JA1BU 小野さん/7〜430MHz帯オールモード

それらしく見えない強力なモービル局

By Hideo Ono,JA1BU
 
1.はじめに
写真1 コールサインとアンテナの状況
タヌキがカーモービルハムを始めてから30年近くなります。UHF・VHFもそれなりに面白いですが、DXとQSOできるHFはやはりFBです。ところが、最近のクルマはHFモービルには不便になって来ました。特に乗用車は困ったことになって来ました。(写真1)  

昭和40年代、タヌキはウマの助手席にHFのリグTS-520を座らせていました。HF・SSBカーモービルの命綱であるノイズブランカの効きが抜群だったからです。このリグはエキサイタとファイナルが真空管で、DC-DCコンバータを付けると16kgにもなってシートが深くえぐられましたが、真空管ヒータで冬場は手を暖めるのに重宝しました。
アンテナも最初はルーフサイドの90cmほどでしたが、最盛期には28MHzバンド半波長のバンパーホイップを高さ3.8mまで伸ばし、残りを後ろに折り曲げて使っていました。タヌキウマはド派手なモービル局で、このスタイルで日野市から横浜市まで通勤し、種子島まで出張したりしていました。  

昔のクルマは、ダッシュボードが分割されていてネジ止めでしたので機器取り付けにもケーブルを通すのにも好都合でしたし、鉄板部分が多く平面状だったのでマグネットも使えました。床にはボルトが沢山頭を出していてアース端子にも不自由しませんでした。鋼鉄の立派なバンパーがあったので、がっちりしたアンテナ基台を付けて大きなアンテナを立てられました。ルーフサイドのステンレスの雨樋も利用できました。  

ところが最近のクルマは、ダッシュボードが一体成型になったうえに曲面が多くて機器がうまく取り付かず、上面もエアバッグの口にとられて場所が限られてしまいました。バンパーも雨樋も無くなってしまって、アンテナを付けられなくなりました。また、カーエレクトロニクスが増えて、車のコンピュータのノイズが受信機に入ったり、逆にハムの電波がクルマのアラームランプを点けてしまう様な障害が起きるようになりました。 そうはいうものの、イグニッション系の半導体化、ガソリンの直接噴射、ダイナモのAC化などで動力系統からのノイズは軽減されました。バッテリも性能が良くなりました。リグの方も小型・軽量・高性能化しました。且って、タヌキは4台のリグを載せてHFから430MHzバンドまでカバーしていましたが、それでも29MHzバンドFMに出られませんでした。

ところが最近、以前のUHFかVHFのリグ1台のサイズで全バンド・全モードをカバーするリグが現れました。アンテナも7MHzから430MHzまでカバーするものが出ました。カーモービルの環境はむしろ整備されて来たといえます。  ここに至ってタヌキは、これまでの「いかにもモービルハムで御座い」というスタイルから、普通の人間様の格好に化けることを思いつきました。 実際にやってみると大変でしたが、隣村のタコヤキヤことJA1JJVの尽力で、乗った人がモービルハム局と気付ないようなスマートな(と思っています)タヌキウマを実現することができました。 車は全くノッペラボーなマークUですから、このレポートはアマチュア無線機器の搭載に悩んでおられる普通の乗用車のオーナーに何らかのヒントを提供できると思います。
2.計 画
1)搭載の条件
長い間タヌキのウマは通勤用でしたので他人を乗せることは考えませんでした。助手席では膝にHFのリグがぶつかり、後ろのシートにはVHF/UHFのリグが座り込み、床にはケーブルが這い回っていてもOKでした。しかし定年退職後、心を入れ替えて、メスダヌキや人間様を乗せることも考えることにしました。  

