海外からの話題》 
 
 

 by Hiromichi Fukuda  JA1I FB/KA1Z

 
     
  Ham Radio 2011の開会式終了後、キッズ工作コーナーにて誠に衝撃的な光景を目の当たりにして、 「♪月の砂漠をはるばると、旅の駱駝が行きました、金と銀との鞍置いて、二つならんで、行きました」 と加藤まさを氏作詞の有名な唱歌が脳裏に浮かびました。

中近東の由緒ある王族の王子様でしょうか、伝統的な衣装をまとった8歳くらいの少年が熱心に英語による指導を受けながら、モールス発振機を工作していました。すでに少年は英語とドイツが理解できるものと推測され、近い将来、素晴らしいアマチュア無線家に成長し、アマチュア・バンドでドッグ・パイルアップを受けることになりそうです。

熱心にハンダ付け工作に取り組む中近東から参加の少年(筆者撮影)

ヨーロッパの国々から交通の便が良い南ドイツのフリードリスハーフェンで開催される恒例のHam Radioへ各国から多くのアマチュア無線家が参集します。中には著名な方が訪問されることは当然のなり行きでしょう。しかしながら、この一枚の写真が筆者の温めてていたアマチュア無線に関する課題にピッタリでしたから、ご紹介しました。お話を続けたいと思います。

 
     
 
◇ ドイツのアマチュア無線
ドイツにおけるアマチュア無線技士人口は2007年度を底に、年々増加しはじめました。最大規模のドイツ・アマチュア無線連盟、DARCの会員数は45,000名を数え、単独でアマチュア無線技士の52%を占めています。ドイツ通信、郵便会社アマチュア無線クラブ、VFDBの3,500名およびアマチュア無線博物館1,200名のAFM会員を加算すると、統計が公表されている範囲で、クラブ加入率約58%になります。
 
フリードリスハーフェン会社の事務所棟5階からの会場鳥瞰写真
確かに、楽しいテレビ・ゲーム、インターネットおよび携帯電話が一般社会へ浸透し、いまさらアマチュア無線ではないことは、洋の東西を問いません。

しかし、上記のクラブを率いる世話役達はこの時代の大波に翻弄されながらも、生き残りを賭けて果敢に対策を打っています。その活動に筆者は着目し、とりわけ、DARCがアマチュア無線興隆のため推進しているプロジェクトを2008年夏から折に触れて、みなさんへお知らせしてきた通りです。

左に掲げる筆者撮影のHam Radio会場の鳥瞰写真は、一般参加者が入室できないフリードリスハーフェン・メッセ会社の事務所棟の5階から撮影しています。

なぜこの写真を敢えて紹介したか、理由はドイツに、アマチュア無線の将来を再構築するため、「大所高所からアマチュア無線界を眺め、対策を練った数人のアマチュア無線家がいるのではあるまいか?」という疑問を解く鍵にしたく考えたからです。
 
◇ ドイツ・アマチュア無線地図
現在、ドイツ連邦共和国には最大クラブであるドイツ・アマチュア無線連盟、DARC,2番目のドイツ通信、郵便会社アマチュア無線クラブ、VFDBおよび結成趣旨が少し異なりますが3番目のアマチュア無線博物館、AFMの他に3,300のアマチュア無線クラブが存在し、それぞれの持ち場で活躍しています。
 
DARC本部とアマチュア無線塔の全景写真〈転載〉

DARCの使命は会員44,260名のお世話をしながら、アマチュア無線は科学への入り口と捉え、アマチュア無線の楽しみを通じて、技術指向した国際派の青少年の育成および災害救助への協力を意図し、社会と共存する意義を構築することです。

VFDBは新規技術の開発、青少年の育成および技術指向したアマチュア無線家を世界のヒノキ舞台へ登板させること、またAFMはアマチュア無線の無線機器の修復、保守および展示、歴史の継承にあります。後者二つのクラブはDARCに対する健全野党の意味合いでDARCと提携してアマチュア無線の活性化に奔走しています。

これからは、ドイツ・アマチュア無線連盟、DARCに的を絞りお話をしましょう。本部はドイツ中央部、自動車のフォルクスワーゲンの本拠地バウナタルに自前の事務所棟とアマチュア無線局塔を構えて、常時、1,000人のバーべキュー大会が開ける広場を有していると聞いている。

