海外の話題 通信、郵便会社のアマチュア無線クラブ

 by Hiromichi Fukuda  JA1IFB/KA1Z

【DARC本部のキールからバウナタルへ大移動】
【ドイツの「アマチュア無線博物館」(AFM)】
【ドイツに見る代表的なQSL転送方式】
 
     
  ■ ドイツ「VFDB」への糸口

ドイツ・アマチュア・ラジオ・クラブ(DARC)の賛助法人に「アマチュア無線博物館」があることは前回報告しました。他に一社「Verband der Funkamateurin Telekommunikation und Post e.V.」VFDBと略す、ドイツ郵政事業の民営化に起因して誕生したらしい賛助法人があります。VFDBが発行する無線ニュース雑誌「CQ VFDB」の編集長へ宛てた一通の単純な質問メールが糸口となり、各種の資料を入手しました。

VFDBは「通信、郵便会社のアマチュア無線クラブ」とでも日本語訳すれば、会社の内容が推測できましょう。しかし、この会社の略称を「VFTP」とするのではなく、「VFDB」と命名された根拠がドイツの資料を繰って見ても、いまひとつ呑み込めません。

意を決し、編集長のDK1HI、ノイザーさんへメールで問い合わせました。彼から「VFDBに興味を持って頂き有難うございます。貴方の疑問は至極当然です。以前、ドイツ郵政事業は民営化され数社へ業務が移管されました。我々はその前に独立して、ドイツ連邦共和国の名残を引き継げるように、略称の一部にDBをあしらいました。ご理解を深めて頂くため、数点の資料をお送りしたいのだが」と結ばれているメールを受信しました。まさに名も無き一人のJAに好意を示してくれた瞬間であり、ノイザーさんからの資料と写真を基に、ドイツ・アマチュア無線の異なった切り口から見た、ドイツ事情が今回のお話です。

■ VFDB since 1950

これから紹介するVFDBこと、Verband der Funkamateure der Deutschen Bundespostは、1950年 1月11日にドイツ・ダルムシュタットで主に通信衛星開発と郵政行政を行う、西ドイツ郵政省直下、2,300人規模の「無線中央研究所 FTZ」から、発起人11名を数えたが、組織、資金もない状態で立ち上がりました。

FTZの経営者は、このVFDBを「アマチュア無線に興味を示す多くの人たちの目標に」との願望を託して、企業設立を許可しました。その上、FTZと西ドイツ郵政省の決裁権を有する役員が話合いを持ち、VFDBの活動を促進するため助成することを即決し、一般に公布しました。また、西ドイツ郵政省はVFDBが地方町村でもクラブ局を設置、運用できるように、クラブ局の無線要員の委嘱、事務所ビル内の無線部屋と屋上のアンテナ建設場所の無償使用許可を通じ、西ドイツ郵政事業の民営化、組織が解体されるまで助成、支援を行ないました。

現在、アマチュア無線入門者へ配布する案内書の見開きページを話の途中ですが次に紹介します。

VFDBの勧誘案内書(見開き1ページが100×210mmの大きさ)

* DX通信、衛星の研究、アマチュアTV、デジタル機器、パケット通信、D-STAR 宇宙ステーションとの交信、一般技術と明快にアマチュア無線の目的を解説しています。

VFDBは徐々に基礎を築き、地方にも拠点を設けることができました。その間、緻密な職業訓を行い、新しい無線技術者の発掘と新規事業創出のために、訓練生に試験を課し、成績を確かめながら、国際的に認められる、世界のヒノキ舞台で最長不倒距離を狙うアマチュア無線技士の育成へ向け、大学との教育訓練および最新技術にわたる提携関係をも確立しました。

日ならずして、当時の無線中央研究所ですら達成できなかった、超短波無線電話の実用化に成功した。ここに遠距離通信用の中継基地とアンテナ建設に協力することで、熱望されていた広大な運用分野を切り開きました。それにつれ西ドイツ郵政省の支援も次第に熱が入らなくなりつつあり、ドイツ・テレコム社と無線室、アンテナ設置場所を利用して不動産の取引を行い、VFDBの存亡を賭け、1998年まで企業努力により会社を持ちこたえました。

郵政事業民営化の後、多くの経営修正を行い、少しずつ時間を割きアマチュア無線へと我々の関心事が移りました。2007年初、遠距離用通信タワーの所有者からの依頼により、ドイツ・フンクツルム社が突然実施した設備現況調査で、商業用アンテナ群に、アマチュア用アンテナが混在することが明るみに出てしまいました。アンテナ・タワーは共同利用させるが、他は返還するように求められました。苦労の末、出資、経営参画する手法により、いくつかの問題が再発する危険性を抱えながらも、ドイツ・フンクツル社傘下120本の連隊旗を確保するに到っている。
 
     
 