そこで新しい実装条件を考えました。先ず乗車定員を確保すること、ケーブル類を室内に這わせないこと、トランクを正常に使えることです。また安全運転のためにリグの操作パネルを正面視野内に置くこと、スタンバイ操作は左手でワンタッチで行えること、マイクは握る必要の無いことです。そして機器安全のために、専用の電源ラインを引くこと、ヒューズを入れて故障波及を防ぐことです。加えてナビトラも同居できることです。
2)基本構想
前項の条件を満たすために、リグはトランクに収納して運転席からリモコンし、アンテナは本数を絞ってトランクに取り付け、マイクはピローに付け、スタンバイスイッチは片手で一瞬さわるだけとし、ケーブル類は完全に隠すことにしました。また、トランク内でリグは荷物と完全に隔離して保護することにしました。
3)リグの選択
HFのリグは高価です。しかし顧みるとタヌキはモービル用のHFリグを余り買っていません。初代のTS-520の次は「TS-130」をクルマ3代にわたって載せて来ました。このリグは画期的に小型化されたTS-120の改良機で、先進的なリモートコントロール・ユニットによって運転席でQSY操作でき、デジタル制御なので周波数が安定で、特に、メモリー周波数からそのまま微調できるという優れた性能を持っていたので愛用して来たのですが、29MHzバンドのFMに対応できないのが不満でした。  
そのようなところに発表された「FT-100M」は、1.8〜430MHzバンド・オールモードの50W機で、モービルに便利なセパレート型で、フロントパネルが小さいので気に入り、溜め込んだ木の葉を久しぶりに思い切って使うことにしました。
4)アンテナの選択
タヌキモービルのアンテナは今まで性能本位の自作品で、今度もトランクに何本か立てる積もりでした。しかし今回は「無線局らしく見えない無線局」とするために、若干ゲインが落ちるのは覚悟の上で、1本で7〜430MHzバンドをカバーし、リモートチューニングでき、FT-100と組み合わせて使える便利なアンテナ「ATAS-100」をトランクに付けることにしました。このアンテナは7〜50MHzバンドは長さを変えて同調させ、144MHz/435MHzバンドは無調整です。  

FT-100リグの出力端子は1.8〜50MHzバンドと144MHz/435MHzバンドとで別なので、HFとV・UHFのデュープレクサ「ダイアモンドMX-62M」 を付けてATAS-100を共用することにしました。ウマにはナビトラも載せているのでアンテンのマグネット基盤の430MHzバンド・ホイップをトランクに付けました。あと、トランク付近には、TV用のV型アンテナ2式、カーナビ用の板状アンテナが同居します。

3.実 行

1)バス電源ケーブルの配線
先ずバッテリからトランクまでの電源ケーブルを引くことから始めました。今度の作業で最も苦労したのはここです。  線材は丈夫なものが良いので、日曜大工店で10m千円台で売られている、個線と全体がそれぞれ厚くビニール被覆された2芯の屋内配線用電線を使いました。先ずバッテリとの間にヒューズを入れました(写真2)。次にエンジンルームからキャビンに通じる穴を見つけ出し、填められているゴム栓に穴を開けてケーブルを運転席近くの室内に通し(写真3)、そこまでのケーブルは近くの配管類にタイラップで留めました(写真4)
写真2 ヒューズボックス(中央の黒い小箱)を経て電源を引く
写真3 中央の穴がキャビンへの 電源ケーブルの引き込み口
写真4 電源ケーブルは配管類に
タイラップ留め
写真5 ステップの化粧カバーを外し
電源ケーブルを通す。
写真6 ピラーとステップの化粧カバーを外し電源ケーブルを通す。 写真9 化粧カバーを除けてトランクへケーブルを通す。
次に運転席のマットを剥がし、ステップの内側に沿ったビニール製化粧カバーを外し、センターピラーの化粧カバーを外し、更に後部座席のマットを剥いでステップ沿いの化粧カバーを外しました。そうすると一本のダクトが見えて来たので、その中にケーブルを通しました。

というと簡単なようですが、化粧カバーは破損しない様に外さなければなりませんし、ダクトは細くて曲がっていて特にセンターピラー付近は色々なメカや配線を避けてケーブルを通さなければならないので苦労しました。誘導用の針金を入れて二人がかりでやっと通しました。(写真5〜7)後部シートがなかなか外れず悩みました。結局は填め込んであっただけですが、固くてかなりの背筋力が要りました。ボルト4本で留められている背もたれを外し、右上後ろにトランクルームに抜ける配線穴を見つけてケーブルを通しました(写真8、9)

 
写真7 ステップの化粧カバーを外し針金を使って電源ケーブルを通す。 写真8 シートを外して後ろにケーブルを引く

 
 写真&文:JA1BU 小野英男 (2001.01.01)

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