3.5MHzから50MHzの全バンドをSWR=1.0でカバーする夢のビームアンテナ
 

   by Yoshito Yagi , JA1HHL/ND1A 

 
     
 

去年の2月、W4UATLarry と画像交信中に彼の信号があまりにも強いので尋ねたところ、出力は300ワットでSteppIR社の4エレメント八木アンテナを使っているということで興味を持ちました。

ベリリウム銅に一定間隔で穴を空けたテープ
SteppIR社のカタログより転載)
このアンテナを調べたところ14MHzから28MHzのWARCバンドを含み、合成樹脂のパイプの中を巻尺のようなベリリウム銅に一定間隔で穴を空けたテープがエレメントの中でマイクロチップ制御でモーターを回して伸縮させ、自動的にどこのバンドのどの周波数でもSWRを1に落とし、タワーに上がらなくてもシャックのコントローラーからエレメントの調整やビームパターンを変えたりFRONTとBACKを一瞬に変えてロングパスとショートパスを切り替えたり、FRONTとBACKの両方を同時に使えるダイポール特性に変えてFRONTとBACKの両方の局と同時にQSOができることを知りました。

ベリリウム銅のテープがエレメントの中でマイクロチップ制御でモーターを回して伸縮させ自動的にどこのバンドのどの周波数でもSWRを1にする
SteppIR社のカタログより転載)
4月にサンフランシスコに行く計画をそれ以前に予定していましたので、米国のアマチュアEXTRA級の資格を取りXYLと一緒に観光やショッピングや食事と無線を楽しむつもりでした。SteppIR社の4エレメントを国際価格より安いUSA国内価格で購入したかったためサンフランシスコでアメリカ人のLarry と会い米国の国内価格での購入手続きを頼むことにしました。後で分かったことですが、日本の代理店から買うより20万円くらい手数料が要らなくなる分も含めてより安く購入することができました。

完成したStepIR DB36 

サンフランシスコに出発する間際になってLarry から連絡があり、SteppIR社から3.5MHzから50MHzをカバーするDB36($4,295)というアンテナが発表されたという知らせと広告を受け取りました。予定していたアンテナを急遽 DB36 に変更することにしました。 アメリカから帰国して、5月にデイトンのハムベンションで一般公開されました。Larry とは手続き、送金、輸送等で頻繁に連絡を取り続けました。 [組立写真はこちら]

 
     
 

DB36の組み立てと設置 

2008年12月、船便でサンフランシスコ から横浜に荷揚げされFTI (潟Gフティアイ)の工場へ送られました。 FTI で、ある程度組み立てておいて、DB36を上げる前にそれまで使っていた4本のアンテナを降ろし引き取り手に渡し、今年1月13日に1日かけて朝から残りの部分を庭で組み立てウインチでタワーに上げながらエレメントを取り付けていき、マストにマストクランプで固定しマスト近くのエレメントをさらに付け加えて暗くなってタワー上での工事が終了しました。

その後、FTIの人はシャックでコントローラーのキャリブレーションという作業をして帰られました。

 
SteppIR社のカタログより転載
 
各バンドごとの調整
翌日から自分でシャックのコントローラーを使ってエレメントの長さをSTANDING WAVE ANALYZERで調整し各バルンド毎のSWRを下げ、マイクロチップのファームウエアに設定を書き込む作業をしました。3.5MHzだけはSWRが1.5以下に下がりませんでしたが、他のバンドはどこも端から端まで1.0 になってくれますのでアンテナチューナーは必要無くなりました。
 
SteppIR社のカタログより転載
 
オートマチックAUTOTRACK運用の設定
次にトランシーバーとリニア・アンプとアンテナのフルオートマチックAUTOTRACK運用の設定をしました。インターフェイスはICOMのCI-VコントローラーCT-17を使いましたスピードは9600ボーで設定しました。 IC-7800のバンドを切り替えるとアンテナコントローラーのSDA-100の周波数表示が IC-7800の周波数と一致しリニア・アンプもバンド表示が変わりました。アンテナが希望する周波数に合うようにエレメントが伸縮している間SDA-100のランプが点滅しています。
 