■ 賛助法人としての「VFDB」
VFDBはダルムシュタッドから車で10分位の「ライムハイム」に本社を構え、DD2DB、 フランツ・ブリーデン社長他4名の役員により経営されています。2008年 5月末に開かれた DARCとの首脳会談に臨んだ折の彼らの記録写真です。
左からDL8ZBF、ヂンテルマン博士、DF6SA、グラムスさん、DL1FF,エルンストさん、DD2DB、ブリーデン社長(編集長のDK1HI、ノイザーさん撮影)
本社の担当者13名、94ヶ所のZ-DOKを運営する担当者14名、総人員32名により会員3,500名のお世話をしています。VFDB所属担当者32名とZ-DOK在住の会員アマチュア無線家50名が2008年 1月から 6月末までの 6ヶ月間に、20,460交信を記録したとの報告が上がっている。世界のヒノキ舞台で活躍できる資質を持つアマチュア無線家が、いつもお空に顔を見せて、普段着の交信仲間に加わり、無線話に興じつつ、身近な相談事の解決に立ち向かっている姿は、アマチュア無線界における、ひとつのお手本である。
 
しかしながら、ドイツでのアマチュア無線代表はIARUの議決権を有するDARCと認識して、 緊密な協力関係をお互いに構築しています。DARCも精鋭達を擁するVFDBの立場に理解を示して、Z01から始まる94ヶ所の特別DOKの指定、QSL転送業務代行、さらにVFDB会員がDARCに入会する場合の年会費割引等の優遇措置で我々に応えてくれている。全幅の信頼を寄せ合い、双方有能な協力者としてアマチュア無線発展のため邁進しているところです。
 
■ アマチュア無線ニュース雑誌「CQ VFDB」
VFDBが発行するアマチュア無線ニュース雑誌「CQ VFDB誌」を次に紹介しましょう。毎年 3、6、9および12月に4回発売される、A4版40ページの写真が多く挿入された、アマチュア無線専門季刊誌で、年間v4冊の購読料は10ユーロです。
「HAM RADIO」の様子を紹介した秋季号の
表紙
「HAM RADIO」でアイボールQSOを楽しむ風景の
裏表紙
 
2枚の写真は「CQ VFDB」 2008年秋季号の表紙および裏表紙の写真です。今年5月、開催された「HAM RADIO」の参加者を主題に、大きな写真はVFDBのブース受付、左下はビールのジョッキーが写っていますからVFDB担当者の昼食?中央は案内書、隣が秋葉原ラジオ・デパートのような小物部品即売会の様子を写しています。裏表紙の写真群は、ドイツ人なら直ぐ分かる著名なアマチュア無縁家達のアイボールQSOの様子を紹介しているのでしょう。また、誌面では2ページにわたり www.t-city.de 飛行船の話題を取り上げながら詳しく「HAM RADIO」の様子を報告しています。
 
■ ジュニアの育成
アマチュア無線入門を希望する青少年へ配慮した多彩な記事が特集されている。次の小学生を中心とした野外ARDFF講習会や室内でのLEDランプの組立実習の他、13歳から23歳の青少年に取り組みやすい超短波へ興味を持ってもらうため、2mと70cm帯受信用周辺機器の製作講習会等、DARCのTechniClubとも連携して、VFDBが青少年の育成に大変熱心であることを物語っています。
 
子供達を中心開催された「ARDF」夏期講習会の記念写真
子供達を対象にした「LEDランプ製作」夏季実習の記念写真、手に 手にランプを持って写真に納まっています
 
■ Z-DOK*だより
一人の地域担当者が平均7ヶ所のDOKに点在する20のアマチュア無縁クラブを世話しながら、彼らと共にクラブ・ミーティングを開き、QSLの転送、部品、ジャンクの交換、その他、戸外のアマチュア無線活動へ参加して、その折々の様子を「CQ VFDB」へ投稿し、ニュース雑誌を通じて各地の会員が情報を共有しています。次のフィールド・デーが格好な話題でしょう。
ペテルスブルグでのフィールド・デー風景、
テント村とバーチカルアンテナ
同じ場所でG4TPH*の組立式ループアンテナを使用中
 
* DOKは日本のJCCとJCG が一緒になったような地域整理番号で、詳しくはドイツにおけるQSLの転送と併せ、次回の記事で詳しく説明する予定です
* G4TPHのループアンテナは本誌「デイトン発18時50分」を併せてお読みください。
 
■ 変り種アンテナ
ビール・クレートに巻いた送電線からのノイズ 探索用アンテナ
写真に示すようにプラスチック製のビール・ク レート(ビン・ビールを安全に運搬する箱)にアンテナ線を10回ガラ巻きして大型コイルを作成、1000pFのバリコンを用い、1.8MHzに同調する。

