ミュンヘン在住、壱岐さんの


 




  −Friedrichshafenで開催された2014年のハムラジオで思ったこと−



  Kuni Iki, DF2CW/JA7HM
 
     
 


世界3大ハムの祭典の一つと位置付けられたドイツはボーデン湖畔のフリードリッヒスハーフェンで毎年6月最終週の金曜日から日曜日まで開催される「HAM Radio」には、年毎に多くなる日本からの訪問ハムには、それぞれヨーロッパという空気、気風を吸収して帰国されたことでしょう。この開催地はスイス、リヒテンシュタイン、オーストリアに隣接しているところから、あるいはこの機会を利用して、それらの国々を訪問して日本とは違った国情をも経験されたことと思います。

2014年の訪問者数は、主催者側の発表によると約17000人の入場者があったと発表されています。この展示会場は入場者をパソコンでチェックしていますので、推定数とは違ってかなり信用できる数字です。 私は、ここで開催される特別講演を聞くこと、各メーカーが展示する新製品を垂涎万丈の思いで見ることや、特殊部品の探し出し、あるいはジャンク市に行って掘り出し物を見つける楽しみもあります。

しかしJAIGグループをお世話していますので、JAIGミーティングに参加できなかったメンバーもこの展示会には来る事が多いので、そしてメンバー以外の古い、あるいは新しい友人とアイボールQSOすることを心から楽しんでいます。

JAIGグループのミーティングポイントでメンバーの来訪を待つDN2MCW

 

JAIG-Meetingpointを訪れたJAのハムと共に、左から、JA4DND, JA4PXC, DJ0FX, JA0FSB, JK1KSB, DJ0FX-XYL, JK1OPL

JAIG-Meetingpointを訪れたJAのハムと共に、左から、JA1RTS, DF9ZN, JH9CHN, JA1RZD, JI1JRE, JA1MEJ,DJ0FX-XYL, JA1MEJ, DF2CW


 
     
 

自作世代の思うこと 

 

アマチュア無線は戦後の1952年(昭和27年)再開されて、その恩恵にあずかった私達の年代は、短波の受信機、送信機は全部自作でした。電波を発射させたいという欲望と、うまく電波がアンテナから放射されて交信が出来たその喜びを満喫したいがために無線機つくりの手作業に没頭したのでした。 私達はアナログの時代に育った年齢層なのです。
 

60年代になるとぼつぼつメーカー製の無線機が店頭に並ぶようになりました。アンテナも既成品がありましたので、それらを買ってくれば電源コードをコンセントに差し込めば電波を出せる時代となったのです。そして法律が緩和されたJAでは、爆発的にハム人口が増加して世界一のハムを擁するに至ったことは誰も知るところです。

 
世代が変わって、携帯電話が普及するに従い、いつでもどこでも話をしたい相手に混信もなく明瞭に話し会いが出来、さらにはパソコンが出回るに従い、スマートフォン(スマホ)の多様化に拍車をかけて、アマチュア無線の人口は減少の一途をたどりました。これら第3世代のデジタル・ジェネレーションに成長した若い人達は、何も高い無線機を買って大型のアンテナを上げて無線をやらなくてもスマホで世界中と話が出来るのではないか、と反論してくるでしょう。
 
DARC−HAMRADIO-TOKYO
 
 
物づくりの喜び
これではアマチュア無線の本来の意味がなくなると、ドイツでは子供達に「物造りと、出来上がった喜び」を自覚させるために、あるいは「子供達を非行に走るのを予防」するために、市や町ではドイツの地域クラブに資金を援助して、アマチュア無線家が簡単な電気回路などを組み立て積極的に教えています。ここには造ることだけではなく当然「考える」ことも教えているのです。これの効果が現実的なものとなり、最近では若年層のハムが増えてきています。それを積極的に推進しているグループAATiSは毎年ブースを持って、啓蒙と作品の展示をしいます。これに参加している子供達も第3世代のデジタル時代に成長した人達です。
 
さて、今回、HAM RADIO 2014の会場を一回りして「時代は変わってきているな」ということに気が付きました。それは、アマチュア無線用の無線機は高級化、高精度化して、高い機能を組み込み、使いやすくなったように説明されています。 しかし、私の視点からすれば、それらは複雑化するだけで、毎日無線機の前でワッチしているハムならともかく、週に数えるほどしか無線機を操作しないハムには、その便利さが逆に無用の長物になる可能性があります。そして高性能化に比例して、無線機の価格も上昇しました。それでも高価なセットが売れています。どなたが買うのか不思議に思うのは私だけでしょうか。このことをドイツ人の友達に話すと、「とてもじゃないが手が出せないよ」と言う返事が返ってきました。
 