 
◇ DARCの組織
第一にDARC組織を説明しましょう。バウナタル本部には6名の博士、1名の法律専門家を含む役員と職員の約50名が9ヶ国語を駆使して、会員44,260名のお世話をしています。QSLビューロー要員もこの中に数えられています。
 
さらに、種々の文献から拾い出しただけでも、各地方に66名の博士、日本で技術士と称されるエンジニア300名を擁した、総勢約1,050人のアマチュア無線の専門家、世話役かつ有能な相談員および白い杖の方々をお世話する17名のアマチュア無線家がおり、アマチュア無線初心者への相談、クラブ活動の指導およびフィールドデイでのアマチュア無線局の運用、大切なQSL転送の業務をこなしています。驚いたことには、QSL転送作業に嬉々として携わっている著名な化学専門の大学教授がおられるほどです。
 
上記の1,050名の地域相談役はアマチュア無線に興味を示した、青少年アマチュア無線志願者の背中を一寸押すのみで、後は彼ら、彼女らが自力によりアマチュア無線家ひいてはエンジニアに成長することでしょう。地域相談役が年間一人の志願者をアマチュア無線の世界へ誘えば、毎年1,000人が新たに誕生するわけですね!この仕組みを見逃すわけには行きません
 
◇ DARCの考え方
アマチュア無線はひとつの趣味である、しかし、DARCはドイツのアマチュア無線家および世界のアマチュア無線家のために、最強クラブとしてわれわれの周波数防衛にその最大のかつ大切な使命があると任じています。
 
趣味とはいえ、アマチュア無線には電気・電子の基本、重要な法則と蓄積された科学技術が潜んでいます。アマチュア無線魂を発揮し、科学技術を修め社会への貢献を通じて、未来永劫に科学への入り口であるアマチュア無線を継承して行かねばなりません。DARCはこの目的を達成するため、従来の事務処理の合理化および独自で電子化に取り組み、捻出した時間を本来のアマチュア無線活動と青少年の育成へ振り向け、着実にその歩みを進めています。
 
DARCのアマチュア無線活動に関する考え方(再掲載)
サンデーアマチュア無線家にはモールス通信への回帰、バルーン無線局の打ち上げやツェッペリン飛行船との交信実験を盛り込んだ催物の充実、「HAMCAMP」、「YLWMF」などSONDER−DOKと催物に応じた特別コールサインとの割り当てを行い、イベントを楽しめる場にするべく工夫されています。さらに、これから紹介する青少年育成プロジェクトとその指導者の研修に資源の投入を惜しまないことはいうまでもありません。

筆者は上記の知見からまとめた次表にDARCの考え方の一端が説明されているように思います。現在、事務処理の電子化、QSL仕分けの機械化、交信データの電子化はすでに軌道に乗っていることは周知の事実です。
 
◇ DARCの試行策
2008年夏以来、ドイツのアマチュア無線専門誌「AFMニュース」、「CQ DL」および「CQ VFDB」とHam Radio大会を通じて得られた知見から、DARCの青少年教育とその指導者研修に対する具体策を推測してみました。その結果、DARCは「6ヶ月間会費無料で、会員の通常サービスが受けられ、入会お試しコース」の優遇制度を基本に置き、明らかに次のような「青少年プロジェクト」を推進していることが読み取れました。
 
DARCの青少年育成プロジェクトのまとめ    JA1IFB/KA1Z作成
年 齢
名 称
内 訳
写真
備考
〜8〜

キッズ・プロジェクト


キッズ工作コーナー
@
筆者
スタンプラリー
A
*1
〜27
ハム・キャンプ
B
*2
見学オイクニックとバーベキュー
C
*3
〜18〜

ユース・プロジェクト

 

工作コーナー
D,E
*4
キャンプ、フィールドデー
G
*5
〜10
ガール・デー無線運用実習
F
*6
〜22〜
-
大学での勉強会
H
*7
地域クラブ・ミーテイング
なし
-
OV アーベント
なし
-
パソコン研修会
I
*8
〜?〜
DARC講習会
定期的に開催
なし
-
〜?〜
リーダー・コース
指導者教育
J
*9
〜23〜
マスターコース
大学の修士課程での教育
K
*10
* 10 ドイツ・ミュンスター応用科学大学、USAMと略す
 
