海外の話題 DARCは24地域にQSL転送対策を行う

 by Hiromichi Fukuda  JA1IFB/KA1Z

[ドイツに見る代表的なQSL転送方式]
 
     
  ▼ ドイツ連邦共和国の16州とDARCの24地域

ドイツは、フランス、スイス、ルクセンブルグ、オーストリー、チェコ、ベルギー、デンマーク、オランダおよびポーランドの9ヶ国に囲まれた、昔の豪族が築いた地方ごとの文化と伝統を誇る16州の地方自治体からなる連邦共和国である。中にはベルリンとハンブルグのように、それ自体でひとつの州を形成していことも有名です。アマチュア無線では少し様子が異なり、DARCはQSLカードの転送地域を左の地図へ示したように、ドイツ連邦共和国の16州の枠を超えて、24の地域へ分割、設定しました。

DARCが分割した地域地図

地図にZプリフィックスはありませんが、前回紹介したVFDBへ指定され、各地域に共存しています。なお、J指定地域は現在空番号。地図に示されたアルファベット24文字がDARCのQSLカード送付先DOKのプリフィックスです。この記述をDJ3HW、ジョージさんとDO7RR、ハイネさんに確認して頂ただき、現場写真を添付した修正文が今回の記事です。

しかしながら、洋の東西を問わず身近な問題として、アマチュア無線家はQSLカードの交換をいかに速く、安くできるかに興味があるのではなかろうか。DARCはドイツの地方自治体が国内に分散して存在することに着眼し、果敢にQSL転送対策を行いました。

DARC本部ビルの全景

 
     
 
■ DARCのQSLカード転送法
DARCはドイツの地方自治体が国内に分散して施行している行政方式に着眼し、果敢にQSL転送業務の改善を行いました。1972年10月、DARC本部をバウナタルへ新築した際、ミュンヘン支部にあったQSLビューローも引き取り、DJ1MC、エルンストさん指導の下に、QSLカード情報の電子化と仕分作業の機械化に着手しました。

QSLカードの仕分作業を国内と国外に分割し、国内QSLカードの仕分作業を機械化。国外QSLカードはデータベースを基にカードに4桁のDOK番号を印刷し、手作業仕分を行っています。国外QSLの宛先確認を目視判定から光学読取方式とするため、自動仕分け機を現在改造、製作中といいます。
 
2009年 6月、HAM RADIO見学の帰途、立ち寄った本部QSLビューローの作業場は、外国QSL仕分、国内QSLカード確認作業室と機械操作、発送作業室の日本人には少し暗く感じる2部屋から構成されていた。業務優先で乱雑を極めているのではと思きや、良く整理整頓された環境で8名の女性担当者が静かに作業をしておりました。仕分け作業室の壁際に約15万枚、機械操作室に約10万枚の仕分けされたQSLが保管されているのと、外国からDARCビューローへ直接送付のカード袋に貼られていた、回収切手が詰まったダンボール箱が4個廊下近くに在ったのみで、倉庫施設はありません。
       
DARC QSLビューローの業務データ
項 目
2009年
備 考
 男性責任者 (名)
1
部長
 女性国外担当 (名)
2
DARC職員(英語を話す)
 女性国内担当 (名)
6
DARC職員
 パソコン (台)
10
1台/名、2台/受発信管理
 QSL情報量
175,000局
全免許局の2倍
 仕分機 (台)
2
外国用自動機改造中
 間合連絡法
メール、PDF、文書
有線電話機1台
 QSL発送頻度
240回/年
約60包/作業日
 年間処理枚数
5,5000,000
約120枚/年/会員
 
2009年現在、上のデータが示すように、約18万局分の個人局データベースが整備され、検索、確認業務が省力化されています。QSLカード梱包も機械化、磁気テープおよびCMC-7コードを添付し、発送宛先の管理を確実にしている。20年の試行錯誤を経て、各地域会員とDARCの役員達が協力して独自のQSLカード転送方法を軌道に乗せました。
 
