変水晶発信器」と「省力型変調器」、シリコン整流電源を搭載した、終段UY807の珍しい10W、4バンド電信・電話送信機を設計しました。 (CQ Ham Radio 1963年11月号参照)


沼尻良君が苦心してパネルを塗装し、かつ各ツマミにはレタリングを施し、配線も理論的な美しい送信機を作り上げてくれました。彼は後にフィンランドの大学で勉強され、北欧建築の第一人者になるのだが、これが中学生の作品かと大いに驚きつつ新たな才能を発見した思いに感動しました。試験運用も上々で瞬く間にAJD を完成させ、水晶発振周波数が変えられるという話に意外性があり、聞いていて嬉しくなるほど良く電波が飛びました。
 
     
 
市販キット送信機
9R59D+TX88D 試作機
SSB通信方式がアマチュア無線へ導入され始めた頃、1966年春にトリオ株式会社(現在のケンウッド)がユーザーの希望を盛り込んだ10W電信、電話送信機TX88Dと受信機9R59Dが発売されました。

またま、市場評価機を試作しましたので覚えていますが、終段にS2001、プリント回路のユニットを要所に採用した、測定器の無い初心者にも組み立て易い構成でした。受信機は全てプリント回路で、ダイヤル精度も良く試験運用では約 100局と交信できたと思います。保存しているヒット無線機の写真をお目にかけましょう。

1960年代は一部のSSB開拓者を除き、平均的なアマチュア無線家は前述したような自作無線機とワイヤ・アンテナから立派に電波を飛ばし交信をしていました。一方、私自身は電波が飛んでいるのか、いないのか結果を確認できない不安でいつも頭を悩まされていました。
 
地球の裏側では
4U1ITUの屋上にてN2QNと息子さん
私の本業は合成樹脂関係の仕事であると2007年11月20日のQTC-Japan.com「One Day Extraへの道のり」で紹介しました。会社勤務の前半は合成樹脂の開発研究また後半は自分が開発した合成樹脂を販売する営業マンをやりました。

営業の大半は海外出張を伴う業務でしたから、渡航中、折に触れて海外のアマチュア局のご厚意に甘え、JAの電波が1万キロ以上も離れた地球の裏側へ届いている様子を自分の耳で確かめようと考えていました。

ジュネーブの4U1ITUでは、受信機のダイヤルの向うに静かで奥が深く感じる空間があり、21MHz帯のJA局の懐かしい電波が確かに聞こえました。飛行機で約20時間も離れた日本からの電波です。しばしダイアルを回す手が止まり、体が前のめりなりなるのを抑えながら聞き耳をたてました。

N2QNに勧められ、ヨーロッパで初めてのCQを送り出し、ワーンと聞こえるパイルアップを体験しました。なみいるヨーロッパ局の隙間でJA1、JA3の5W ローパワー局も入感し、30局ほど交信することができた。

データを集めた時期は異なりますが、次のグラフが 5大陸でワッチした21MHz帯の入感スペクトルです。グラフからDX局と同じように多くのJAが聞こえているのがお分かり頂けるでしょう。
 
The monitoring spectra 
Information on how to collect QSL card by JA1IFBから引用
 
4U1ITUの無線機については多くの方々の訪問記に譲ります。ニュージランドでは、現地企業の役員から30フィーター・クルザーでのトローリングに招待され、フロント・パネルにはめ込んであった短波受信機でワッチしたものです。 JAが聞こえましたが、クルージングの爽快さに負け、終日魚を追いかけ過ごしてしまいました。

「地の果てカサブランカ」へはパリのドゴール空港からモロッコ航空で飛びました。当時のコール・ブックでCN2BSがモロッコ・アマチュア無線局の一番目に記載があり、ホテルのフロントに人探しをお願いして、Soumetさんにお会いすることができました。

CN2BSとアイボールQSO CN2BSの美しいQSLカード
 
 
CN8ADのQSLカード
彼の紹介で訪問したモロッコの熱狂的なアマチュア無線家がCN2ADであった。なんと現地企業の運転手も逃げ出すジャンク屋もどきの実験室兼シャックで、彼はハマーランドHQ180の修理をしていました。「やあ良いところにきた」、「屋根に上がってアンテナを張ってネオン管を取り付けてくれ」という。おそるおそる屋根に登りワイヤ・エレメントとはしごフィーダを引き上げ、ダブル・ツェッペリン・アンテナを張りました。

シャックに戻り21MHz帯で日頃お目にかからないCT、EA6、EA8および 5T5などをメモしながら、日が落ちるまで日本の無線機、とくにシリコン整流器を直列に挿入したB+電源の改良、シリコン整流器やツェナー・ダイオードの性能について、彼がフランス語こちらは英語で時折筆談を混え話しこみました。アフリカにもアマチュア無線命がいると涙がでる思いで帰途につきました。
 