◇ 代表的な青少年育成の現場
Ham Radio 2011会場では、8歳から18歳の青少年を対象に、キッズ工作、スタンプラリーが計画されており、2日間でアマチュア無線の楽しみを経験することができます。工作コーナーには1セット10ユーロ位の電子キット16種類から、キッズの好みに応じキットを選びますが、今年はモールス発振機を選ぶキッズが多いように見受けました。 キッズ工作コーナーを皮切りに種々の現場を写真にて紹介しましょう。
 
@ Ham Radio会場でのキッズ工作コーナーの風景 A Ham Radio 2011におけるスタンプラリー
 
Ham Radio開催中、毎朝10時にスタンプラリー参加者はフォイヤー舞台へ集合し、 エンジ色のスタンプカードをもらい、12ヶ所のチェックポイントへ散って行きます。昨年は、風船をお土産にもらえることもあり、大勢のキッズが舞台へ駆け上がり、筆者は一瞬戸惑った想い出がありました。
 
Ham Radioの会場中庭に設営された27歳までのアマチュア無線初心者が参加できるHamcamp、クラブ局、DA0HCの自由な運用が楽しめます。会場への入場料および朝食付の参加費は45ユーロで、有名な村長さんが無線局の運用指導にあたります。

アマチュア無線のフォックス・ハンティングと家族で楽しむキャンプ・ファイアーの観光を兼ねた、ルドビッヒ・ストン・キャッスル城への小旅行を企画しています。
 





B Ham Radio 2011会場中庭に設営された Ham Camp 2011のテント風景  C ルドビッヒ・ストン・キャッスル城への家族旅行
 
DARCは定期的にアマチュア無線ライセンス講座を受験対策として実施しています。この講座に加え、各地方のラヂオ・クラブにおいても、受験向けの講習会と中学、高校生向けの電子工作研修会を開催して、青少年の育成に注力しています。
 
例えば、QTC-Japan.com、2010年4月1日紹介のドイツ・ザール地区にあるイリンゲル・クラブは「アマチュア無線デイ」をDARCと共催の上、大学教授による技術講演会、自作派の工作コーナーおよび青少年向けの電子工作実験室を設営して、アマチュア無線の活性化に貢献しております。
 
D 地域クラブによる中学生育成工作研修会 E 地域クラブによる高校生育成工作研修会
 
次に紹介する写真はあどけない少女達に囲まれてアマチュア無線局を運用している風景ですが、一目瞭然説明の必要がありません。
現在、ドイツでは5歳から10歳までの少女達を対象に、アマチュア無線の経験が広範囲の職域で役立ち、彼女達が職場で活躍できるように、「ガール・デー」を24ヶ所のワーキング・グループにより開催されており、少女達の将来は大変宿望されています。
 
F ガール・デーでのアマチュア無線交信の実地指導 G フィールドデーとキャンプファイアー
 
2011年6月、フィッヒテン地区で行われた「エレクトロニクス DIY」を中心にしたフィールドデーです。お定まりのキャンピング、バーベキューやキャンプファイアーの遊びに加えて、DK5DN、グンテルさんが開発した、FiFi SDR送信機と6バンド用のプリセレクターの製作教室もありました。
 
ここで突然「ドイツ連邦ネットワーク局」なる役所が表面に顔を出してきました。「われわれの最も重要な業務のひとつはアマチュア無線家達の教育・訓練であります」アマチュア無線のライセンスを入手する方法は色々ありますが、各地方でライセンス収得のため教育・訓練講座を開いています。経験豊かなアマチュア無線家が喜んで入門者のお手伝いをしましょう。詳細はわれわれのホームページ「BnetzA」を参照ください。

次はミュンスター応用科学大学にて誕生したばかりの8人の大学生アマチュア無線家達を記念した写真です。
 
H UASMにて誕生した8名の大学生アマチュア無線家
I パーソナル・コンピュータソフトのインストール研修会
 
Ham Radio 2011では、DARCが学校におけるアマチュア無線、通信に関するワーキング・グループと共催して、ドイツ・バーデン地区とスイスから参加142名からなる新しいリーダー達に「アマチュア無線家からエンジニアへ」を標榜して研修会が開催されました。研修会の受講者は、それぞれの学校における自然科学教室の授業で、エレクトロニクスおよび情報科学について、実務型の授業法を勉強することにあります。

最後2枚の写真は青少年育成プロジェクトに携わるリーダーの育成である。個々人の蓄積技術と経験にその人の専門能力が裏打ちされていても、青少年を教育するためには教育者の基本素養が要求されます。ミュンスター応用科学大学が大学の修士課程にアマチュア無線セミナーを組み入れたことは、将来のリーダー候補生育成を狙っての周到な計画ではあるまいか。
 