SDR無線機に注目
私は今回のHAM RADIOで多くのSDR(Software Defined Radio)無線機を見ました。2005年頃からだったと記憶していますが、ぼちぼち受信機が出始め、次第に性能が良くなり多くのハムの間で話題になっていました。その一つにアメリカ製のPERSEUSがあります。そしてイタリア製のELAD社がFDM-1を出して対抗してきました。アメリカのFlexRadio社はゆっくり浸透していたかと思いきや、今回の展示会で送信出力が100WもあるFLEX-6500を展示していて、しかも独自のブースを持って宣伝していました。もっと驚いたのは、ロシアからもSDRが出展されていたことでした。
perseusj2007w
 
ELAD FDM-S1
 
FLEX-6700_angle_front_660x350-ARC
 
sunsdr_ico
 
考えてみれば、これからハムになる人達は、先に挙げた第3世代デジタル・ジェネレーションに属する若い人達が対象ですから、これは当然の趨勢でしょう。パソコンはもとより、プレイステーションで成長した人達です。PCの画面で操作できる機能は、この世代の人達にはお手のものです。もう無線機というものの考え方が代わってきたようです。ボタンを押してつまみを廻すということは、センチメンタルなハムがやることで、将来はブラックボックスのSDRをパソコンに接続して、モニターの映像を見ながら無線の操作をする時代が近づいて来ていると感じました。
 
日本製のハム用の無線機は、世界をリードしています。これは自他共に認めるところです。無線機の中はハードと共にソフトが詰まっていて、高性能化を維持するためにいつでもインターネットからファームウエアのダウンロードが出来て便利になりました。外付けのモニターも接続できて見やすくなりました。しかし、ボタンを押したりツマミを廻したりする操作は変わりません。
 
DXぺディションに行くのに、アンテナがかさ張ることは仕方がないとしても、重い無線機を持ち運ぶのは重労働です。DXぺディションには誰でもパソコンは持って行きますから、とても軽量なブラック・ボックスのSDR無線機にモニターだったら運搬も楽でしょう。 家の中のハムのシャックにパソコンとモニターが置いてあるのは常識となりました。そこにSDR機を机の下にでも置いてしまえば、無線機棚がすっきりしてXYLから「見っともない」などと愚痴を言われなくなるでしょう。
 
SDRの時代がやってくる!
これらSDR機器は、製造量が増加するに従って価格も買いやすくなるのは間違いありません。なぜならSDRに使われている部品数は今の高級無線機に使われている部品数の10分の1(推定)、いやそれ以下だからです。SDR無線機の高度化はソフトで簡単に出来ますし、現在どの会社もやっているようにインターネットからファームウエアをダウンロードすることで何時でも機能アップは可能です。
 
日本の有名なアマチュア無線機製造会社は、相変わらず高性能高級機の開発に余念が無いようで、年々新型機を市場に送り出しています。無線機の買い替え意欲をかき立てています。 先に挙げましたように、アメリカ、イタリア、それにロシアはSDRの分野で進んでいるのに日本からは類似品の製品の展示は全くないのは、昔Collinsに代表されるアメリカ製品が世界を席巻していた時代から、日本製品に代わったように、アマチュア無線機器製造の重点がこれらの国に取って代わられないとも限りません。再びアメリカ、イタリア、ロシアに追い越されないように頑張ってほしいと思います。
 
日本の無線機メーカーはドイツ人を使って新製品の説明をしていました。日本からも応援が来ていて、訪問客の応対をしていたのは好感がもてました。日本からの方々は「英語」が会話の手段だったようでした。ドイツ人の多くは上手に英語を話します。しかし彼らは母国語であるドイツ語で話すほうが楽なことは言うまでもありません。新製品の説明はドイツ人に任せて、来独の日本人を市場調査に集中させると、私が感じた印象を持って帰ることが出来たのではないかと思います。
 
私は日本生まれだというだけで、ドイツ人から、「お前の国の無線機は本当に素晴らしい」などといわれると、自分が手がけたものでないにしても嬉しく思うのは当然です。 この言葉を、将来も絶えることなく聞くことが出来ることを願ってやみません。 今回はいろいろなことを考えさせられたHAM RADIO 2014でした。 完
 
 
 
 
de DF2CW/JA7HM

QTC-JAPAN.COM 2014.10.05
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