このアンテナをKenwood TS-430に接続して、自動車で移動しながら、15kVの送電線から漏れるノイズを探索、測定する変り種のアンテナの実験例が紹介されています。
 
■ QRP(小電力による交信)
ヨーロッパ内のDL,F,G,IやSM地区でQRP愛好家が増えつつあります。DK9MS、シュレイターさんによれば、彼はアメリカの「Small Wonder Labs」社製のキット、「RockMitee-40」トランシーバーを駆使して、180交信を行い、「DL-UT5 1,479および DL-UA 31,817km」の記録を樹立したと報告しています。SWL社の技術説明書には、RockMite-40は7015kHzおよび7030kHzの2周波数が選択でき、出力は400mWと記載されている。
RockMite-40の完成写真 交信を裏付けるQSL−カード
 
RockMite-40で交信できたエンティティと局数を示すグラフ
 
使用したアンテナは7MHz用のV型ダイポールへ10mのRG-58により650mWを給電、 CWモードにて運用した。
Miles per Milliwatt-Award」収得も楽しい目標であると誇らしげである。
 
■ VFDBとDARC首脳会談
カラーページ表紙奥付で、「HAM RADIO」前日に開催されたVFDBとDARC首脳会談の模様を、YLプロジェクトと併せて童話風で取り上げている。お世話になっている市長さんを中央へ飾り、表彰式、昼食の料理、招待状また会議の小休止の様子や喫茶室への呼び込みなど、読者の皆さんへありのまま公表しています。会議の内容は本誌2ページを使い、細かく伝えていますが、署名入りの議事録には、「本件については意見が一致しないことに同意しよう」という日本で聞きなれない一節があったように思います。
 
VFDBとDARC首脳会談の様子
同時進行のYLプロジェクトの様子
 
VFDBとDARC首脳会談の議事録に続き、アマチュア無線界において著名なVFDBの一員として存亡を賭けた経営努力、青少年の育成にも尽力し、5月にサイレントキーされたお二方のパイオニアに対し、彼らの業績と貢献を称える、全てのアマチュア無線家を代表してVFDB役員心からの哀悼の辞が刻まれていました。
 
■ おわりに
VFDBから入手した2008年度の「CQ VFDB」 3冊の記載内容をドイツ訪問時の参考にすべく丹念に研究して見た。アマチュア無縁界で精鋭と自認するVFDB役員の経営力点が、先ず自分達で考える、アマチュア無線家へ楽しみを、青少年の育成、日常の付き合い、地域の活性化、これらの項目に置かれていることが、おぼろげながら推測できました。とくに青少年が少し背伸びすれば物事が理解できるように配慮したVFDBの行動と説明が行き届いています。
DARCと今回のVFDBは組織の命運がかかった危機を経営手腕で切り抜けて、立派に企業を構築した点が共通しています。人間のやることですから問題を抱えているかも知れません。アマチュア無線を愛する、捨て身の献身が実ったというべきでしょう。これを知りえたことは大きな収穫です。
 
「CQ VFDB」の記載記事の分析表          JA1IFB/KA1Z
力点順位
記事分類
記載内容
平均頁数
配分率(%)
1
 コンテスト  VFDB コンテストと雑感
5.5
13.7
2
 ノビス  LEDランプ、工作台他
4.7
11.7
3
 地方ニュース  VFDB Z-DOK活動ニュース
4.5
11.2
4
 製作技術  アンテナ 3題
4
10
5
 イベント  HAM RADIO 取材紹介記事
3.7
9.3
6
 連盟報告  DARC、VFDB首脳会談
3.5
8.8
7
 技術紹介  GPSの解説
1.7
4.2
8
 QRP  Rock Miteの紹介と運用実績
1
2.5
9
 会員勧誘  会員勧誘の質疑、応答
1
2.5
10
 クイズ  部分写真から製品を想像する
1
2.5
11
 名簿  VFDB役員、世話役名簿
1
2.5
12
 問い合わせ  編集部への連絡方法
0.8
2
13
 人事  訃報と哀悼の辞
0.5
1.3
14
 ARDF  ARDF講座
0.3
0.8
15

 教育講座

 受験講座案内
0.5
1.3
16
 目次  CQ VFDB 目次
0.5
1.3
17
 編集  編集後記
0.5
1.3
18
 申込書  入会申込書
0.5
1.3
19
 広告申込書  申し込み法
0.5
1.3
20
 広告  12件
4.3
10.7
 
補足説明をするならば、コンテスト結果には必ずSWLのデータ記載があり、また特異的だがQSL印刷の広告が皆無であることであろう。(おわり)
 
出典: www.darc.de
http://www.vfdb.net/ および [CQ VFDB] 2008年春、夏、秋季号
http://smallwonderlabs.com/
http://www.users.on.net/~zietz/qrp/club2.htm
 

QTC-JAPAN.COM 2008.12.15
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