10億もの原子で構成される立方晶のシミュレーションの作成と、その変形に使われ たのは、IBMが2001年にLLNLに納入した「ACSI
(Accelerated Strategic Computing Initiative) White」スーパーコンピューターです。今回のプロジェクトでは、物質
の強度予測などの分野における最大規模のコンピューター処理となりました。
独創 的なコンピューター・ビジュアライゼーション技術によって、超音速で広がるヒビ や、耐久性・柔軟性の高い物質をも脆性破壊させるほど固化させる立方晶の最深部
に複雑に広がる欠陥が、驚異的な画像とビデオによって示され、応力に対する原子 の反応の内部の仕組みが明らかになりました。
今回のコンピューター・シミュレーションの実験の詳細と成果は、本日(4月30日・ 現地時間)の全米科学アカデミー(National Academy of Sciences)会報のオンライン
版に、2つの論文とトップ・ページのイラストとして掲載されます。5月3日(同)に は、コンピューター・シミュレーションのビデオと静止画像を下記のURLで確認でき
ます。 http://www.research.ibm.com/resources/news/20020429_fracture_simulation.shtml
--Farid F. Abraham(IBMアルマデン研究所の研究員:本チームの研究リーダー)のコ メント 「予期しない時に物質に発生する突発的な破壊は、地震や航空機の構造破壊などの
際には壊滅的な被害をもたらしかねません。スーパーコンピューターの進歩と私た ちが開発した革新的なソフトウェアによって、物質の特性や物質の変形および破壊 の仕組みをより深く理解できるようになりました」
--Tomas Diaz de la Rubia氏(LLNLの物理学者)のコメント 「データを扱うこと自体が研究プロジェクトになっていたと言えます。このように
巨大なデータセットの中で視覚化やナビゲーションを行うことは、ASCIプロジェク トにおける重要な節目であり、私たちはそれを達成したのです。」 <2つの論文の詳細>
1. 脆性破壊によるひび割れが従来の理論で予測されていたよりもはるかに速く広が ることを示す2,000万個の原子のシミュレーションを論じたものです。
この成果は、 浅い地震の理論から、航空機などに使われている繊維強化複合(fiber- reinforced composite materials)における突然の破壊現象まで、さまざまな破壊に関する科学
者の理解を深める上で重要なものになると期待されています。 2. 10億個の原子からなる「加工硬化(work hardening)」のシミュレーションについ
て論じたものです。加工硬化とは、変形によって物質の強度が高まることですが、 これが過度になると物質は逆に脆化します。ペーパー・クリップを前後に折り曲げ てみると加工硬化の現象を見ることができます。
ペーパー・クリップの金属部分 は、最初は柔軟性を示しますが、すぐに堅くなって、最後には繰り返し力を加えら れたところが折れてしまいます。鍛造過程で物質の強度が増すことも加工硬化によ
るものです。鍛造は重要な製造技術であり、自動車の主要部品からゴルフ・クラブ にまで広く利用されています。
計算に24時間×10日間を要した今回のシミュレーションでは、切れ目を入れた立方晶 や原子の端が引き離されるときの隣り合った一つ一つの原子間の力と位置が、それ
ぞれスーパーコンピューターによって計算されました。脆性破壊のシミュレーショ ンでは、最初に切れ目にひび割れが生じ、ひび割れの先端に応力が集中するにつれ てひびが急速に広がり、隣り合う原子を結び付けている化学結合が引き離されまし
た。
一部の重合体やゴムに見られるように、応力を加えられたときに柔らかくなる のではなく堅くなるような特性を物質に与えると、ひび割れが物質を超音速で横切 ることがあることをIBMとLLNLの科学者達は発見しました。
このような作用は、これまで長い間あり得ないことだと考えられてきました。
しか し、1999年のトルコで発生した2つの大地震においては、超音速のひび割れが直に観 測されたり推測されたりするようになりました。また、近年では、研究室での実験
も繰り返されており、IBMとLLNLによる今回のシミュレーションは、こうした主張に 強固な理論的基盤を与えるものです。
今後この成果は、地震挙動の理解および予測 や、脆性破壊に耐える新しい物質の設計を目的としたツールの改良に役立てられる でしょう。 加工硬化の計算においては、シミュレートする物質を脆弱にするのではなく、耐久
性を高くすることを主眼としました。原子が応力を加えられた時には、単に互いが 離れてしまうのではなく、最初の時点では、互いの間をスライドするように反応し ます。
補正された原子は、物質の周期構造に「転移」と呼ばれるずれを生じさせま す。柔らかい金属に応力を加えた場合、転移は変形が生じるにつれて単純に物質を 通過していきます。
しかし、強度の高い物質や複雑な物質では、さまざまな転移がぶつかり合い、その たびに原始の動きがその場で止まってしまいます。
変形が続くにつれて、固定され た転移が蓄積し、一度はより強い力に耐えられるために物質の強度を高めますが、 応力が引続き加わると、固定された転移の密度が高まって、やがて脆性破壊に至り
ます。 本論文のAbrahamとDiaz de la Rubia氏の共著者は以下のとおりです。
・Robert Walkup(IBMトーマス・ワトソン研究所) ・Huajian Gao氏(独シュトゥットガルトのMax Planck Institute
forv Metals Research、現IBMアルマデン研究所客員科学者) ・Mark Duchaineau氏(LLNL) ・Mark Seager氏(LLNL)
Abrahamは、30年間にわたって材料特性を計算・予測するために最強コンピューター を利用してきたこの分野の先駆者です。1985年には、20万個の原子モデル(1辺が450
個の原子からなる立方体)の作成に成功しました。
1994年には、世界で初めて100万 個クラスの原子シミュレーションを科学論文からの連携という形をとったWWWビデオ などで発表しています。(『不安定な破壊の力学:あるコンピューター・シミュレー
ション』F. F. Abraham、D. Brodbeck、R. A. Rafey、W. E. Rudge Physical Review Letters誌73巻第2号、272〜275ページ(1994年7月11日発表))
QTC-JAPAN.COM 以 上
IBMはIBM Corporationの商標。 その他の社名、製品名は、それぞれ各社の商標または登録商標。
<お問い合わせ先> お 客 様:ダイヤルIBM Tel: 0120-04-1992