どこの周波数でも下端から上端までSWRが1
1分位で点灯に変わりカチンと音がして終了し、さっそく電波を出してみますと出力1kW、SWR:1.0で送信に関しては問題ありません。 バンド内を上下周波数を変えながらダイアルを回していくとコントローラーのランプが点滅しながらその周波数にエレメントの長さが合うようにモーターが回ってエレメントが伸縮している様子が分かります。 周波数が決まると消灯に変わります。このようにしてどこの周波数でも下端から上端までSWRが1になります。7MHzから50MHzまでSWRに関しては問題ありませんでした。
 
3.5MHzはアンテナの周囲の影響を受けやすく、隣の家の屋根に金属板を使っている場合やブームの方向やアンテナの高さによってSWRがかなり変わってきます。ブームが東西を向いている時SWRが2、南北を向いている時SWRが1.1位になり、SWRの低いところで運用すれば実用上問題ありません。
 
組み立てから完成まで

DB36の組み立て エレメントの取り付け作業 ウインチを使いDB36をタワーに上げる
 
DB36の組み立て  エレメントを取り付けながら上げる
 
エレメントの最終取り付け作業 DB36が上がった!

マストクランプを二重にし上下のブームの前と後ろの3箇所を固定
このアンテナを上げて2ヶ月経ちました。春一番で2回アンテナが風圧を受け10度左へ回されましたが、FTIにブームの上に短いブームをもう一つ取り付け、マストクランプを二重にし上下のブームの前と後ろの3箇所を固定し補強工事をしていただきました。その後の強風でもびくともしなくなりました。
 
7,000kHzから7,200kHzまでのバンド拡張も対応
4つのアンテナを1つにしたことで干渉が無くなり、すっきりしました。 3.5MHz はフルサイズのダイポール、7MHzと10MHz はフルサイズの3エレメント、14、18、21、24、28MHz はフルサイズの4エレメント、50MHzはロングブームのフルサイズ6エレメントとして働き、3.5から3.8MHzも、これからの7,000kHzから7,200kHzまでのバンド拡張も対応できます。
 
どのバンドでもフルサイズの八木アンテナと同じように作動
実際に運用してみて7MHzではアフリカのチュニジアとSSBで59 同士で簡単にQSO成立、北海道にフロントを向けてレポートをもらったら59プラス50dB、沖縄で他の局が57のレポートが当局では59プラス10dB。7MHzでARRLのDXコンテストで呼んだら一発で100パーセント応答がありました。どのバンドでもフルサイズの八木アンテナと同じように作動しているようです。ただしSWR はバンド両端でも 1 になるところが違います。
 
50MHzでローカルの信号を受信してみるとFRONTで59プラス50dBでサイドが59プラス10dBの切れでした。 周波数を3.5MHzにして中波の放送局を昼間受信してみると北関東や東北、関西の放送局が59オーバーで受信できます。夜間になると国内、国外の放送局がフルスケールで中波帯の上から下まで隙間無くびっしりと入感していました。
 
DB36費用内訳
 DB36とコントローラー、その他すべてのオプション付きで
$5,912.86 
 Pallet & Shrinkwrap
$75.00 
 Ocean Freight
$150.00 
 Delivery 
$65.00 
 Handling Fee
$25.00 
 AES Filling Fee
$25.00 
 Insurance Cost
$45.00 
 AirMail SteppIR Parts
$12.00 
 Bank Transfer Fees
$32.00 
 Check Account Fees
$20.00 
 アメリカ側で掛かった費用 合計
$6,376.86 
 
