TRIO TS-820の故障顛末記


Photo & Text By JA1BU, Onoh Hideo
先日のレポートに書いた、第二タヌキ小屋でマイクロループアンテナの調整中にダウンしてし まったリグ「TRIO、TS-820」を解剖・診察した結果をお知らせします。 実は、突然パワーが出なくなりファイナル部から臭い煙が出た時、大変いやな予感がしたのです。 それは、且って友人から同じ症状で同じ機種を持ち込まれたことがあり、その時、高価な終段管 S-2001Aが2本とも完全にボケてしまっていたからです。

その友人のリグの故障診断は結構手間を取りました。 症状から推定すると、大変なプレート電流が一気に流れて、プレートが焼けて球がボケて、やが てヒューズが飛んだとしか考えられないのですが、グリッドバイアス電圧は正常ですし、新しい 終段管を差し替えると正常に動作します。 しかし、何か異常箇所があるに違いないと、しつっこくチェックしている時、突如暴走が始まり、 2001のプレートが赤くなりました。 急いでスイッチを切り更に点検を進めた結果、配線間の小さなハーモニカ型のコネクタの中で薄 板状のピンが錆びて折れていることを見つけ出しました。

燐青銅製で銀メッキのピンがメッキ後の洗いが悪くて腐食していて、不幸なことにこのピンが終 段管のバイアス回路に入っていたので、送受信を続けてリグの温度が上がるとコネクタ付近の部 品や配線が膨張してピンの折れた部分が離れ、バイアス電圧が掛からなくなって大きなプレート 電流が流れてしまったという故障でした。 余談ですが、人工衛星の設計ではFMECA(故障モードの影響と危険性の解析)を行ってこの 様な危険箇所を抜き出し、ピンを並列にして故障を予防しますが、この程度のリグではそこまで は考えられていないでしょう。  

「シマッタ。もうS2001Aは手に入らないから6146を探すにしても高いからな」と思いました。 しかし今回は、TUNEモードにしてあったし、ヒューズも飛んでいないから、終段管は完全に はボケてはいないはずと、望みと祈りをこめて蓋と底のカバーを外しました。 底側のカバーを外し、終段管の裏側の配線を覗き込んだとき、何と、かなり黒くなった1〜2Wくらいのソリッド抵抗がコトリと落ちて来ました。???

そして、配線上では同型の抵抗が黒焼けになり、おまけに縦にひび割れしていました(写真参照)。 回路を調べたところ、2本の終段管のカソードが並列接続され、そことアースとの間にこの並列 接続された2個の10Ωの抵抗器が入っていました この抵抗器は終段管の動作安定化のためのバイアス抵抗でした。  故障の経緯を推定すると次のようになります。
@マイクロループアンテナの調整中の同調ずれで終段管の負荷インピーダンスが異常に低くなり 最大200mAくらいのプレート電流が流れ、2個の10Ω抵抗器にもこの大電流が流れた。
A大電流と云っても10Ω抵抗器1個当たりの電力は0.1Wで通常は問題ないはずであるが、 抵抗器半田付けにイモ付け箇所が潜在し、終段部特有の大きな熱ストレスでイモ付け箇所が拡大 し、その箇所の抵抗が増加して半田が溶融し、一個の抵抗器が脱落した。
B他方の抵抗器には電流が集中して過熱し、それにより抵抗が増加し、その現象が反復され、最終的に炎上するに至った。 実測したところ抵抗値は114Ωまで増加しているので、4W程度負荷されたとすれば燃えるの は当然である。
C今回、極端な同調外れを起こすマイクロループアンテナが用いられたことと、部品や半田付け が経年変化で劣化していたことが原因となった。  

手持ちの抵抗器が無いので、未だ診断だけで修理していませんが、終段管大ボケの最悪事態だ けは避けられたのでホッとしています。  ところで、このTS-820は製造番号840112から見ると昭和59年生まれなのでしょうか。 終段管と前段の励振管が真空管であとはトランジスタ化、アナログダイアルにデジタル表示を付 加、アナログ発振器だがフェーズロックVCOなど各種の特長を持った、真空管とアナログダイ アル時代の集大成の最高機種であり、今でも充分に実用可能な性能を持ち、自分で調整・保守・ 修理できるところも嬉しい、愛すべき機械ですね。
                                   
 タヌキ 付属の写真は終段のS2001A(今は6146Aが入っています)の底部。 中央の抵抗器が燃えて、ひび割れしています。

写真と文:小野英男 JA1BU (2001.06.25)

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