手作業による外国QSLの仕分け風景(後方は筆者) DOK番号記載漏れQSL等の確認作業
 
国内QSLの自動仕分機と可搬式収納箱 自動仕分機奥にある可搬式QSL収納箱
 
上の自動仕分機の写真は撮影時期が異なり、手前の赤い置物がある機械は目下メーカーへ 搬入して改造中です。仕分後のQSL収納箱はコンピューターの指図により、窓際の整理棚 へ挿入します。
 
梱包待ちQSL(一区切が一日分の発送量) 梱包、発送作業台、青色機械は自動梱包機
 
Distrikt−Ortsverbands−Kenner(DOK) 
DOKは「地域―町村―地域の世話役」。日本のJCCとJCGを一緒にしたような地域を示す番号をDOKといいます。DARCはドイツ全体を24地域に分割、さらに狭い地区を管理するそれぞれのDOK番号を割り振りました。地域には24名の代表者を、1,194ヶ所のDOKには1,194名の世話役を配して、会員への連絡およびQSLカード転送業務を任せています。

日本の記念局8Jに似た特別地域局に「Sonder DOK」が会員からの申請により指定され、2009年 6月現在、18個のSonder DOKがあります。「海外からの話題」で紹介したVFDB会員には、彼らの居住地区に無関係で94のZ−DOKが指定され、各地のDOK域内に共存しています。その他、遠隔操作の無線局と宇宙通信局にもDOKの特別指定があります。 上記の地図のアルファベット文字をクリックすれば、DOKのホーム・ページに連動して、世話役の氏名、住所、電話番号およびメール・アドレスが即座に検索できます。このDOKを採用したQSLカード転送方式がDARCの最大の特徴です。
 
ドイツの地域区分とDOK番号一覧表                         
Distrikte
Region
DOK
Distrikte
Region
DOK
 Baden
A
A01-A53
 Rheinland-Pfalz
K
K01-K56
 Bayern-Ost
U
U01-U30
 Ruhrgebiet
L
L01-L31
 Berlin
D
D01-D27
 Saar
Q
Q01-Q21
 Brandenburg
Y
Y01-Y43
 Sachsen
S
S01-S70
 Franken
B
B01-B43
 Sachsen-Anhalt
W
W01-W38
 Hamburg
E
E01-E39
 Schleswig-Holstein
M
M01-M36
 Hessen
F
F01-F76
 Schwaben
T
T01-T21
 K-Aachen
G
G01-G56
 Thuringen
X
X01-X48
 Mecklenburg-Vorpommern
V
V01-V30
 Westfalen-Nord
N
N01-N61
 Niedersachsen
H
H01-H66
 Westfalen-Sud
O
O01-O055
 Nordrhein
R
R01-R34
 Wurttemberg
P
P01-P61
 Nordsee
I
I01-I58
 Sonder-DOKs
-
0-10
 Oberbayern
C
C01-C37
 VFDB
Z
Z-01-Z94
 
■ QSLカード転送の流れ
ドイツではDOKが開催する「OV−アーベント」(クラブ・ミーティングの意味)の席でQSLカードの受渡が行われます。QSLカードの受渡を希望するアマチュア無線家はこの会合に出席しなければなりません。会員に時間と経費のかかるQSLカードの受渡作業を委ねている点は、DARC独自発想と思えますが、たった一枚のQSLカードから互いに話が弾み、アマチュア無線活動の活性化が始まる利点もあります。
 
経験豊かな、例えば、博士号、工学士号を有するアマチュア無線家がDOKの世話役に選出されています。本部QSLビューローから公表計画通り、QSLカードがDOKへ転送されてきますが、世話役はビューローからの、粗分類された毎月約500枚のDOK宛てQSLカードを、写真に示すQSLカード整理棚を自宅またはクラブ局に設置して、日頃、顔馴染みの平均約43名の個人会員宛にさらなる仕分を行い、OV−アーベントへ持ち込みます。

