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Photo & Text by JA1CVF Okada Kuniaki

■ 真空管で遊ぼう

真空管は過去の遺物といわれながらもマニア垂涎のパーツです。 音が軟らかいとかよい音がするというのはマニアのひいき目であると思いますが、初めて真空管のラジオを作ったときの感動は忘れられません。 スイッチをいれて真空管が次第にぼうっと赤味を増して輝き始める、やがてかすかなハム音(交流電源の音)に混じってラジオの音(放送)が聞こえてくる。

この時間的なずれが不安と期待をいやが上にもかき立ててくれます。 そして、この不安と期待の時間がとっくに過ぎているのに何も聞こえないこともしばしば、耳を切り裂くような異常発振の音に耳をふさぐこともあります。私がラジオを作り始めたころは最初からうまく行くことの方が珍しく、家族からは"ピーギャー騒々しい"と叱られていました。
 

このピーギャー音は再生式ラジオの専売特許で、自分の家の未完成ラジオだけでなく隣近所のラジオからも鳴り響くのです。 過剰再生で受信機であるはずのラジオから電波が飛び出し正常に働いているラジオも巻き込んでピーギャーと騒ぎ立てるのです。

近所にラジオ少年がいると近所中のラジオが調子悪くなるわけですが、よくしたものでどこのうちの正常ラジオもしょっちゅうピーギャーやっているので、まさかあのラジオ少年のせいだと気がつく人はめったに無くよき時代でした。 そんなラジオ少年も次第に製作のコツをつかみ腕が上がってきました。しかし、並4(4球再生式)が主流の時代には真空管は高価でラジオ少年にはなかなか手が出ません。

 
レフレックス・ラジオの魔力
そこでピーギャー音を出さずに1本の真空管で高周波と低周波の回路で2度のお勤めをさせようというレフレックスラジオが流行っていました。 私もこのレフレックスラジオに魅力を感じ、ラジオ少年のバイブルとも言うべき"初歩のラジオ"誌を穴のあくほど眺め、読み、理解につとめ製作に取り組みました。

1球再生式ラジオよりすばらしいはずでした。しかし感度は悪く毎日毎日出ないはずのピーギャー音の連続だったのです。 挙句の果てに自分の腕の悪さを忘れて筆者の大先生が間違ってることにして、1球式レフレックスラジオはピーギャー鳴れども心地よい音楽は奏でることなく夢のかなたに忘れ去られてしまったのです。今考えますと若気の至り・・・。

しかし、記憶のどこかにこの大失敗ラジオのことが残っていました。 ある日なんとなく眺めていた古い雑誌に載っていたレフレックスラジオに再び吸い寄せられてしまいました。 たった1本の真空管でスピーカの鳴るラジオの魔力にとり付かれて、ついに材料を集め始めたのです。

電気回路が苦手な私でも長年のキャリアは大したもので、回路図を難なく書き上げ全体プランがまとまってきました。 ただし、怪しげなのは部品を集めてから回路図を書くなどアマチュアらしい逆転の設計からは抜け出せません。困ったことでもあり、また創意工夫と柔軟な発想を自画自賛しながら、かたくなにこのスタイルを守っています。
 
 
 アンティークなスタイル
昔作ったラジオはお世辞にもカッコよくないものばかりです。 何かの空き箱利用とか裸むき出し、触れば感電間違いなしのブレッドボード(まな板)型ラジオか、アルミシャーシにパネルをつけた通信型受信機をあたりまえのように作ったものです。 当時はそのような形の受信機を通信型というものと信じていました。

今となっては恥ずかしくてそのようなものは作れません。 ベニヤ板を曲げたり、縦横に張り分け、糸鋸でスピーカグリルをくり抜き、エンボス加工をした銅板のダイヤル窓をはめ込み少しはカッコよく作ったつもりになりました。 電源コードも紐打ちコードという異常な熱の入れようです。 これで回路動作ががうまくいかなかったらどうするのでしょうか。(笑)
 
■ 回路はビーギャー音の出ないGe検波
回路は真空管6AR5で高周波増幅、1N34で検波、そして再び6AR5で低周波増幅というこの手のラジオでは珍しく再生検波ではありません。 実は再生検波の感度はすばらしくレフレックスにせず再生検波のいわゆる0-V-1方式のほうが感度がよいでしょう。

しかし、レフレックスにこだわったのは、再挑戦でもありまた、受信するときの再生調整のわずらわしさから逃れ(ピーギャー音がでない)快適に受信できることを期待しました。 高周波増幅をするために2連バリコンが必要になります。それもスーパーヘテロダイン用と異なり、きっちりシールドが必要になります。
シャーシの上、整然と配置された各パーツ シャーシ底部、パーツにこだわった
 
■ 回路はゲルマニウム ダイオード検波

部品の配置を誤ると発振しやすく思うように高周波増幅できなくなります。ピーギャー音がでないはずのラジオがピーギャー騒ぎはじめることになります。 スーパーヘテロダインの場合バリコンのシールドはあまり重要ではありません。 1N34(ゲルマニウム・ダイオード)で検波した後の100pと100kのフィルタは重要です。 100kはできれば高周波チョークにしたいところです。安定度と感度に影響します。 くどいようですが、このラジオの決め手は部品の配置と検波器のフィルタ部分にあります。このことがよく解らなかったために、若かりし頃にむだな歳月を費やしました。

 
■ おかげさまで今回は大成功!
もちろん特別大きな音は出ませんが、パーソナルラジオとして十分な音量が楽しめます。 そして再生検波ではありませんから軟らかい素直な音が楽しめます。 このラジオは10年程前JA1CVF開局30年の記念(モービルハム1989年1月号掲載)として作ったものです。スピーカグリルはコールサインの切り抜きになっており、使用部品もなるべく私がラジオ少年といわれた時代の部品を使っています。

整流器はセレン整流器であり、抵抗は昔風の大きいL型を使いました。
パスコンもパラフィンで固めたペーパコンデンサです。 このような部品は性能的によいわけではありません。 こんなもの作ると年が判りそうですが、最近の部品で作ることはもちろん十分に可能です。 回路が簡単ですから各部品がどのような働きをしているか理解するためにも楽しい工作ができます。
ぜひ皆さんも真空管で遊んでみませんか!

■筆者・岡田さんのホームページも併せてご覧ください。
 

写真と文:岡田 圀昭 JA1CVF 2001.06.26
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