ベランダから屋根へ昇る CN8ADの実験台、BC779も見える
      
HQ180のコイルを調整中、水晶周波数で校正している CN8ADのリグ、813のリニア・アンプとSWRメーターが見える
 
大歓迎して頂いた海外局のご厚意にむくいるため、コール・サインを紹介しておきます。
アフリカ
CN2BS、CN8AD
ヨーロッパ
DJ5OV、EC4BC、F8AD、G3GRJ、I3VQD、 OH2BH、OH2BPL、OH2OI、OZ5OB、4U1ITU
北アメリカ
K1BV、K1CC、KY7M、N0LW、W1AW、W2GKZ、 W3ST、W0BC、4U1UN 
南アメリカ
PY1EP、VP2ML
オセアニア
ZL1AIH
予備知識なしで有名なK1CC、OH2BH、VP2ML、W0BCを訪ねていました。
 
2000年代の現実は?
アマチュア無線局が 3万から約 53万局に増加した昨今、自作機でのんびりと我が道を行くことは終わりを告げています。しかし、科学的な遊びですから、性能と操作性が格段に改善された最新鋭50W機を使用すれば、バーチカル・アンテナでも「DXハンティング」ができるのではなかろうか? これは単純な疑問であり、本文の主題でもありました。 この疑問に答えるためにJA1IFB移動局を申請しました。これで10MHzと14MHz帯の運用を除けば3アマ局と同じ条件です。選択した無線機と使用アンテナを次に紹介します。
 
JA1IFB 移動局のラインナップ
 
 
MFJ-464
CWキーヤー/リーダー
Yaesu FT-847
50W HF+V/UHFオールモードトランシーバー
LPF
30MHzローパス・フィルター
CMF
3.5MHzで計算値900Ωの自作コモンモードフィルター
hy-gain AV-640
hy-gain社製 6m−40m、8バンド・バーチカル・アンテナ、最高電力1.5kW  バンド毎に独立した1/4波長のスタブがあり、SWRが1.5以下に調整できる。2階のベランダに建て、鉄道の遮断機の構造で、台風、雷の時は屋根面に寝かせ危険を避ける。
(hy-gain AV-640の詳しい解説はここをクリック)
 

MFJ CWーキーヤー/リーダー MFJ-464

YAESU FT-847 トランシーバー
 
運用記録
@ 運用期間 : 2004年 4月30日〜2005年 5月29日
A 運用時間 : 32日、526時間
B 運用成績 : WAC、WAJA達成
B 交信確認 : 2007年12月現在、QSL 510枚着信、44% コンファーム 
 
交信エンテイティー
[交信局数とエンティティー]
{交信局数と着信QSLの枚数}
  
局数
JA
DX
合 計
CW
 624   482   1106
SSB
   5    45     50
合計
 629   527   1156


          
枚 数
  415   95   510
確認率
  66   18   44%
      
2004年は忙しく、主にコンテスト時にオンエアして効率良くデータを集めました。 
 
【交信した6大陸の内訳】
ローパワーでも交信しやすいコンテストに集中した運用結果から、みなさんのメイン・バンド21MHz帯で、現在も最新鋭50W機とバーチカル・アンテナの設備で6大陸の海外局と交信できることが確認されました。

しかし、電離層にたよるアマチュア通信ですから不確実性を伴っております。みなさんの運用する無線局設備の改善、「今日はダメだったが、明日はこの手で仕留めよう」とパイルアップの現状分析と呼ぶタイミングなど、確実性を上げる運用方法の作戦を練る必要がありましょう。

例えば、アンテナ・オート・チュナーを追加した電力ロスの軽減、2アマに挑戦して空中線電力を4倍の200Wへ、さらにキロワットへ、高利得のビーム・アンテナの導入、狙うDXゾーンに対して最適な電波の打上角の選択など段階的に対策を立てることです。このように無線設備を改良し、自分自身も無線に対する総合力を高めてオンエアに心がければ、日ならずしてDXCCやWAZ獲得は夢ではないと信じます。
 
あとがき

アマチュア無線に使用する無線機と周辺機器、バンド・コンディション、DXニュース、受験体験記、各種のコンピューター・ソフトがインターネット・ウェブ上に溢れるほど流れています。なんと便利な情報社会になったことでしょう。これらから自分に適した情報を取り出し、アマチュア無線を楽しむヒントにするためには、みなさんの良き判断が求められています。 一に情熱、二に好奇心と三にしなやかな身のこなしと思います。ビギナーのみなさん、再びお勧めしましょう、知的感性を磨き「DXハンティング」に挑戦してみませんか?                (おわり)

 
 
《筆者紹介》
福田 廣道(ふくだ・ひろみち) 
JA1IFB/KA1Z

1936年生、大阪府出身。化学会社に在職中は合成樹脂の事業に従事。 第1級アマチュア無線技士、JARL監視員及び中央選挙管理委員、技術相談室担当、ARRL/VEC VE
 
de JA1IFB/KA1Z

QTC-JAPAN.COM 2008.1.5
(c) All Rights Reserved WWW.QTC-JAPAN.COM 2001-2008