J 2011年6月25日行われたリーダー研修会の様子

K アマチュア無線を修士課程に組み込んだ大学UASMの学舎
 
◇ あとがき
♪ひろい沙漠を ひとすじに 二人はどこへいくのでしょう 朧にけぶる 月の夜を」と唱歌の4番に沿いながら、ドイツ・アマチュア・ラジオ・クラブの世話役がアマチュア無線の将来を真剣に考え、挑戦しているアマチュア無線の興隆施策に光をあて、みなさんのご参考に本稿をまとめて見ました。
 
『ドイツ・アマチュア無線連盟、DARCが未知の世界へ、ひとすじに歩んできた足跡の所々にオアシスができ上がっています。しかし、正直なところ、人間のやることですから、ゴールに向かって良かれと、振り子を振った結果、残念ながら綻びた形跡も見受けられます。さらにDARCと会員全員が、居心地良い、楽しいアマチュア無線と社会への貢献を目指す彼らのゴールに向かって、歩みを強めている』という印象を筆者は深めました。
 
では、DARCを筆頭ととして、VFDB、AFMにアマチュア無線の将来を再構築するため、「大所高所からアマチュア無線界を眺め、対策を練った数人のアマチュア無線家がいるのではあるまいか?」という自問に対して、「はい、素晴らしいアマチュア無線家数人いましたね!」と自答しておきましょう。
 
Ham Radio開会式場、方やフォイヤー舞台で、彼らは胸に花をつけるでなく、一般招待者の中にさりげなく着席していて、参加者と気楽に語り合い、周囲に気配りしながらアンプの音量調整、会場での記録写真撮影や舞台下正面にある招待客用座席の手直しなどに自ら進んで買ってでる、一見、普段着のアマチュア無線家達でありました。
 
地味な人となりの彼らも一旦アマチュア無線の話題になりますと、相手の発言に耳を傾け、眼光するどく大所高所から優先順位をつけ、所詮やってみないと分らないとしながらも、自己責任において簡潔明快な議論を展開します。そうして、「この技術開発論点は賛成、所望の経営諸表は開示できない、本件は結論を出さないでおこう」などとある種の結論へ導きます。正鵠を得た判断と敏速な事務処理を伴う、意外と激しい話が終わってみれば、「今年も会えて良かった!」とカバンからわれわれの名刺かQSLカードを取り出して、にっこりする心優しいアマチュア無線家達です。
 
デイトン・プラザ・ホテルのロビーで会ったドイツ人アマチュア無線家の一言から始まった≪デイトンから夢よフリードリスハーフェンへ≫を実現するために、色々な文献を読み、ドイツ連邦共和国とその周辺国のアマチュア無線事情を、ドイツでお話を伺えた方々の知見も加味し、ぼつぼつ研究してきました。QTC-Japan.com、川合編集長の絶大なるご支援の下、ドイツ・アマチュア無線の近況について、その一端を日本におられる読者のみなさんへお知らせできたのではと考えています。
 
研究資料: 本稿に引用掲載した写真は【DARCの青少年育成プロジェクト表の備考欄】で注記しているように、次のホームページおよび報告記事から転載させて頂きました。
 
*1: http://www.darc.de/aktuelles/ham-radio/     Youngster auf den Spuren des Amateurfanks  
*2: http://hamcamp.mb4ham.de/
*3: http://www.darc.de/referate/ajw/jugendprojekte/ Familienfreizeit auf der Burg Ludwigstein 28,29,30 Oktober 2011
*4: www.darc.de March 21, 2010 & http://ham.darc.de/illingertagung/
*5: http://www.darc.de/referate/ajw/jugendprojekte/ Fichtenfieldday 2011
*6: http://www.darc.de/referate/ajw/jugendprojekte/kids-day/ http://www.girls-day.de
*7: http://www.darc.de/referate/ajw/ausbildung/ Infos fur die Ausbildung mit Funkamateur
*8: www.darc.de March 21, 2010 & http://ham.darc.de/illingertagung/
*9: http://www.darc.de/aktuelles/ham-radio/ Erfolgkonzept: Lehrerfortbildung-146 Lehrer
*10: https://en.fh-muenster.de/index.php
 
 
 
QTC-JAPAN.COM 2011.07.29
(c) All Rights Reserved WWW.QTC-JAPAN.COM 2001-2011