海外の話題》  でいとん・れぽると 2009

 by Hiromichi Fukuda  JA1IFB/KA1Z

 
     
  前回の記事「ドイツのミーティングーQSL−受発信」で、コリンズ75A-4受信機に組み合わせたBC−1073Cパノラミック・アダプターの写真を紹介しました。古い資料の検索から、本機の姉妹機器と思われる、Signal Corps社製BC−1031−Cに関する10行ほどの解説と今回デイトンでアマチュア無線局用数台の売り物を見つけました。

自局が受信している周波数を中心に±50kHzへ入感する電波をブラウン管面に写し出して眼で見る便利なモニターです。現在では、アマチュア・バンドのスペクトラムを見ることはいとも簡単で、DXペディション局を呼ぶ折に利用されていることと思います。

一方、日本では約50年前、三田無線研究所がアマチュア無線局用に独自の真空管式パノラミック・アダプターを開発し、販売を始めました。たまたま、筆者のシャックに歴史を物語る貴重な「Delica DPA−2」が一台あり、デイトン風景も織り交ぜて補足説明を兼ね紹介しましょう。

 Delica DPA−2
このDPA-2型パノラミック・アダプターは次の構成図のように、スーパーヘテロダイン受信機です。アマチュア無線局のトランシーバーから、中間周波数455kHzの信号を取り出し、広帯域トランスで、455±50kHzの帯域幅を増幅します。次にミキサーでさらに周波数の低い226kHzに変換、増幅してブラウン管に加え、波形を観測できるようにしています。

DP-2の特徴は6BE6のミキサー段で、周波数を226kHzへ変換する場合に注入する局部発信周波数を一定の周期の、ノコギリ波で±50kHzを変化させ、受信目的周波数の中心±50kHzに入感している信号を、順番にブラウン管面に写ししだす機能を有している点です。


株式会社 三田無線研究所製 パノラミック・アダプターDPA−2型機の構成図

付属回路にその周波数を50kHz変化させるためのノコギリ波発信回路、周波数変換用のリアクタンス管の回路があります。ノコギリ波発信器の出力を増幅して、ブラウン管にスイープ周波数として注入する回路をも接続していることなどです。
 
     
 
パノラミック・アダプターDPA-2の修理
パノラミック・アダプターDPA-2の出物を入手後、三田無線研究所から頂いた回路図を基に、ダストカバーの塗装、フロントパネルの清掃およびネジ類の取替えから作業を始め、いわゆるレストアーを行いました。
 
Delica DPA-2の正面写真 シャーシーの上面写真
 
シャーシー内部のCR部品配置の様子
すべてのコンデンサーと色褪せた抵抗を新品に取り替えました。同調点がずれていた広帯域トランスをディップ・メーター片手に、1次側120pF、2次側は150pFの新品コンデンサーと交換、405と505kHzの同調設計値へ戻しました。標準信号発生器を用い、226kHzのIFコイルから、広帯域トランスを最終調整し、ブラウン管自体を回転させて輝線の傾きを修正、復旧させました。

 現用受信機へ接続し、ブラウン管面の輝線上に「ピョコ、ピョコ」踊る信号が入感する様を眺めるのはなかなか楽しいものです。筆者の受信機のダイアル表示は中心周波数±12.5kHzであり、周波数範囲を±25kHzに設定しておけば、バンド幅50kHzに入感してくる信号を、ダイアルを止めたまま視ることができます。

誌面でブラウン管上の展開スペクトラムをお見せしたいのですが、残念ながら、ブラウン管面の撮影装置を持ち合わせないため割愛します。
 
デイトン・フリーマーケットにて

運用バンドの電波入感状況を眼で確かめ、効率的な交信を楽しみ、そうして、送信電波の質を少しでも改良しようと無線機器の試作に熱意を注いだアマチュア無線家の足跡を辿るべく、デイトン・ハムベンションのフリーマーケットを探索してみました。

 
ヒースキットSB-300ラインとパノラミック。アダプター
 
雨上がりの早朝、フリーマーケットでコリンズSラインに対抗して自作派が挑んだ写真のヒースキットSB-300ラインとパノラミック・アダプターを見つけました。写真撮影の許可を申し入れたところ、「どうぞ、私の力作だ!今でも完動だよ」と筆者と同年代の売主さんが誇らしげ。
 
送信電波の監視も可能なヒースキット 八重洲無線製
 
写真のヒースキットには歪んだサイン・カーブが画面に見えますが。因みにお値段は125ドル。
 
ヒースキットSB-301ラインとパノラミック・アダプター
 
リニアーアンプSB-200こそ写真には写っていませんが、手入れの良いヒースキット無線機器が揃っているSB-301 ラインです。その昔1980年代でしょうか、腕に覚えのあるアメリカのアマチュア無線家達が果敢に新技術へ挑んだ「つばものどもの夢のあと」を垣間見ることができました。
 
あとがき
レストアーが完了したDelica DPA-2は、その使用コンデンサーと抵抗類の数値表示法から、約35年前に製作されたと推定しました。物理的な損傷と欠品部品がないかぎり、手入れを継続すれば、効率は別にして長く性能が保持できることを知り、信頼性が高い技術に目を見張る想いです。将来の無線機の主流になろう、FlexRadio Systems社の一歩先を走るFLEX-3000やSB-5000のようなコンピュータ制御によるSDR無線機に馴染むためにも、この技術の原点のようなパノラミック・アダプターを紹介しました。
 
アメリカのアマチュア無線家達はご多聞にもれず高齢化しており、無線機器の手入れが行き届かなくなったのでしょう。今回のパノラミック・アダプターもコリンズもどきの自作機1台、ヒースキット12台およびYaesu1台と、個人の愛用機がぼつぼつ処分される時代が来ているような印象を受けています。 (おわり)
         
 

QTC-JAPAN.COM 2009.06.11
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