世話役はカードの仕分け処理時間を基にOV−アーベントの開催日決定、集合レストランの選定や届出による会員の代理人の許可など、業務遂行の権限も持っています。QSLカード郵送料および梱包費用などの諸経費はDARCの事業費で賄われますが、仕分棚の製作費と家賃の負担者は未確認です。ドイツ全土で約1,200ヶ所ある中の代表的なQSLカード仕分整理棚を紹介します。
 
中規模DOKの世話役のQSL仕分棚 小規模DOKの世話役のQSL仕分棚
 
■ ブレイク・ブレイク・ブレイク
DARCから入手したアマチュア無線関係の資料に、あるDOK世話人署名のA4版 2枚の報告書が混じっていました。コールサイン、データ数字のコンテスト結果報告のようでしたので、無視してしまい、帰途、特急列車の車中で何気なく資料を読み返してみて、それがDOK世話役のQSL転送とOV−アーベントの近況を切実に訴える報告書であることに気付きました。これは本題から少し外れますが、DOK世話役のDARCへ報告したい要点を筆者が分析しながら、読者のみなさんへ参考として紹介します。
 
DOK世話役の報告書の内容分析表                    JA1IFB/KA1Z作表
項目
2007
2008
2009年度
-
-
-
1
2
3
4
5月
BURO
DOK会員数
36
36
36
37
39
38
36
利用会員数
28
23
16
16
15
17
13
[内大量利用人数]
[5]
[5]
[6]
[6]
[4]
[6]
[6]
利用しない会員数
8
13
20
21
24
21
23
月次処理QSL枚数
240
271
354
280
210
292
250
 
DOK会員数とQSLカードの受渡枚数が横並びで変動していないのに、2008年夏から始まった世界金融危機に起因する影響が家計にも及び、毎月数枚のQSLカードしか送付しないアマチュア無線家が、OV−アーベントの参加費を含めた、ビューロー経由の経費がドイツ郵便局経由の経費に比べ高くなり、ビューロー利用を敬遠始めています。 交信数の多い約15パーセントの人達がビューローを継続利用している状況が鮮明になりました。かかる環境下で、このDOK世話役は、当然OV−アーベントへの会員出席率も悪くなるであろうし、ひいては、営々と積み上げてきたQSLカード転送方式が崩壊しそうな兆しを必死にDARCへ訴えたものと筆者は推測しています。
 
■ 2009年 6月度ドイツ国内QSL発送実績
月 日
稼働日数
発送先地域名
発送小包数
01.06.
-
-
-
02.06.
-
-
-
03.06.
1
 Baden (A)
53
04.06.
2
 Franken (B)
43
05.06.
3
 Oberbayern ( C ), Berlin (D)
64
06.06.
-
-
-
07.06.
-
-
-
08.06.
4
 Hamburg (E), Hessen (F)
115
09.06.
5
 Koeln-Aachen (G)
56
10.06.
6
 Niedersachsen (H)
66
11.06.
-
-
-
12.06.
7
 Nordsee (I)
58
13.06.
-
-
-
14.06.
-
-
-
15.06.
8
 Rheinland-Pfalz (K)
56
16.06.
9
 Ruhrgebiet (L), Scheleswig-Holstein (M)
67
17.06.
10
 Westfalen-Nord (N)
61
18.06.
11
 Westfalen-Sud (O)
55
19.06.
12
 Wurttemberg (P)
61
20.06.
-
-
-
21.06.
-
-
-
22.06.
13
 Saar (Q), Nordrhein ( R )
34
23.06
14
 Sachsen (S)
70
24.06.
15
 Schwaben (T), Bayern-Ost (U)
51
25.06.
16
 Mecklenburg-Vorpommern (V)
 Sachsen Anhalt (W)
86
26.06.
17
 Thuingen (X)
48
27.06.
-
-
-
28.06.
-
-
-
29.06.
18
 Brandenburg (Y)
43(予定)
30.06.
19
 VFDB (Z)
94(予定)
31.06.
-
-
-
DARCビューローのQSLカード仕分け作業は、毎週5日間、午前7時から午後3時半の実働7時間30分です。年間240日の作業により処理量は550万枚を記録しています。