■ 日本側で掛かった費用
 通関手数料、消費税、日本国内での送料を含む
81,209円 
 工事費  HF,50MHzアンテナ撤去工事 一式
31,000円 
 DB36事前組み立て費 一式
32,000円 
 DB36現場取り付け費 一式
98,000円 
 諸経費
2,000円 
 その後の風対策補強工事一式
20,000円 
 アメリカへの送金銀行手数料
6,000円 
 
工事費は去年の5月時点でFTI を含めて3社に見積りをもらいました。 FTI が約17万円代で一番安く、過去にSteppIR社のアンテナ工事を20件以上やった実績があるので FTI に決めました。自宅からも近かったせいもありました。 次が約 27万円、一番高かったのは約 37万円の順でした。 その時の為替レートによってUSA側に支払う日本円が違ってきます。
以上の費用をどう見るかは人それぞれの立場や条件、考え方によって違ってくると思います。
 
■ DB36の避雷対策
DB36の避雷対策について少し説明しておきます。 雷が近づいた時にはコントローラーのRETRACTのスイッチを押し、すべてのエレメントを巻き取り格納し、落雷を避ける機能があり、コントローラー内部にもALPと言う避雷器が組み込んであります。これで落雷に対して一応安心できます。
 
おわりに
筆者・JA1HHL/ND1A 八木さんとシャック
このアンテナは最長エレメントが15メートル回転半径が8メートル重量が73kgあります。 このDB36の廉価版のDB18が3月発表になりました。7MHzからビームで値段もかなり安くなっているようです。(DB18 $2,550)

このアンテナがタワーに上がり現在快適に運用できるまで、日本の代理店を通さず、長期間忍耐して待った甲斐がありました。今回の件の一番重要なポイントはW4UATLarry からの親切で緻密な援助でした。

彼からは色々な助言や忠告、輸送や手続きなどの手助けを受けました。かなり苦労をかけたと思います。感謝に堪えません。これからも親友として末長く付き合ってゆきたいと思います。

終わりにコントローラー・マニュアルの翻訳を手伝っていただいたJA6AQV 植田OMと日本でのフルサポートを申し出ていただいたSteppIR社の日本代理店 ビームクエスト社 の土佐社長、SteppIR社のアンテナを完璧に組み立てていただいたFTI の皆様にお礼を申し上げておきたいと思います。
 
SteppIR DB18E (同社のWEBから転載)

▼ SteppIR Bream Beam 18E


7MHzの高い方の周波数での運用で難関となっているアンテナ の件で3月頃からUSAの局から聞いた情報ではDB36より価格も半額くらいの安さで回転 半径も短く場所を取らなく軽量で、しかも7MHzも2エレメントのビームで7MHzから50MHzまで フルカバーしているアンテナが発表されたようです。

先日7MHzでQSOしたK9WZBのことですが、 彼の話によると4月21日から5月6日までカリブのケイマン諸島にZF2ZBのコールサインで DXぺディションにDB18Eを持って行きオールバンド、オールモードで出るから是非呼んでくれ とのことでした。 QSTにもSteppIR社のサイトにも昨日見たらそのアンテナが載っていました。 デイトンのハムベンションでも一般公開されるようなので、 少しでも参考になればと思い、ご存知だと思いますが書きました。

なお余談ですがこのZF2ZBのK9WZBとは7MHzでQSOを開始したところ、私の信号が他のJAと同じ 57だと最初リポートをくれましたが、わたしがDB36を使っていると言うと、いきなり、あなたの信号は 59プラス10DBで大変強力に入感している、Sメーターを良く見ていなかったと言い直してくれました。

彼は古い型のSteppIRのアンテナを使っていてDB36に興味を」持っているので是非DB36の使い心地 と写真をメールで送ってくれと言ったので送ったところ、すばらしい大変参考になったとの返信をもらいました。 日本の代理店でも扱ってくれるようですので、もしこれから7MHzのアンテナを計画されている方があれば ご紹介お願いします。                                                   
                                                ( JA1HHL/ND1A 八木)
 
 
 

QTC-JAPAN.COM 2000.03.22
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