DARC QSLビューローからの発送予定表はDARCのホーム・ページに公開され、会員とDOKの世話役はこの予定表を参考にして、OV−アーベントを開催します。

新規入会また脱会の届書やQSLマネージャの問い合わせ、苦情の申し入れは、メールとPDF指定様式に沿い全て電子処理されており、 DARC QSLビューローは迅速に対応しています。















上に紹介する写真のようなスタンプを特別DOK用に有償で作成してくれ、フィールドデーなどで無線設備の設営に忙しい折には大変重宝です。
 
■ QSLカードの受渡の流れをまとめ




DARCへ届いたQSLカードはDOK別に仕分け、予定に合わせ24地区へ宅急便で送付。

DOKの世話役1,194名は各自の担当3ヶ所のアマチュア無線クラブ・ミーティングに出席してQSLカードの受渡を行う。

単純計算では一人の世話役が3ヶ所で毎月約1,500枚のQSLカードを処理します。

QSLカードの大きさは170−220g/m2 重量の紙で作成し、               
最大 10.5 X 15.0 cm                      
最小 8.5 X 13.5 m のカードである。


なお、SWLはDL-L01/1695071、DL-N01/1502345などのDOK番号 が明示されたSWL番号をDARCから指定され、SWL達のQSLカードは通常のアマチュア局と同じ取り扱いにより転送されますが、DARCの非会員には残念ながらQSLカードの転送サービスはありません。

 
■ おわりに
ドイツのアマチュア無線クラブDARCが実施しているQSL転送方式を調べて見ました。独立精神の旺盛な地方自治体が万遍なく点在している国勢を基に、QSL転送業務の一番時間と経費が嵩むアマチュア無線家個人への受渡を、DOK世話役に委ねた方式はDARCの経費削減と全会員参加型のアマチュア無線活動おも促進し、ヨーロッパでは好評であることが判明しました。
 
QSLカードの受渡が行われる「OV−アーベント」の席では、世話役が自分の机にDOKの表札を置き、にこやかな顔で出席者達へサービスしている風景写真がドイツのアマチュア無線家のホーム・ページで良く紹介されています。内実、アマチュア無線に対する価値観の異なる一部会員にすれば一々QSLカードを受け取るために毎月1回OV−アーベントへ出かけるのは、時間、ガソリン代と約25ユーロの飲食費が掛かり面倒この上ない話です。それでも、写真のような山小屋でのOV−アーベントには損得無しに参加してみたいですね。
 
 OV−アーベント開催ヒュッテの全景

一方、DOKの世話役にとってもQSLカードの転送作業が1年、2年と定常化すれば、彼らの本業との時間調整、宅急便利用に合わせた荷作り、QSLカードの一時保管への配慮など負担増になり、無償で自発的ボランティア活動の範囲を超えることが考えられます。
山小屋OV−アーベントの案内状  
 
現在まで未解決であったDOK番号の記載がない外国アマチュア無線家から着信するQSLカードの仕分は、目下、光学読取方式の自動ソーターの開発中で、間も無く導入予定という。今回の面談からDARC方式が完成間近と理解できましたが、少しずつの協力を惜しまない会員参加型のDARC運営を踏まえても、あるDOK世話役からQSLの転送業務に関する緊急報告が上がっているように、このDARC方式には今後微調整すべき問題があるように思われます。   (おわり) 
 
出典:
www.darc.de     
Wie kann ich Mitglied werden?
Die Distrikte im DARC     
Ostverbande im DARC              
Das DARC QSL−Buro Information     
Information fur Kurzwellenhorer(SWL)     
Die QSL−Vermittlung、CQ DL Feb. 2001
 

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